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今月の品川カンファランス報告

2月12日火曜日 19:00~ MS.CHEST事務所にて

栗原先生より興味深い症例が提示された。両肺に広範囲に広がるびまん性陰影で、胸部CTは典型的な急性好酸球性肺炎の画像に一致する斑状GGAと強い小葉間隔壁の肥厚像が広がる。しかし中高年の男性で初めての喫煙とは考えにくい。もちろんそのような既往もない。何と殺虫剤バルサンの煙の吸入により発症した呼吸困難とのことでした。好酸球数の増加は確認されていない・・。防水剤や金属蒸気そしてテフロン加熱によるポリマーフュームなどなどいろいろの吸入による肺傷害の画像をみてきたが・・・・。

投稿カテゴリ | コメントはありません13.02.12に開催予定のイベント

中皮腫の耳学問

本日の環境庁石綿会議の約50の中皮腫症例は、比較的典型的な画像例が多く、早めに終了することができた。その中で大変に画像所見が興味深かった1症例を報告したい。不規則な斑状の石灰化が、層状に瓦礫の石を積むように肺尖から肺底区まで不整に進展した肉腫型中皮腫の1例である。病理学的には石灰化ではなく骨化・骨形成とのことです。稀ながら骨形成性の中皮腫が知られており、今までにも数例の経験はあったが・・・今回のような広範囲にびまん性に広がる骨形成性の中皮腫を見たのは初めてである。病理学的には骨肉腫との鑑別がしばしば困難で、画像所見で肋骨等の骨組織と非連続であることを確認することも重要になる。subtypeは全て肉腫型で、上皮型や二相型では見られない。この興味深い症例のCT写真をお見せすることが出来なくて残念・・・。

投稿カテゴリ | コメントはありません13.01.31に開催予定のイベント

1月さいたま赤十字病院呼吸器カンファ症例報告

1月16日水曜日 さいたま赤十字病院カンファランス室 19:00~

5症例が提示された。簡単に報告する。

症例① 25歳 男性 検診発見症例 右肺尖に3cm程度の腫瘤影とブラ形成あり。CTにて肺尖部ブラと腫瘤内に空洞形成あり。気道撒布影は見られないが散在する小斑状影はある。気管支鏡で抗酸菌は証明されたが、結核とMACはPCRで陰性。まだ抗酸菌のタイプは検査中で、同定されていない。

 

症例② 60歳代 男性 検診発見の右肺の腺癌。HRCT所見のすりガラスの分布や病変辺縁部の小結節、葉間の肥厚部の形態等がやや非定型的と思われた。

 

症例③ 70歳代 女性 MAC症で経過観察中に突然の呼吸苦出現する。胸部写真では胸膜癒着と右肺門やや目立つ程度。CTでは著明な右心系・主肺動脈の拡張あり。単純CTでも高吸収域の肺動脈内血栓を指摘可能な症例であった。突然の呼吸苦では画像に著変ない時はまずPTEを疑うことが強調された。下肢静脈内にも血栓が証明された。

 

症例④50歳代 男性 検診発見 左下肺野に索状影の集簇あり。AVM等による異常血管影か気管支内粘液栓を疑う所見である。CTでは両肺3箇所に多発する粘液栓g認められ、粘液栓の一部は著明な高吸収を呈しており、定型的なABPAの画像と診断可能である。末梢血の好酸球数12%、BAL液中も好酸球が著増しており、ABPAとし矛盾しないが、糸状菌含めアスペル等の真菌は認められていない。また本症にみられる粘液栓の高吸収は真菌のアミノ酸代謝により生じるマンガン・鉄等によることが述べられた。これはMRIのT2WIで副鼻腔のアスペル病変が無信号化する原因と同一と思われる。検診で発見されるABPAはめずらしいが、問診するとステロイド剤の吸入療法歴はある。

 

症例⑤ 60歳代 男性 冠状動脈バイパス術後の退院前に右胸水やや増量し穿刺排液後に進行する右肺Consolidationと両側胸水の増量あり。肺炎等の治療に反応なくステロイドパルス療法施行し著明な改善を認めた症例。原因不明の急性呼吸不全

投稿カテゴリ | コメントはありません13.01.16に開催予定のイベント

1月帝京大学呼吸器疾患Cancer board報告

1月9日水曜日 19:00~ 病理検鏡室にて2症例の検討が行われた。ともに胸部単純写真が興味深い症例であった。

症例① 60歳代 女性 胸部単純では頸軟部に左右差あり、右胸鎖乳突筋影の消失と右肺尖部の淡い透過性の低下域から前頚部の軟部腫瘍の存在を疑った。しかしCTでは、胸壁背側の肋間に存在する内部が低吸収の腫瘍が描出され、MRの所見は造影にて多房性の壁が比較的厚く強く造影されていた。切除され軟部の粘液腫Myxomaと診断されたが、脱灰処理を行っているために、詳細な病理診断は難しいという点も述べられた。石灰化や骨化がCTで認められない組織であることが術前に分かっていれば、切除標本の脱灰処理は省いてもよいのではないかと思われる。その後、頸部腫瘤を自覚するようになり生検にてfolicular lymphomaと診断された。その際の胸部CTで第11胸椎椎体前面に巻きつくように存在する軟部影あり。PETでは頸部とこの椎体部のみに集積が認められた。これがlymphomaかmyxomaの転移かの判断が問題となったが、MR,PETの画像所見からもmyxomaの可能性は否定的と考えられた。また濾胞性リンパ腫では、椎体部病変の生検よりも骨髄生検によるStagingを優先することの重要性が強調された。

 

症例② 40歳代 男性 30歳代で右下葉の腺癌StageⅠAの切除歴あり。その際の胸部写真では右肺底区に8mm大の一見すると硬化性結節か肋骨の骨島のように判断してしまう様な境界明瞭な結節影であるが、CPangleに淡い浸潤影を伴っている。切除後の評価では、EGFR陰性、ALK陽性の腺癌で、CPangleに存在した淡い陰影は腫瘍による肺動脈閉塞に伴う梗塞病巣と判断された。術後4年目に、縦隔リンパ節転移著明にてザーコリン(クリゾチニブ)投与開始する。経過は良好であったが呼吸苦出現し造影CTにて肺動脈血栓塞栓症と診断された。下肢静脈内にも血栓あり、ザーコリンの副作用の可能性や今後の血栓の治療の継続と抗がん剤の選択等に付き議論された。ALK陽性肺癌の抗がん剤として、アリムタに有効性があるとする報告が紹介された。

投稿カテゴリ | コメントはありません13.01.09に開催予定のイベント

1月の品川カンファランスの症例

新年あけましておめでとうございます。今年の第一回目の品川カンファランスは早めに切り上げて8時頃には自宅居間において新年会を開催いたしました。大久保裕雄先生が今回のカンファで提示された症例の画像を紹介いたします。たしか・・・無症状でしたが、このCRのどこが異常所見か指摘できますか?

 肺動脈瘤CR

投稿カテゴリ | コメントはありません13.01.08に開催予定のイベント

12月さいたま赤十字呼吸器カンファ症例レポート

今月は9症例の画像を中心とした症例討議が行われた。簡単に症例の解説を試みる。

症例① 20歳 女性 高熱 何種類かの抗生剤(フロモッコス、クラビットなど)が2週ほど投与されていたが反応せず、胸部写真撮影し異常影で紹介。胸部写真は右上葉の小葉間裂できれいに境されたConsolidationとGGOで典型的な肺炎像。CTも同様の所見で気道変化は目立たない。血清学的にマイコプラズマ肺炎と診断されたが、抗生剤に対して耐性を有するマイコプラズマ肺炎が増えているので注意!!画像はこれでマイコプラズマか?!というほどに気道・細気管支病変がなく肺胞性肺炎のパターンで画像からの細菌性肺炎との鑑別は困難であった。このようなair space consolidationを来たすマイコプラズマ肺炎は成人には稀で、若年者層ではしばしば見られる。細胞性免疫の関与によりCT画像が異なってくると考えられている。

 

症例②60歳代 男性 外傷性骨折で入院時の胸部写真で異常指摘。画像は典型的は左上葉無気肺像であるが、無症状で偶然に発見が珍しい、左上葉気管支発生の扁平上皮癌。N0でありsleeve resectionの可能性に関して検討された。

 

症例③ 60歳代 男性 健診で見つかった右肺尖の浸潤性陰影。単純写真からも活動性TBと思われるが、他院で抗生剤治療が4週間施されている。改善ないため紹介来院し胸部CT施行。右S1,2に数個の結節と周囲に散在する細気管支粒状影がびっしりあり。画像からは鑑別必要としないほど典型的な結核症・抗酸菌感染と診断可能と思われたが、気管支鏡検査で結核菌を証明している。

 

症例④ 60歳代 女性 慢性間質性肺炎で少量持続副腎皮質ホルモン剤服薬中の患者。毎月胸部写真を撮影している。右下肺野内側に結節影現れる。「見直し陽性例」肺癌症例、NSEやや高値で未分化癌と思われる。胸部CTでは気腫性線維化で喫煙者肺に一致する。このタイプの線維化は肺癌の合併が多いので注意を要するが・・・毎月1回の撮影は頻度が多すぎて却って観察注意がおろそかになる可能性が指摘された。半年ほど前のCTでは気腫性嚢胞壁に数ミリの点状影ありこれが大きくなったものと推察された。

 

症例⑤ 60歳代 女性 健診発見の胸部異常影。 典型的な気管支拡張伴う中葉無気肺の中葉症候群に抗酸菌症の合併したもの。胸部CTでは中葉外にも細気管支病変・小葉中心性肉芽腫や空洞も広がっていたが無症状であった症例。

 

症例⑥ 70歳代 女性 健診発見無症状 心拡大と左肺門の軽度拡張傾向程度で有意な所見は不明であるが、下行大動脈の肺門レベルで走行が追えない部分あり。胸部CTでは上中縦隔に累々とリンパ節腫大あり。左下葉S6の部分的な無気肺も見られた。US観察下の気管支鏡生検でリンパ節と無気肺部の両方からサルコイドーシスの肉芽腫として矛盾しない組織が得られた。サルコのリンパ節腫大では無気肺を来たすことは稀。サルコのリンパ節は軟らかいために、気管支閉塞は起りにくいといわれている。この症例の無気肺がサルコによるものとは、たとえ組織でサルコイド肉芽腫が証明されても、考えにくいと思われる。

 

症例⑦ 70歳代 男性 ワーファリン服薬中の患者。喀血を主訴に来院。右下肺野に境界明瞭な空洞伴う腫瘤影あり。内部にはニボーを形成している。経過で内部は均一な充実性に見える腫瘤に変化。胸部CTでは小葉間裂に存在して臨牀情報および経過と画像から葉間血腫と思われた。ほぼ同一の画像所見を呈した自験例あり、そちらは喀血はないが、新たに出現した結節影のため、腫瘍を疑い切除し小葉間裂に存在する血腫と診断した。

 

症例⑧ 70歳代 男性 大量持続性喀血 胸部単純は左上肺野外側にGGOの広がりあり。他にも淡い斑状影が疑われる。胸部CTでは全肺野に散在するGGOと一部中心に索状影や不整小結節を伴っている。画像からは血管肉腫の転移か血管炎を疑う、診察により右頸部に腫瘤あり、生検にて易出血性であったが何らかの悪性軟部腫瘍:肉腫として矛盾しない組織が得られた。通常は頭皮の血管肉腫からの転移が多い。皮膚の血管肉腫転移巣の画像は肺野結節と嚢胞形成に周囲を取り巻くすりガラス影の広ろがりが特徴的で、CT画像から診断可能な疾患である。本症例は喀血のコントロール困難で死亡している。剖検がなされ最終病理診断を待っている。

 

症例⑨ 60歳代 女性 結核の治療歴あり。胸部単純は典型的な上葉無気肺の画像であるが、慢性に経過し陳旧性の瘢痕性無気肺とされている。発熱・WBC増加等の炎症症状出現し、胸部写真では右上葉無気肺部の増大あり。気管支鏡検査で上葉気管支より膿性痰が多量流出するのが観察され、細菌感染を来たしたものと考え、陳旧性無気肺に合併した肺膿瘍と診断された。

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12月品川カンファミニレポート

昨日は年末の忙しいなかお集まりいただき感謝しております。栗原先生からHIV治療に関する興味深い症例提示がありました。呼吸器診断の画像と臨牀情報の組み合わせの重要性を再認識した症例提示でした。AIDS患者に合併したPC肺炎症例ですが、ほぼ全肺野のGGOの広がりで、CT所見はそれに加えてびまん性に広がる強度の牽引性気管支拡張と下肺野肺底区の索状の板状無気肺所見。HAART療法後に出現した、感染兆候と両側上肺野の浸潤影から・・・何を考えるか??

免疫再構築症候群でした。 IRS と Kapsosi IRS←興味ある方はこちらをクリックしてくださいKaposiの論文は下野太郎先生から送っていただきました。。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.12.12に開催予定のイベント

11月さいたま赤十字呼吸器カンファ症例

長い間、HP更新せず、カンファランスの症例報告をサボっておりました。何人かの先生からお叱りをいただき恐縮しております。今後は出来るだけサボらないように続けてゆく所存ですのでお許しください。先月のさいたま赤十字呼吸器の症例を解説いたします。

症例① 70歳代の左大量胸水貯留の医師。体調不良で疲れ易いと・・・。左上肺野にも軽い浸潤影り、胸部CTで観察すると抗酸菌特有の気道撒布病巣あり、画像からも結核と診断可能である。

 

 

症例② 50歳代女性 胸部CRでは左第一肋骨端の肋軟骨化骨部に重なる「かくれんぼ肺癌」症例。丁度、肋軟骨部の石灰化に腫瘍が重なると左右差のみで指摘可能であるが、時に生理的にもこの部の石灰化は左右差きたすこともあり、なかなか判断は困難なこともある。この症例も2年ほど前から見過ごされているが、このような症例は安易に「見落とし」とは表現せずに「見直し陽性」症例と表現するべきと思われる。

 

 

症例③ GISTで化学療法加療中の70歳代女性。右肺尖部の大きな不整な壁を有する空洞症例。1年前の胸部CRでは薄い壁のブラのみであることから、慢性壊死性アスペルギルス症の画像診断が可能な症例。

 

 

症例④ 24歳女性 胸痛と強度の咳あり。特発性の縦隔気腫の典型例。頸部まで気腫広がり触診で皮下気腫が診断可能な症例。

 

 

症例⑤ 30歳代男性 肺内に転移性腫瘍と思われる多発結節がびまん性に散在し、左肺門にも大きな腫瘤影を認める。縦隔腫瘍の肺転移から悪性胚細胞性腫瘍と考えられた。精上皮腫、非精上皮腫性胚細胞腫ともに比較的若年の男子に好発する。卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorでは血清のAFP高値が94%で認め、β-hCG高値であれば絨毛癌を疑う。胎児性癌では両者の上昇を見ることが多い。提示された症例は生検で、卵黄嚢腫瘍と診断された。

胚細胞腫の覚え方「SECTE」seminoma,embryonal cell carcinoma,choriocarcinoma,teratoma,endoderumal sinus tumor(york sac tumor)

 

 

症例⑥ 75歳女性 2.3週前からの呼吸苦出現。両肺に索状の浸潤影出現する。胸部CTはびまん性のGGOやConsolidationの非特異的な陰影。薬剤性肺炎を否定するため問診するとオウゴンを含有する漢方薬の服薬開始との関連が疑われ、薬剤中止のみで陰影は消失した。慢性肝炎治療等の漢方薬による薬剤性肺炎も最近話題になることが多く、漢方だから副作用が無いなどと考えないようにしたい。また、次々と開発され発売される新薬を含め各々の薬品の副作用に関しての充分な知識は極め重要である。

 

 

症例⑦ 35歳男性 発熱あり。胸部CRでは右下肺野の濃厚なConsolidationあり、また左心陰影に重なる陰影も多少伴っている。胸部CRからは下葉の肺炎を疑うが、心拡大と胸水貯留も認める。CTではConsolidationは非区域性で末梢のsparingあり、この陰影の分布と両側胸水貯留から肺水腫による陰影と考えられた。精査により拡張型心筋症:DCMによる肺水腫と診断された。発熱と単純写真上のConsolidationの右下葉分布から、肺炎との鑑別に苦慮した症例であるが、CT所見は比較的定型的な肺水腫の画像と考えた。

 

 

症例⑧69歳男性。Adult Still病で加療中に咳嗽出現する。胸部CRでは散在する斑状影程度であまりはっきりした陰影ではないが胸部CTは多発する空洞、限局するGGO、きれいなreversed halo signを認める。血管肉腫の転移や侵襲性アスペルギルスを疑う画像である。しかしreversed halo signを呈する日和見感染としては、アスペルギルスよりもムコールによる肺感染でより多くみられると最近は報告されていることがカンファランスで強調された。また気管支鏡直視下でも気管支粘膜に限局的潰瘍病変が見られた。最終診断は気管支鏡生検にてアスペルギルスが証明された。気管支鏡観察で気道粘膜病変を観察できたアスペルの報告は見たことあるが、ムコールではこのような中心気道に粘膜潰瘍を伴うことはあまりなさそうですが文献的にはいかがでしょうか?

投稿カテゴリ | コメントはありません12.11.21に開催予定のイベント

さいたま赤十字呼吸器カンファ報告

7月11日のさいたま赤十字病院で行われたカンファランスにおける興味深い症例の解説

症例①81歳 女性 右肺尖部にS1、S2の無気肺と左上葉の結節影と硬化性陰影あり、陳旧性結核と診断されていたが、呼吸器症状出現し両下肺野に広範囲に広がる気道病巣と空洞形成あり、喀痰からGaffky9号。これからの日本では高齢者の再燃結核が大きな臨床問題となると考えられた。この患者は、右上葉の気管支結核まで発症しておりながら、抗結核薬の服用歴等無しにいったんは治癒状態であった。

 

症例②62歳 女性 画像は右肺門部腫瘤とびまん性多発肺結節より肺癌とその肺内転移で問題なし。しかしnonsmall cell caの約5%を占めるALK陽性肺癌とわかり、分子標的薬(クリゾチニブ)を使用すると僅か1週間後にほとんど腫瘍は消失となる!! 今後ますますこの分野での治療薬の開発が進むと思われるが、あまりの効果に驚かされた。

 

症例③25歳 女性 発熱と乾性咳 浸潤影は完全に左心陰影にかくれんぼしており下行大動脈のシルエットアウトに注目しないと見落としてしまう。CTはマイコプラズマ肺炎に一致する所見であった。気管支・細気管支病変と小葉性のすりガラス陰影およびair bronchogram伴なう浸潤影が左下葉に限局してみられた。

 

症例④53歳 男性 DMあり。単純写真にて頚部に皮下気腫と上縦隔影の拡大あり。この1枚の写真から上咽頭膿瘍の縦隔内進展による化膿性縦隔炎の診断が可能である。CTは広範な気腫と液体貯留を縦隔内に認めたが単純を見直してみても縦隔は拡大以外には異常指摘は困難であった。

 

症例⑤54歳 DM患者で腎透析中 びまん性肺野陰影出現するも呼吸器症状は軽度である。CT画像は比較的典型的なPC肺炎像と思われた。β・Dグルカンも600以上と著増している。

 

症例⑥右中肺野の限局的胸膜肥厚像あり、肋骨骨折痕と隣接しており外傷性変化としてしまいがちであるが、CTではやや離れている。経過で胸水出現し生検し中皮腫と診断された。対側にも小型肺結節ありこちらは扁平上皮癌と診断されている。著増している中皮腫の診断は、病理組織が得られても困難なこともあるが、原因不明の胸水や限局的な胸膜肥厚・腫瘤見た際は常に中皮腫の存在を念頭に診断に当たる必要がある。

 

症例⑦ 81歳 女性 高熱 一見正常の胸部写真に見えるが両側肺尖部のびまん性粟粒影の存在が疑われた。CTでは上肺野優位の極めて微細な粒状影の分布が証明されて粟粒結核と診断可能である。しかし単純写真で見えた粒状影はそれぞれの粒としては大きすぎるため、いわゆるsummation効果と呼ばれる粒の重なりによりより大きな粒状影に見えたものとかんがえた。ここでも高齢者の肺結核の再燃の臨床的な重要性が強調された。ちなみに肺野に空洞等の肺結核病巣は認められないが喀痰中に結核菌が証明された。

 

症例⑧ 80歳 女性 大きなvanishing tumorの症例であるが小葉間裂内の液体貯留とも思えないほど中葉内結節に見えたが、利尿剤で消失している。軸位断のみでは困難で、冠状断や矢状断の追加なしでの評価は困難とかんがえられた。

 

症例⑨ 5年前に十二指腸乳頭部癌の術歴あり。無症状ながら・・上肺野優位のびまん性結節と浸潤影あり。経過観察中に空洞形成出現し肺結核とGaffky5号と診断されたが、見直してもTB疑うことは難しいと思われたが・・気道散布病巣はあり・・その否定は画像からは出来ず、結核症の画像診断の難しさを再確認した症例。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.07.13に開催予定のイベント

7月帝京大学CG

症例① 右上葉の小型腺癌の症例。画像所見は胸膜付近のスピクラ伴なう腺癌として矛盾しない症例である。下葉にも陳旧性の肉芽腫性変化あり。問題点は上葉内の数ミリの粒状影をひとつ認め、これが病理的に肺内転移pmの可能性が疑われた。原発巣も組織学的にSCCと診断されている。病理側から腫瘍壊死のgoast cellとする所見無くpm(+)とはとてもいえない。原発も一部SCC様組織あるも全体では腺癌の組織型でよいと述べられた。

症例②両側肺尖部に、画像からは典型的な真菌球形成型のアスペルギローマの症例であるが、右肺尖のアスベルギローマ病変に接して頭側に腫瘤影もあり、CTガイド下生検で小細胞癌と診断された。病理側より小細胞とするには少し問題あり、以前にはintermediate cell typeと分類されていたものに近くLC-NECはじめとした未分化癌の判断は病理所見からの統一的な診断見解を得ることの困難さが述べられている。腫瘍マーカーもPro-GRP,CEAともに上昇が見られた。また小細胞癌に対する化学療法と平行して予防的な抗真菌薬の投与がなされていいるが、その是非と今後のアスペルの治療に関しても討論がなされた。

症例③多彩な画像所見の症例であるが、基本はランダム分布から肺転移と考えられる両肺のびまん性に散布する粒状影と右下葉の胸膜下に帯状に広がる容積減少伴なうコンソリデーションよりなる。そのほかにも細気管支周囲の線維化、間質性肺炎・肺線維症、すりガラス陰影等も経過で出現している。問題点は洗浄液からクリプトが見つかり、右下葉S8のTBLBからmucinous carcinomaの可能性も否定出来ないとのコメントあり。びまん性粒状影が転移なのかクリプトの散布なのか・・・・?また今後VATSを行う際の生検部位に関しても、S8のコンソリデーション部ではなく散布する粒状部の生検の方が悪性腫瘍の診断には役立つという・・・!! 病理からのアドバイスあり。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.07.04に開催予定のイベント

2月帝京大学キャンサーボード報告

3症例が提示され討議された。

症例①  思春期に縦隔腫瘍が指摘されていた40代の男性。陰茎腫大、血尿あり、骨盤内血栓症疑いヘパリン・ウロキナーゼ開始する。WBC20.000CRP32と高値。徐々に軽快してきたが、突然の胸痛あり左胸水も出現し、胸部外科に紹介となる。画像は前縦隔に石灰化伴なう比較的厚い壁の嚢胞性腫瘍である。多房性で壁在結節もある定型的な成熟型奇形腫として矛盾しない。そして胸水貯留と激しい胸痛発作から、腫瘍穿破それも強い胸痛より膵液含む内容物の穿破が強く疑われた。前縦隔腫瘍摘出術が施行され、成熟型奇形腫と診断されたが、腫瘍穿破は明らかでなく、胸水は1500mlあり。病理標本からは腫瘍壁に著明な好中球浸潤あり急性炎症所見も認めるが、細菌感染等を疑う変化はなし。壁在結節部は皮膚や消化管の組織を認めたが膵臓とする組織像はなし。奇形腫摘出により炎症所見はデータ上も改善し骨盤内の病変も著明に軽快した。臨床的には縦隔腫瘍が元となり、何らかの原因で骨盤内にも血栓形成様の血管障害を来たしたものと考えられたが両者の関連を上手く説明できる解説は・・・難しい。

症例②左上肺野の巨大ブラに合併した肺癌の症例。10年前に右上葉大細胞肺癌と小脳転移で放射線治療を受けた既往あり。pT3N0M1  今回は低分化腺癌でCB討議点は肺内に多発する10個程度の小結節がメタか肉芽腫か?これによりstage分類が異なってくると、治療計画がj変更される可能性あり。全身化学療法後に原発巣は44%縮小し肺内の多発結節の一部の円形で形態から転移の可能性の高いものは明らかに、腫瘍径の縮小傾向認め、治療結果から多発結節の一部は肉芽腫、一部は転移という結論で了解された。N2リンパ節のPET集積とCTサイズの短径1cmに関しては今後の検討事項とされた。

症例③70代のIgG4関連疾患としての後腹膜線維症の症例に合併し、胸膜直下の微細結節から限局的胸膜肥厚ともなった肺癌へ進行した症例。後腹膜線維症は骨盤内に限局し尿管閉塞を来たしステント挿入されている。ステロイド治療で著明に改善しているが、胸膜下小結節が大量の胸水貯留と縦隔リンパ節腫大へと急速に増悪し縦隔リンパ節の針生検で壊死傾向の著明な腺癌と診断される。大変に奇妙な腫瘍進展を呈した症例で、いま話題のIgG4関連疾患は大変に多彩な臨床像を来たすことが知られている。悪性腫瘍と間違えるような、しかしステロイド剤の使用で消失する良性の腫瘍性病変が多く知られているが、実際には悪性腫瘍自体の合併も多いのではないかという意見もでた。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.02.28に開催予定のイベント

第8回Chest imaging forum報告

日時 2012年1月25日(水)19:00~21:00

場所 聖路加国際病院2F トイスラー記念ホール

横浜旭中央病院の佐藤秀一先生の胸膜の正常変異に関する講演のあと8例の症例が提示された。

症例①気胸にて発症した中皮腫の症例。胸膜腫瘍はなく胸水のみ、生検にて陰性のため経過観察して明らかなびまん性胸膜腫瘤に進展した例。プラークの存在から中皮腫を画像診断医は指摘したが・・かなりショボイ感じのプラークであり、中皮腫の多くはプラークを伴わないことも知っておきたい。気胸で発症する中皮腫症例もあるが圧倒的に胸水貯留例が多い。

症例②肺尖部の壁側胸膜の腫瘤と気胸の症例。いわゆる単発性限局型中皮腫の症例であると思われるが、胸腔鏡下切除で診断されたが経過にて胸膜散布され、最終的には汎胸膜切除術が他院にて施行される。多くの中皮腫は浸潤性の腫瘍発育示すが、時に限局したSFT様の胸膜腫瘤を呈することもある。気胸合併する転移性腫瘍として、若年者骨肉腫以外にも乳癌や頭皮の血管肉腫等が知られている。

症例③他院にて月経随伴性気胸と診断されて、外科的に証明されているにもかかわらず気胸を繰り返し、左側気胸も起している症例。胸部CTではLAMに一致する薄壁空洞の多発と腹部CTの後腹膜腔のリンパ管腫様所見あり。大腸粘膜も肥厚し、下利便は白色で乳び便と考えられた。月経随伴性気胸とLAMの合併と考えられた症例。

症例④重度の左気胸とごく僅かな右気胸もある。胸部単純で右心臓に沿った透亮帯ありガスの広がりより縦隔ではなく心嚢内気腫と言える。気胸が心嚢内に広がっていることより先天性心膜欠損症と胸部単純写真1枚で診断可能である。右にも少量ながら気胸あることより右にも小さな心膜欠損の存在が示唆された。

症例⑤吹奏楽クラブの練習中に強度の上腹部痛で発症した12歳の女児。疼痛に伴なう胸椎側湾と胸水貯留あり。CTにて左縦隔側に高吸収な腫瘤様陰影あり。画像と経過から肺葉外肺分画症の捻転によると、過去の報告画像の類似性より診断。外科的切除を受け肺靭帯内の肺葉外肺分画症の梗塞と診断された。

症例⑥検診で発見された右下肺野の境界明瞭な1cm大のSPN症例。肉芽腫か過誤腫様の腫瘍であるが1年前の検診写真にはなし。CTにて胸膜に接するも胸膜発生か肺内か意見が分かれる症例。石灰化はCTでも認めていない。悪性否定できないと切除になるが病変はいわゆる胸腔鼠・胸腔内遊離体と呼ばれる結節で肺内ではなかったかが、右S6の過分葉ありその部の葉間裂にはまり込んでいたために肺内結節に見えていいたと推察可能である。

症例⑦両側下肺野中心の胸膜下末梢優位の不整な結節と空洞影あり。非特異的な所見ではあるが、好酸球増多とタイ人で沢蟹の生食の既往あり。ウエステルマン吸虫症宮崎吸虫症の抗体がともに高値であった。

症例⑧40歳台のアスリートのアメリカ人。突然の前胸部痛あり。胸部側面写真で胸骨下に胸膜ベースにした結節影あり。CTでは内部はほとんど脂肪で周囲は皮膜様の構造で囲まれている。心膜脂肪のfat necrosis典型像とのこと。Radiology  :diagnosis pleaseに出ていた同一疾患の症例も提示された。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.25に開催予定のイベント

さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告

2012年1月18日(水) 19:00より

講演に先立ち症例検討が行われた。

症例①右肺全体の浸潤影、中肺野に透亮あり空洞の可能性も否定できず、対側肺にも軽度の浸潤影や結節陰影あり。発熱を主訴としているが病変のわりに咳嗽・喀痰はそれ程強くない。CT所見では著しい中葉と舌区に気管支拡張所見目立つことより、慢性に経過し進行した非結核性抗酸菌症アビウムとして矛盾なしと考えられた。

症例②急激に発症した呼吸不全とほぼ正常な胸部写真。胸痛もあったとの臨床情報から、定型的な肺動脈血栓塞栓症PTEとして問題なし。右肺門の軽度腫大はナックルサインの軽い所見としてよいと思われ、CT所見にて確認された。

症例③検診で左大量胸水あり。CT所見で縦隔側胸膜に微細な顆粒状変化目立ち中皮腫に特有な所見と思われた。胸腔鏡下生検で中皮腫と診断された。

症例④以前より右肺尖部に局在した石灰化の散布影あり。新しくその周辺に浸潤影出現。結核の再燃として問題ないように思えたが、CT所見をよく観察すれば、B2気管支口の肥厚像や気道中心性粒状影(つぶつぶ)や気道病変の広がりから、通常の結核シューブではなく気管支結核としての再燃と診断可能な症例。

症例⑤右上葉の著明な容積増大を伴った内部均一な肺葉性コンソリデーションの症例。いわゆる肺葉膨隆徴候を呈する感染症ということでクレブジラ肺炎疑い、喀痰からもそれが証明された。他に肺葉膨隆徴候を示す感染としては肺炎球菌性肺炎やレジオネラ肺炎があると述べられた。

(まとめ)症例はどれも画像を詳細に分析すれば正確な診断に近づける教育的な素晴らしい症例提示でした。

私の講演内容は「他人に差をつける中央陰影読影の10のポイント」。を行った。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.18に開催予定のイベント

1月帝京大学キャンサーボード報告

1月17日病理顕鏡室にて6時より開催された

症例① 78歳男性 大動脈瘤に対する弓部置換術後に肺炎合併した。その2ヵ月後に左上葉に2cm程度の結節出現するもWBC20.000、CRP5~7あり肺膿瘍疑いで観察していた。12月に1週間ほどで6.5cmと急速に増大する。CTガイド下生検では悪性所見なし。造影CT画像等からも薬剤耐性肺膿瘍と判断して部分切除したところ病理では中心部に膿瘍形成した肺癌で旧分類では巨細胞癌とされていたような多形癌pleomorphic carcinomaと診断。腫瘍は腫瘤塊の表面にのみ存在し中心部は強度の壊死で膿瘍形成としても矛盾はなしとのこと。どのようなタイプの低分化腫瘍であれ腫瘍細胞増殖だけではこのような腫瘍径の増大速度の説明がつかないと考えられたが、切除標本の解析にて膿瘍/腫瘍内出血等の合併があったための急速増大とし納得できた症例。

症例② 63歳男性 肺尖部肺癌(EGFR遺伝子変異 腺癌)のびまん性肺内転移の症例。イレッサ治療中に髄膜炎症状出現し、MRでは脳転移以外にもf癌性髄膜炎として矛盾しない所見が最終的に得られたが、髄液細胞診と造影MRの所見の分析の困難さが指摘された。またタルセバがEGF mutation腺癌の癌性髄膜炎に有効とする報告があるため試みるも、呼吸不全にて死亡する。

症例③ 80歳 女性 大量の右胸水あり。胸水ドレナージ後の進展後の肺内に2箇所の腺癌として矛盾しない結節あり。CT検査にて大腸癌の合併も見つかる。病理学的には生検標本から、同じ腺癌でも全く細胞形態が異なり、転移ではなく重複癌と考えられた。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.18に開催予定のイベント

帝京大学キャンサーボード報告

11月15日 火曜日 18:00 病理顕鏡室

3症例の検討がなされた。

症例①70代 男性 胸部写真は右肺底区の径2cmほどの淡い結節が検診で発見された。左中肺野に胸膜の石灰化プラークあり。胸部CTでは多発する石綿プラークを認め、肺底区背側優位の石綿による線維化病巣の広がりあり。結節影は淡く高分化型腺癌を疑うが、腫瘍に向かう気管支壁の肥厚と腫瘍辺縁の毛羽立ちがやや腺癌としては不自然な印象もあり。気管支鏡および術中迅速病理でも悪性所見なし。病理の最終診断はCD20(+)CD10(-)でMALTとのことであった。石綿暴露肺にMALTの合併があることは初めての経験であるが文献的にもほとんど報告はないものと思う。偶然に合併したものと考えるが、腺癌とMALTの画像上の鑑別も含め大変に興味深い症例である。

症例②70代 女性 肺炎と慢性膿胸の診断で経過観察中画像および臨床像の悪化で入院。はじめにCTで認めた数箇所の気道散布病変は増大し左胸膜変化の増大と右胸膜変化も出現し、左肺野にはびまん性陰影出現してくる。これだけ明らかなかつ多彩な陰影が進行し諸検査で診断できないことからはサルコイドーシスやリンパ腫の可能性が高いと思われた。アミロイドーシスは画像から否定的。SIL-2R6075と高値なことからも悪性リンパ腫が示唆された。リンパ節生検からはAE1-AE3(ー)、CD4,CD5(+) Bcell type malignant lymphomaが強く疑われたが生検材料が微細で詳細な判断は困難とのことでした。

症例③60代 男性 SVC症候群、経皮生検では腺癌疑うも、ProGRP683と高値のため他院にて小細胞癌として放射線と化学療法が施行されている患者。右肺尖に腺癌を疑わせる陰影がかくれんぼしている。縦隔は累々とリンパ節の腫大と融合が広がる。そしてびまん性の粟粒影が全肺野にひろがり血行性の転移も疑われたが、この陰影は他の腫瘍影が治療に対して著効したにもかかわらず全く変化なく、結果的にこれは転移ではなく職歴にある40年におよぶ鋳物工肺の可能性が示唆された。通常の珪肺とことなり鋳物肺はmixed dust pneumoconiosisiの形を来たすこともあるようですが、画像的に全く線維化を伴わない全肺野にランダムにひろがる粟粒陰影の塵肺症に関して、ありえるかもしれないが・・・? この症例に関しては、他院での放射線治療範囲と病理組織と腫瘍マーカーのギャップ等を中心にして討議がなされた。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.11.15に開催予定のイベント

第25回胸部放射線研究会報告

10月21日に下関で開催された胸部放射線研究会では44演題の報告がなされた。多くの貴重かつ稀有な症例が提示された。そのなかで臨床面から印象的であった症例に関して解説したい。

①演題17 潰瘍性大腸炎の治療中に出現した胸壁腫瘤。胸囲結核が疑われ切除がなされたが最終診断は壊疽性膿皮症であった。潰瘍性大腸炎の約20%に合併し、外科的処置は禁忌とされている皮膚疾患で、胸壁発生はまれであるとのことである。

②演題28 多発小結節の52歳女性。喫煙1本/日!!! CT画像は小嚢胞と外側3/1肺野に散在する崩れかけたような小結節や淡い小結節から典型的なLCHの画像といえるが、TBLBの所見から提示施設の病理医は過敏性肺臓炎と・・・。研究会の病理コメンテイターの福岡先生からLCHの診断で問題なしと画像を裏付けるご意見あり。しかし日に1本の喫煙よりは家族内の重喫煙者の存在が原因と考えられる。

③演題29と演題35はErdheim-Chester病 画像はcoated aorta sign と腎周囲の軟部影より典型像であるが、演題35は肺はLCHで肩の軟部腫瘤はE-C病とのことで、免染のCD1aが両者の鑑別の決めてとなる。しかしこれらの本体はまだまだ研究が進行中で将来はどのように分類されてくるのか興味深い。

④演題37 PLCDD (Pulmonary light chain deposition disease)の1例は私の教科書の内分泌疾患と胸部の項の演習問題に使用した症例と同一疾患と思われる。本報告例はシェーグレン症候群の合併を疑うも確定診断には至っていないそうですが・・・。肺の多発嚢胞と多発結節で病理的にアミロイドーシスと類似するがコンゴーレッド等に染まらない、最終診断にはκ-chain,λ-chainの染色や電顕の検討が必要な疾患で、和名は単クローン性免疫グロブリン沈着症と言うそうです。覚え難いので1976年に最初に報告したRandallの名前をいただきRandall症候群としたらと思ったしだいです。

他にも末端肥大症と大腸癌におけるIGF-1受容体の強発現と小型腺癌のPET集積の関連に関する考察など多数の興味深い報告があり、大変勉強になった研究会でした。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.11.02に開催予定のイベント

第517回呼吸器臨床談話会報告

人名の付く胸部疾患HP

呼吸器談話会のミニレクチャー当番であり、「胸部疾患領域における人名の付く疾患の画像所見」に関する講演を行ってきた。人名の付く疾患のリストは教科書の索引や聖マリ医大の栗原先生の助言でまとめてみました。日本画像医学会で講演しましたがその後あまり話す機会がないのでHPに公開いたします。興味ある方は上の「人名の・・・HP」をクリックして開いて何か勉強の参考にしていただけたら幸いです。

当日の提示された2例に関し簡単に解説する。

症例①69歳男性 39度台の発熱と呼吸苦あり。PaO253mmHgと著明な低酸素あり。胸部写真は肺野には異常ないが、胃泡の内側シフトあり脾腫の存在が示唆される。胸部CTも吸気・呼気が行われているが、細気管支病変等は否定的で特に呼吸苦の原因となる異常はなし。CTではLC等の所見ないが、著明な脾腫の存在が明らかである。肺野に換気障害等の異常を認めない低酸素血症より、慢性肺動脈血栓塞栓症、PTTMまたはIVLが鑑別にあがる。そのなかで脾腫を伴なうものはIVLのみであろう。IVLの肺病変はびまん性の淡いすりガス陰影の目立つものが報告されているが、早期であれば当然CTでは異常を認めない症例のほうが多いのは当然と考える。 勉強になった点は、皮膚生検はランダム生検でOKで、皮膚病変の無いところでも陽性になる!胸部CTがnegativeでもGaシンチやPETでは陽性の報告例はあること。肺病変が主体の症例は5%程度で、皮疹、認知症状・意識障害での発症が60~70%と多い。治療はR-CHOPが大変に有効である。

症例②70歳 女性 労作時息切れ 膿性痰 RAにて治療中の患者。RAに伴なう肺線維化と気管支拡張症あり。著明な縦隔肺門リンパ節腫大を単純写真およびCTで認める。MTX使用中で総投与量は3418mg。生検にてMTXassociated LPDと診断された。EBウイルス感染示唆するEB-ERは陽性であった。MTXの中止で、リンパ節腫大は自然退縮した。diffuse larage Bcell lymphomaが最多でHodgkinや LPI等の組織が多いとされるが、会場からも「病理ではリンパ腫といっても・・・本当は腫瘍性変化ではないのでは・・・?」という疑問の声も強かったです。

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帝京大学キャンサーボード報告

9月20日(火) 病理学教室顕鏡室 18:00

2症例の検討がなされた。

症例① 透析と貧血きたしている胸痛患者で、胸部単純写真は右上縦隔の著明な突出あり。側面では胸骨後部透亮帯を埋め、前縦隔腫瘍を疑わせる所見である。CTで観察すると前縦隔中心に広く進展する縦隔の浮腫・炎症様所見あり。またその前縦隔病変の一部に高吸収な血腫と思われる部位も認める。明らかな腫瘍とする病変はなし。経過のCTでは両側胸腔にも出血進展してきており、救命目的で開胸術となる。前縦隔内には明らかな腫瘍はなく、大きな血腫を切除する。血腫の病理検体内に一見腎癌のclear cellを思わせる病巣(径1cm強)を認める。免染で上皮系のマーカーは全て陰性であり、腎には腫瘍なく転移は否定された。免染の所見等から病理学的に異所性の副甲状腺腫と診断され、その破裂に伴なう縦隔出血を来たしたものと診断された。術前に存在した高カルシュウム血症が、なぜか術後に低下したのか・・??に対する解答が得られた極めて珍しい症例であったが、同様の異所性副甲状腺腫からの縦隔出血の症例報告は一例だけ検索により見つけることが出来たとのこと・・・。

症例② 皮膚筋炎に胸腺腫が合併した症例。胸腺腫に対して放射線治療がなされているが、現在は胸膜播種を来たしており、DMという患者の状態を勘案し、胸腺腫の胸膜播種に対する治療に関して討議がなされた。化学療法を考えるよりは外科的な切除と放射線治療を組み合わせた療法を考えて進めてゆくべきではないかという結論。

症例③ 石綿肺と石綿プラークの症例に、LCNECによる著明な縦隔肺門リンパ節腫大来たした症例。放射線照射後の急性増悪した間質性肺臓炎にステロイドパルス療法を施行し、良好な結果が得られている。もともとの石綿暴露による肺の線維化が肺底区胸膜下を中心に存在しており、これに放射線照射が加わり、照射野以外にも強い反応が出たものと考えた。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.09.20に開催予定のイベント

品川カンファ報告

新しく4名の若い放射線科医が参加された。栗原先生から防水スプレー吸入による肺障害の症例が提示された。私のTFにある2症例も提示し比較したが、極めて類似した画像を呈していた。強い呼吸苦を訴えているにもかかわらず胸部単純はほぼ正常所見で、CTでは上肺野優位の均一なすりガラス陰影がほぼ全肺野にひろがり、胸膜下sparingもみられる。

次回の品川カンファランスは10月11日(火)7:00よりMS.CHEST事務所で開催になります。

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第7回Chest Imaging Forum症例報告

2011年9月7日(水)19:00~21:00 聖路加国際病院2Fトイスラー記念ホール 当番世話人 佐藤雅史 岩澤多恵

教育講演「肺の大きさについて」岩澤多恵先生講演

要旨 IPF/UIPの肺容積減少は年率で7%程の割合で進行し、肺容積減少が50%以下になると1年以内に死亡する。肺容積の経時的変化の評価には、CTよりも単純写真による観察の方が有用かつ容易である。最近話題の喫煙関連肺線維症CPFE/ASEFの症例では、進行性の肺容積減少はほとんどないが、肺高血圧症と肺癌の合併は非常に高いタイプの線維症である。

よくまとまった大変に勉強になったミニレクチャーでした。

一般演題 「網状影を呈した症例」

症例①小葉間隔壁肥厚伴なうびまん性陰影。縦隔リンパ節の石灰化を伴なう腫脹を伴っている点が診断のKey pointとなる症例。診断はアミロイドーシス。点状のリンパ節石灰化はかなりこの疾患に特有の所見と考えられた。

症例② 肺水腫様の肺門周囲にひろがる陰影と心嚢液または心筋症を思わせるぼってりした心拡大の症例。CTでは空洞もあり下肺野では胸膜下の収束性変化伴なう索状影もみられ慢性のPCPとしても矛盾しない変化であるが・・・。HIV感染にともなうPCPと心筋症の症例、AIDS患者の3~8%に心筋症が合併すると報告されているそうです・・!

症例③ 慢性のびまん性嚢胞性変化をきたした症例。右頚部肩関節周囲の軟部腫瘤も胸部単純PAに描出されている。CTではひしゃげた嚢胞でいわゆるMickymouseの耳様の変化からLCH疑うが病変は肺底区まで広がる。軟部の生検ではErdheim-Chester病、肺の生検ではLCHとのことで両者の合併の報告は知られているとのこと。骨シンチでは典型的な長管骨の対称的な取り込みあり、E-C病に一致する所見である。

症例④ 両肺尖部の嚢胞伴なう全肺野にびまん性の浸潤影。画像からは典型的なCystic fibrosisの所見である。遺伝子的に証明されており、日本人ではめずらしいが30例以上の症例報告あり。

症例⑤左下肺の淡いすりガラス影と縦隔リンパ節腫大あり。伝染性単核球症に伴なう咽頭の白苔伴なう腫脹や脾腫もみとめる。CTでは軽度のウイルス性肺炎として矛盾しない所見と考えられた。

症例⑥~⑧ 縦隔境界面に関する教育的な症例としてアカラシアや食道癌、縦隔脂肪腫・脂肪肉腫併発の症例提示がなされた。

次回の第8回 CIF は2012年1月25日(水)で当番世話人は佐藤秀一先生と佐藤雅史

第9回は2012年4月25日(水で、楠本先生と佐藤雅史になります。ミニレクチャーはそれぞれ第8回は佐藤秀一先生、第9回は楠本先生担当になります。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.09.13に開催予定のイベント

8月新宿チェストカンファ報告

興味深い症例に関して報告します。

症例① 慶応大杉浦先生提示 40歳代女性 検診発見例

胸部単純では右肺門影がやや目立つ程度。CTは右肺門に絡みつくような蛇行した小血管がうねうねと見られた。一見、蔦状気管支動脈瘤様であるが気管支動脈自体は大動脈分岐から拡張は見られない。注意してみると右下葉の肺静脈が左房に入る手前で途絶しているため、右上肺静脈流入への副側路として発達しており、そのため右肺門影が腫大して現れていたものであった。診断名は、anomalous unilateral single pulmonary veinとのことでした。初めて聞いた病名でしたが、杉浦先生いわく「ゴマンとある疾患で珍しくはない!!」そうですが・・・・(眉唾)

症例② がんセンターから右上肺野の索状影を呈した腺癌を提示された。単純だけだと瘢痕との鑑別が難しく、CT指示をするか、しないかが問題となった。

症例③聖マ医大から右上葉に限局した癌性リンパ管症の症例提示、病変部のみ見れば癌性リンパ管症の診断に問題ないが、リンパ管症が局在することはないと考えてしまうと、他の疾患の方を疑ってしまうが・・?乳癌の転移ではfocal lymphoangitisの頻度は高く、それ程まれではないとの意見がありました。

症例⑤社保中Hpより以前も見せていただいた大変に難しい症例。耳下腺MALT腫の既往あり、生検で肉芽腫あり結核の治療を受けている。リンパ腫とのことでしたが、EB関連のLYGの可能性が高いと思われたが・・?

症例⑥杏林大から両下肺野のすりガラスとコンソリデーションの混在した無症状の症例。T-markerは全てnegativeでしたがLDHは上昇。EGFR negativeの肺葉進展型腺癌でした。

症例⑦JR総合Hpからステントの薬剤が原因の薬剤性肺臓炎ではないかと考えたびまん性陰影の症例。画像からの診断は難しいが、慢性経過のPCPのようにも見えた。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.08.10に開催予定のイベント

129回びまん肺疾患研究会報告

5月28日に大阪で行われたびまん肺疾患研究会に画像司会で参加してきたので提示された症例の画像を中心に簡単に報告解説する。

症例①両肺に多発性空洞性腫瘤を来たした75歳の男性。CT所見から下肺野優位の多発性の空洞性腫瘤で気腫性変化も目立っていた。Gaシンチで鼻腔と両側腎にuptakeもあり比較的典型的なWegener肉芽腫の症例で特に問題ないと考えた。初診時にアスペルの抗体・抗原(+)であった。Wegener肉芽腫としての治療により病変は著明に改善したが、80病日に左上肺野に浸潤影出現し、BAL液中にAspergilus nigerを証明し、抗真菌剤の治療となる。治療前のアスペルギルス抗体・抗原陽性の意義が強調された。

症例②びまん性すりガラス陰影を呈している長期鳥飼育歴有する67歳女性。この症例もCT画像からは鳥飼病による過敏性肺臓炎として矛盾は無いと考えた。特に下肺野の地図状のすりガラスと影と正常小葉のモザイクパターンに加え、正常小葉に見える部の小葉中心に点状陰影等は特徴的と思われた。NSIP,PCP等が鑑別にあげられるが臨床情報からは診断に全く矛盾はない。ANCAの上昇が見られたが、慢性・亜急性、または亜慢性過敏性肺臓炎抗原吸入での反応性ANCAの上昇はみられることがあるとのことでした。

症例③関節痛・発熱主訴の33歳、女性。CT所見は、上縦隔リンパ節腫大と胸膜下の斑状影や線状影からサルコイドが疑われた。両側下肢の間接にGaの取り込みあり。臨床的には典型的なレフグレン症候群と思われた。本邦ではまれなサルコイドの表現型であるが、北欧では頻度が高い。

症例④溶接工に見られたびまん性粒状影をていした72歳男性。単純で分かるびまん性陰影で一見サルコイドか粟粒結核を疑うがVATSでは溶接工肺の所見のみで粒状陰影の原因は分からなかった。下痢等の感染症状で初診しており、何らかのウイルス感染が粟粒影の原因であった可能性が指摘された。以前にさいたま赤十字のカンファでサリドマイド使用による粟粒影パターンの薬剤性肺炎の症例を思いださせる。その他、サルコであった可能性やリンパ増殖性疾患、hot tub lungの可能性などいろいろの意見が会場で聞かれた。

症例⑤びまん性肺疾患の急性増悪にて死亡した62歳男性。石綿肺に伴なう線維化に肺癌とサルコイドーシスが合併したと考えられた症例でした。

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第51回臨床呼吸器カンファランス内容報告

3月10日 18時より明治記念館「蓬菜の間」で 「IG-G4関連肺疾患」のテーマで研究会が開かれた。

富山大学保健管理センター松井祥子准教授 : レクチャー「IgG4関連疾患-2011‐」

レクチャーに先立ち4症例の提示がなされた。詳細に関しては次回に小冊子が配布されると思われるので詳細はそちらを参考にしていただきたい。大変に興味を持たれるテーマなので参加者も多く熱心な討論もおこなわれて大変に勉強になりました。

提示症例は画像的には典型的なMCD/IPLの所見として問題にならないと考えた。鑑別として無理やり上げればアミロイドーシスやサルコイドがあがるか・・・・?IL-6 10.3ngとCRP 3.3mgとこの両者の上昇があまり見られない点、およびステロイドに対する反応が弱いことが、臨床的にMCDとの重要な鑑別点となることが強調された。

提示症例は自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎有し、胸部画像は肺野多発結節でG4関連疾患の診断にはとくに問題ならないが、後天性血友病を発症しており、これも今までに報告例はないが、病因的にIgG4と関連して発症したと考えて矛盾はしないと述べられた。

提示症例③④はともに胸部画像的には問題あり、NSIP様とSmorker’s lungの画像所見でG4との関連性の有無は胸部画像からは困難であった。

松井先生のレクチャー前の提示症例に対するコメントととして、これら4症例は全てきわめてまれな発症形態とのことであった。レクチャーの内容で、私にとって印象的であったのは、①.MGHのgroupが本症に対する研究班をすでに立ち上げて、IgG4 related systemic diseaseの名称を使い初めているが、これは発信元である本邦のIgG4 related disease(IgG4関連疾患)と異なる病名である。②.50歳の年齢で前立腺肥大を呈する患者をみたらIgG4関連疾患を疑え!!③.AML等の悪性腫瘍や担癌患者に好発する。④.治療は自己免疫性膵炎に準じるがステロイド剤ははじめ30~40mg/dayで開始し漸減しながらも約3年間の維持療法を必要とする。⑤.診断基準にステロイド治療に良好に反応する点が含まれる。⑥.胸部の画像所見は大変に多彩でどんな陰影でも取り得る。

講演後の討議で、関東中央病院病理の岡先生が発言され、「IgG4関連疾患と皆さんが言う疾患概念は、いうなれば血沈亢進に対する血沈症候群のような病名であり、私は過去にこの病名を付けたことはない!今も用いていないし、これからも将来決して病理診断名として、この病名を用いることはないであろう!」と病理医の立場から述べられたが・・・・・。言うまでもなく、病理診断が全ての疾患の正確な最終診断では決してありえない。せめて「IgG4関連疾患と呼ばれる疾患群として矛盾しない。」程度の病理報告は将来的には必要ではないかと、私は思うが・・・?また、臨床医の立場からはステロイド剤の著効が、現在作成中の診断基準に含まれる点が大変に興味深い。以前に、さいたま赤十字病院のカンファで提示された症例は、PETで肺門部腫瘤・縦隔リンパ節と膵臓に多発のuptakeあり、がんセンターでsecond opinionまで受け、肺門部肺癌と膵臓転移と診断されていたが、IgG4関連疾患を疑い、ステロイド剤内服すると・・・・肺門部腫瘤・腫大縦隔リンパ節および膵臓多発腫瘤は全て消失してしまった。

第12回東京びまん肺疾患研究会 10月1日(土曜)9時30分より IgG4関連疾患をテーマに、松井祥子先生が当番世話人のもと開催されます。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.04.05に開催予定のイベント

さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告

さいたま赤十字病院において定例の呼吸器カンファランスが開催された。今回は若干参加者が少なかったが、いつもながらの熱心な討議がなされた。

症例① 45歳 男性 胸単では、極めて軽微ながらほぼ全肺野の間質性陰影の広がりを認めた。とくに右上葉血管影の不鮮明化が目立ち、微小粒状影の存在が疑われ、右肺門部の軽度リンパ節腫大も示唆された。胸部CTも基本的に同様の所見であったが、KL-6が7693と極めて高値であり、KL-6がこれだけ著明に上昇するのは1.PAP:肺胞蛋白症、2.HP:過敏性肺臓炎3.PCP:ニュウモシスチス肺炎4.悪性腫瘍の4つに鑑別が絞れる重要な所見という意見があり、画像からもPCPとして矛盾はないと考えられた。血液検査にてHIV陽性でAIDSに合併したPCPと診断され、他院へ紹介となった。しかし、CT所見で全肺野のびまん性すりガラス陰影に加え、右肺尖の微細粒状陰影が目立つ点と所属リンパ節の軽度腫大よりPCPに加え肺結核の合併の可能性も否定できないという意見もあり、結局最終診断は紹介病院からの精査結果待ちとなった。また、AIDS患者に合併するサイトメガロ感染でも粒状陰影が目立つ症例があるという意見も追加された。

症例② 59歳 男性 喘息患者。右上葉に広がる索状影、結節様陰影、浸潤影あり。CT所見からはEP:好酸球性肺炎として矛盾なく、BAL液中の好酸球も48%と著増していた。Churg-Strauss症候群やANCA関連血管炎との鑑別や、喘息に合併する胸部異常などの臨床的な問題に関して討議がなされた。

症例③ 47歳 男性 膵臓癌の治療中の患者で、胸水と肺尖部の陳旧性結核病巣のみであったが、治療経過で右肺に浸潤影出現したが、その時には胸水は自然に消退していた。膵臓癌の肺転移は肺胞上皮癌と類似し炎症所見のような画像を呈することがり、この浸潤影も臨床情報から膵癌の転移を疑ったが、喀痰検査でGaffky8号と大量の結核菌が証明された。もう一度CT画像を検討すると一部に空洞形成を認めたが、二ボーを伴い、TBを積極的に画像所見から疑うことは困難な症例と思われた。また、自然に消退する胸水として、中皮腫が良く知られるが結核でも時に無治療で消失する例もあることがあり、注意が必要と考えられた。また本例のように陳旧性結核病巣の存在する担癌患者の化学療法中では結核の再燃の危険性を常に考慮することを忘れてはいけないことがとくに強調された。

症例④ 57歳 男性 数年前より胸部異常陰影を検診で指摘されていたが、精査は受けていない。今回、陰影の増加あり、胸部CTと気管支鏡が行われPAP肺胞蛋白症と診断された。胸部CT画像は定型的なPAPの所見の一つである、胸膜下に広がる帯状のすりガラス陰影が見られた。

 

 

 

例⑤ 肩甲骨の外骨腫が肺野の結節影様にみられた症例。胸部CTが依頼され、3D処理にて外骨腫が肋骨と関節形成しているのがきれいに描出されていた。学生の健康診断の胸部間接撮影で時々見つけるが、肋骨の偽病変と異なり単純写真のみからでは診断は難しい。

症例⑥ 56歳 男性 以前にCPAで救急入院し救命された既往ある重喫煙者。呼吸音より中枢気道狭窄疑いCTが撮影され、声門部の強度の軟部影による狭窄を認めたが原因精査中で、前回入院時の挿管操作との関連なども考えられた。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.16に開催予定のイベント

帝京大学CB報告

今回は2症例の討議がなされた。

症例① 59歳 男性 胸部異常陰影

末梢肺野の高分化腺癌と巨大な縦隔リンパ節単発転移が疑われた症例である。胸部単純写真からの、病変の指摘は困難な症例である。右肺底区の結節影は正面では横隔膜下に隠れ、側面で肺側胸膜の限局的肥厚増様に見える。縦隔の大きな腫瘤も、正面像からは僅かに右肺門部の突出として認められる。以前の腹部CT画像の再処理にて右肺底区結節は増大し、周辺すりガラス影等より高分化型腺癌と思われるが、縦隔の大きな単発性腫瘤を単にリンパ節転移とすることは、臨床的にも画像的にも考えにくい。同部に対しTBACが施行されclassⅤ低分化非小細胞癌の診断がなされた。免染からはTTF-1(-), AE1/AE3(+)でリンパ腫系のマーカーもすべて陰性であった。肺底区腺癌からの転移は否定的であり、原発不明癌で、画像からはキャッスルマンリンパ腫や食道原発GISTの可能性など疑われたが、病理からは上皮系腫瘍が疑われ否定的であった。縦隔側胸膜から限局性中皮腫が発生すると有茎性で境界明瞭な腫瘤影を来たすことがあり、免染も肉腫型中皮腫のマーカーAE1/AE3陽性なことより、まれながら限局型肉腫型中皮腫の可能性を考えて病理学的に再検討する必要性があると考えられた。

症例② 50歳 男性 呼吸困難

左下葉の薄壁空洞の低分化腺癌で切除術を受け、術後経過観察中に再発し、イレッサ治療にて間質性肺臓炎を起こしステロイドパルス療法を受けている。この際に両側に大量の胸水貯留あり、薬剤性肺障害の画像と臨床は多彩であり、胸水を来たすことは知られているが、イレッサで両側対象性に大量となるとまれと思われた。その後、両肺に斑状影、浸潤影、粒状影と左胸水が出現して、広範な転移病巣が疑われている。39度の間欠熱のコントロールできず、薬剤が原因か、focusとなる感染巣の画像等に関して討議された。画像から広範囲浸潤性肺転移患者の発熱原因を突き止めることは、極めて困難である。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.15に開催予定のイベント

新宿チェストカンファランス報告

社会保険中央病院 2階会議室 19時

6症例の画像を中心とした討議がなされた。

症例①60歳代 右下肺野S8の2cm程度のSPNの単純と胸部CTが提示された。一部三角状の奇妙な形状をていしていたが、画像的には特異的な所見ない。PETでSUV3.2と軽度のuptake認めた。また右肺門リンパ節にも同様に軽度のuptakeあり、悪性腫瘍と肺門転移も否定できないことから診断も兼ね開胸切除された。術中の迅速標本からは肺梗塞の診断であったが、最終病理診断はアミロイドーマとのことであったが・・・、肺門のuptakeの評価もなく、病理も含め診断には問題が残ると考える症例であった。

症例② 60歳代 男性 高熱と乾性咳嗽 単純写真は気道病変、小粒状陰影散布と肺底区の線状影の混在が両下肺野、右中肺野に目立った。胸部CTでは著明な気管支肥厚像とびまん性の細気管支炎の所見から、典型的なDPBの画像に一致すると考えた。しかし急性の発症と現在本邦では新しいDPBの発症はまず無いと考えられていることから、マイコプラズマによる細気管支炎の可能性を疑い血清交代価測定するも、上昇なし。結局、新型インフルエンザにより細気管支粘膜にびまん性のダメージを受け、その後、インフルエンザ菌等の二次感染を気道に来たした結果の気道病変のダメージの画像ではないか・・?という結論に達した。抗生剤による反応も良好であった。会場の出席者からも同様の症例の経験があり、この新しい知見に対しての今後の臨床的な啓蒙活動に関しては重要と考えられた。

症例③ 70歳代 女性 胸部単純で右傍気管線のびまん性の肥厚を認め、胸部CTはびまん性の気管支壁の一部石灰化ともなう肥厚を認め、内腔狭窄はないが壁は不整であった。鑑別診断のポイントとして気管・主気管支部膜様部にも同様に壁肥厚あり、この点から多発軟骨炎の可能性は否定可能と思われた。画像的には典型的な石灰化ともなう気管気管支アミロイドーシスの所見であったが、鑑別疾患として、生理的なサーベル鞘気管、Wegener肉芽腫、Trachiobronchopathica osteochondroplastica、Ig-G4関連疾患、UC/クローン病等の消化器疾患関連の気道病変などがあげられた。

症例④ 30歳代 男性 肺野多発結節とびまん性粒状陰影それに左胸鎖関節部周囲膿瘍あり、上肺野の微細粒状陰影の収束を伴う散布像のHRCT画像からは、岡ⅡB型といわれる結核の細気管支病巣の典型的画像所見が強く示唆された。肺野多発結節影も胸壁病巣も結核の画像として全く矛盾なし。

症例⑤ 60歳代 男性 肺癌術後の薬剤性肺炎に対しステロイドが長期に使用されていた症例に、新たに現れた感染症状と胸部CTにおける多発空洞性病変。脳MRにおいても病変あり、喀痰にてノカルジアと診断された。病理解剖が行われ、脳、皮膚、肺野病変すべてノカルジア症と診断された免疫低下した患者ではノカルジア、クリプト含めた真菌症、結核が鑑別としてあげられた。脳へのノカルジアの進展頻度の高さも強調された。

症例6 40歳代 男性 前縦隔腫瘍の症例で、悪性リンパ腫との鑑別のため経皮生検がなされ、奇形腫と診断されたが切除標本にはParagangliomaやSeminomaの組織も一部散在しており、このような胚細胞腫を混合する奇形腫に対する経皮生検の限界と合併症の危険性に関して討議された。また、MRのdiffusion image等を加えて画像解析すれば、悪性リンパ腫を否定目的のために経皮生検を施行する意義はほとんど無いと思われる。報告者の経験から、奇形腫の針生検における皮膜穿通時の強い抵抗感は、奇形腫の診断に特徴的であるという点は興味深い。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.09に開催予定のイベント

大阪びまん肺疾患研究会報告

2011年2月5日(土曜)1時45分~ 薬業年金会館

5症例の興味深いびまん性肺疾患に関して討議がなされた。それぞれの症例のポイントを述べる。

症例① 78歳女性 RA:関節リュウマチの治療中 呼吸苦を主訴とし来院。胸部単純は、両側肺門側優位の陰影であり、CTでは肺門から連続する血管気管支周囲のGGOとコンソリデーションの広がりを認めた。この画像からは、以前によく使用されたリュウマチの治療薬:金製剤(シオゾール)による肺病変に一致する所見であった。(もちろんこの症例ではシオゾール使用歴はなく、アザルフィジンとハイペン内服中であるが・・)BAL液はLym40%と高く、この陰影は治療にたいし良好に反応している。画像のみからの鑑別としては、薬剤性肺炎、COP/EP/NSIPパターンであるが、PCP:ニューモシスチィス肺炎やLPD:リンパ増殖性疾患でもみられるという会場からの発言もあった。単なる薬剤性肺炎ではこの画像をあまりみることはなく、やはりRAの患者に多く、このような血管気管支周囲の気腔内線維化といわれる変化が起こりやすいと思われた。

症例② 30歳代 男性 乾性咳嗽 びまん性陰影と右下肺野の結節影を来たした興味深い症例である。日本医大武蔵小杉病院の一色先生が読影担当。骨シンチで肺野にuptakeあり、CTでも縦隔条件で観察すると、びまん性陰影の中に高濃度の点状陰影の散布あり。転移性石灰化症や肺骨化症が示唆された。肺骨化症には結節状nodural type:と樹枝状dendriform typeあり、前者は重症のMS:僧房弁疾患で見られたが、弁置換術により過去の疾患となっていると・・・。本例はdenndriformの肺骨化症であった。大変に興味深い点は境界明瞭な結節影が自然消退している点である。腫瘍とは考えられず肺内血腫であった可能性は高く、肺骨化を伴うことのあるEhlers-Danlos症候群が疑われると一色先生が解説した。その可能性に関し、過去に十数例のE-D症候群を集めて検討した経験のある埼玉循環器呼吸器病センター病理:河端先生より、病理学的にみても同疾患が示唆され遺伝子解析追加の必要性に関する発言があった。

症例③ 20歳代 男性 乾性咳嗽 胸膜下優位の線維化病変広がり、軽度ながら全肺野にびまん性間質影の広がりあり、画像的には非特異的であるが、家族性肺線維症、若年性肺線維症の可能性が示唆された。病変は進行性で治療に反応悪く、肺移植の適応を逃さないように今後検討する必要性が述べられた。

症例④ 私の画像司会担当症例 30歳代 男性 乾性咳嗽 易疲労感  肺野濃度のびまん性の上昇と上肺野胸膜下主体の気腫性嚢胞の広がりより、画像所見のみからもベリリウム肺等の重金属吸入による肺障害が示唆された。症例は職場でIn:インジュウム、Bi:ビスマス、Mn:マンガン等の工業材料を取り扱っている。(粉塵マスクは使用とのこと)  生検肺標本は大変に興味深く、大量のコレステロールクレストが肺間質や肺胞内にびっしりと沈着しており、In:インジュウム肺の病理所見の過去の報告例と同様の所見であった。血清のIn値も71ng/mlと著明に上昇していた。ちなみに正常値は3ng/ml以下とのこと。現在、In:インジュウムの大半はわが国で消費され、多くは液晶画面製造に使用されている。画像で類似するベリリウムは歯科領域で使用されていたが、現在わが国では厳しく規制対象とされているが、一部は安価な外国に受注しているような場合、その歯科材料内にベリリウム使用の可能性もある点に関しての発言があった。今後、忘れてはならない職業病のひとつと考えられる。

症例⑤ 60歳代 女性 発熱、喀痰 画像的にはあまり興味を持てないが臨床的にはいくつもの重要な点を示唆する症例である。画像は中葉舌区症候群とする気管支拡張症、それに散在する肺野空洞性結節の存在からは、ありふれた非結核性抗酸菌症MAC合併の中葉症候群と診断し・・!そして左上肺野に新しく出現した浸潤影は、単に細菌性肺炎の合併としてしまうが・・・? しかし、本例は抗酸菌に対する数度の検査では常に陰性、長期のマクロライド治療に反応せず増悪傾向を呈し、最終的に精査にてシェーグレン症候群と診断されら。左上肺の肺炎はノカルディアが証明されノカルディアに対する抗生剤の治療方針に関しても討議された。難治性中葉舌区症候群の原因疾患としてのシェーグレン症候群の可能性は重要と考えさせられた症例である。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.05に開催予定のイベント

第2回東京保険医協会中央講演会

第2回目も沢山の先生方に参加していただき感謝しております。内容は、結局は肺癌の診断と最近のトピックスに絞って話させていただきました。

講演後の相談の症例検討も、私からみても・・なかなか発見の困難な、早期腺癌の肺野結節症例やfibrous dysplasiaに伴う肋骨骨折の病変等が提示され、大変に勉強になりました。今後の、同様な講演と勉強の機会を与えていただけましたらこちらも幸いと考えております。担当の幹事の先生や事務の方々に感謝しております。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.27に開催予定のイベント

帝京大学CB症例報告

1月25日18:00より 帝京大学付属病院  5階病理カンファランス室

3症例の臨床と画像、病理を中心に討議が行われた。1症例は頚部リンパ節腫瘤の原発巣不明癌、他の2症例は胸水貯留症例。

症例① 頚部に大きな腫瘤を形成し、縦隔、腹部傍大動脈周囲リンパ節にも転移巣が広がっている。この大きな頚部腫瘤は最初の他院のCTで1スライスのみであるが甲状腺皮膜が鳥の嘴状のいわゆるbeak signを呈しており、画像的に甲状腺由来で外側に大きく発育した腫瘍として矛盾しないと考えた。肝臓癌が有茎性で腹腔内に発育したり、大きな上腹部腫瘍が有茎性子宮筋腫であったりと、原発臓器から分離されているように見えることは、自験例でもまた画像のカンファランスでも時々提示されることがある。このような原発臓器の皮膜から外側に発育する症例を、初めて経験した時はとても信じられないという思いをした。本症例は、病理学的にも免染TTF-1が陽性の低分化癌で、甲状腺癌として矛盾はないと考えられた。

症例②は胸部画像は大量の胸水貯留の症例であるが、C型肝炎に合併したHCCに対して何度もRFAや肝切除等の治療が行われた既往があり、胸部CTで胸膜に接して良好に造影される(されすぎ?!)のポリープ状の小結節が多発している。胸腔鏡下の生検材料からHCCの治療後の播種の可能性に関して討議されたが、病理の免染での証明に問題が残った。

症例③大量の右側胸水症例で、胸膜肥厚と左胸膜の石灰化あり、中皮腫か非結核性の胸膜炎の鑑別が問題になった症例である。フィブリン析出著明であるがADA20.6で好中球の浸潤はなくと細菌性胸膜炎とも思えなかった。病理学的には線維形成型中皮腫の可能性も疑われたが、確定診断にはいたっていない。

今回のcancer boardでは免疫染色に臨床医があまりに期待する傾向が強すぎることに自戒するべき・・・という印象でした。自分の無知からですが、サイトケラチン:CK7とCK20の(+)、(-)の4つの組み合わせパターンによる原発巣の推定は興味深いと考えられましたが、1995年頃から盛んに行われた手法で新しい考え方ではないそうですが、原発巣を絞るひとつの良い試みではあります。しかしながら、例外となる症例も沢山ありさまざまなマーカーの組み合わせが必要なようです。次々と新しいマーカーが開発されるのは素晴らしいことですが、臨床医にとってはなかなかついてゆくのは大変です。

中皮腫の免染の主な抗体も沢山あり、いつも石綿環境暴露の被害認定委員会で聞いていて知らない間に抗体の名前は頭にこびりついて来ているのですが・・・・・なかなか全部の使い道を覚えることは困難です。中皮腫は上皮型と肉腫型によりマーカーの組み合わせも微妙にことなり腹腔発生の中皮腫と卵巣悪性腫瘍との免染による鑑別が問題となる。また陽性マーカーだけではダメで必ず陰性マーカーも必ず組み合わせる必要性など、今後激増するであろう中皮腫のマーカーに関しては、被害申請のときには必要となるため、これからの臨床医には必須の知識である。代表的な陽性マーカーとして上皮型中皮腫はcalretinin, CK5/6, WT-1, D2-40肉腫型中皮腫のマーカーとしてAE1/AE3,CAM5.2を、陰性マーカーとしては肺腺癌との鑑別にCEA,TTF-1,卵巣腫瘍との鑑別にER,PgR,Moc31,BerEP-4などが代表的であろうが、中皮腫に関しては決定的なマーカーはいまだ存在しないということも知っておく必要がある。そして電子顕微鏡による中皮細胞の形態観察も反応性中皮細胞と腫瘍性中皮細胞の鑑別に極めて重要となる。また生検の組織標本がなくても、中皮腫診断を得意とする病理医や細胞診スクリーナーに依頼すれば、胸水穿刺による細胞診所見からも正確な診断可能である。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.25に開催予定のイベント

2011年1月埼玉日赤・呼吸器カンファ・レポート

新年の埼玉日赤は、恒例により私の講演を行った。テーマは昨年の放射線学会総会の研修医セミナーの「胸部画像のmimicker達」すなわちnormal variants やpseud‐lesionなど病変と間違えやすい正常範囲の所見に関する内容でお話しさせていただいた。

講演の前に、通常の症例提示・画像検討も行われた。このうちの2例を選んで、興味深い症例の画像を提示する。

症例①は脳転移で発症している。この正面写真から左肺門に重なる腫瘍の存在指摘に困難を覚える方も多いと思われるが、同時に撮影された側面像からは、境界明瞭な腫瘤影を容易に指摘ことが可能である。左上葉の肺癌とその脳転移として矛盾しないと考えられた。かくれんぼ肺癌の一例であるかくれんぼ肺癌肺尖、肺門、心陰影、横隔膜下等に隠れ、胸部単純で黒く写るいわゆる肺野だけ観察すると見落としてしまう肺癌に関して、私が名付けました。左右の比較読影や側面像が存在診断に重要です。

 

症例② この症例もやはり多発性脳転移で発症している。左上葉の無気肺像伴う肺門部腫瘤をみとめ、原発性肺癌として矛盾はない所見であるが、この症例は右中肺野の巨大な腫瘤と胸椎の側彎症も伴なっている。画像診断のみならず臨床診断の基本として、「常に病気は一元的に考えろ!」といわれる。これは大切な言葉ではあるが常に正しいとはもちろん限らない。この症例はCT画像から皮膚の多発小結節と側彎胸椎の小型のmeningocele髄膜瘤認め、神経線維腫症:レックリングハウゼン病の診断が可能である。それでは右の巨大腫瘤影からは何を考える・・・?経皮生検が施行されて神経原性線維腫の診断が確定している。胸壁または肋間神経からの発生と考えられた。神経線維腫症は比較的頻度の高い遺伝性の母斑症であり、肺病変としては下肺野の線維化とともに上中肺野のブラ形成の頻度も高く、成人では約20%とする報告もある。この症例も著明な上肺野の気腫性嚢胞ブラの広がりをみた。肺癌と神経線維腫症の合併頻度は・・・?高いという報告は今まで目にしていないが、線維化や気腫性変化あれば当然、正常者と比較すれば肺癌の頻度が高くても全くおかしくはないと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回の埼玉日赤・呼吸器・カンファ2月16日19時からの予定です。興味深い画像の症例ありましたら是非、提示を御願いいたします。それでは、松島秀和先生また来月もよろしく!みな楽しみにお待ちしております。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.24に開催予定のイベント

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