大阪びまん肺疾患研究会報告

2011年2月5日(土曜)1時45分~ 薬業年金会館

5症例の興味深いびまん性肺疾患に関して討議がなされた。それぞれの症例のポイントを述べる。

症例① 78歳女性 RA:関節リュウマチの治療中 呼吸苦を主訴とし来院。胸部単純は、両側肺門側優位の陰影であり、CTでは肺門から連続する血管気管支周囲のGGOとコンソリデーションの広がりを認めた。この画像からは、以前によく使用されたリュウマチの治療薬:金製剤(シオゾール)による肺病変に一致する所見であった。(もちろんこの症例ではシオゾール使用歴はなく、アザルフィジンとハイペン内服中であるが・・)BAL液はLym40%と高く、この陰影は治療にたいし良好に反応している。画像のみからの鑑別としては、薬剤性肺炎、COP/EP/NSIPパターンであるが、PCP:ニューモシスチィス肺炎やLPD:リンパ増殖性疾患でもみられるという会場からの発言もあった。単なる薬剤性肺炎ではこの画像をあまりみることはなく、やはりRAの患者に多く、このような血管気管支周囲の気腔内線維化といわれる変化が起こりやすいと思われた。

症例② 30歳代 男性 乾性咳嗽 びまん性陰影と右下肺野の結節影を来たした興味深い症例である。日本医大武蔵小杉病院の一色先生が読影担当。骨シンチで肺野にuptakeあり、CTでも縦隔条件で観察すると、びまん性陰影の中に高濃度の点状陰影の散布あり。転移性石灰化症や肺骨化症が示唆された。肺骨化症には結節状nodural type:と樹枝状dendriform typeあり、前者は重症のMS:僧房弁疾患で見られたが、弁置換術により過去の疾患となっていると・・・。本例はdenndriformの肺骨化症であった。大変に興味深い点は境界明瞭な結節影が自然消退している点である。腫瘍とは考えられず肺内血腫であった可能性は高く、肺骨化を伴うことのあるEhlers-Danlos症候群が疑われると一色先生が解説した。その可能性に関し、過去に十数例のE-D症候群を集めて検討した経験のある埼玉循環器呼吸器病センター病理:河端先生より、病理学的にみても同疾患が示唆され遺伝子解析追加の必要性に関する発言があった。

症例③ 20歳代 男性 乾性咳嗽 胸膜下優位の線維化病変広がり、軽度ながら全肺野にびまん性間質影の広がりあり、画像的には非特異的であるが、家族性肺線維症、若年性肺線維症の可能性が示唆された。病変は進行性で治療に反応悪く、肺移植の適応を逃さないように今後検討する必要性が述べられた。

症例④ 私の画像司会担当症例 30歳代 男性 乾性咳嗽 易疲労感  肺野濃度のびまん性の上昇と上肺野胸膜下主体の気腫性嚢胞の広がりより、画像所見のみからもベリリウム肺等の重金属吸入による肺障害が示唆された。症例は職場でIn:インジュウム、Bi:ビスマス、Mn:マンガン等の工業材料を取り扱っている。(粉塵マスクは使用とのこと)  生検肺標本は大変に興味深く、大量のコレステロールクレストが肺間質や肺胞内にびっしりと沈着しており、In:インジュウム肺の病理所見の過去の報告例と同様の所見であった。血清のIn値も71ng/mlと著明に上昇していた。ちなみに正常値は3ng/ml以下とのこと。現在、In:インジュウムの大半はわが国で消費され、多くは液晶画面製造に使用されている。画像で類似するベリリウムは歯科領域で使用されていたが、現在わが国では厳しく規制対象とされているが、一部は安価な外国に受注しているような場合、その歯科材料内にベリリウム使用の可能性もある点に関しての発言があった。今後、忘れてはならない職業病のひとつと考えられる。

症例⑤ 60歳代 女性 発熱、喀痰 画像的にはあまり興味を持てないが臨床的にはいくつもの重要な点を示唆する症例である。画像は中葉舌区症候群とする気管支拡張症、それに散在する肺野空洞性結節の存在からは、ありふれた非結核性抗酸菌症MAC合併の中葉症候群と診断し・・!そして左上肺野に新しく出現した浸潤影は、単に細菌性肺炎の合併としてしまうが・・・? しかし、本例は抗酸菌に対する数度の検査では常に陰性、長期のマクロライド治療に反応せず増悪傾向を呈し、最終的に精査にてシェーグレン症候群と診断されら。左上肺の肺炎はノカルディアが証明されノカルディアに対する抗生剤の治療方針に関しても討議された。難治性中葉舌区症候群の原因疾患としてのシェーグレン症候群の可能性は重要と考えさせられた症例である。

11.02.05に開催のイベント

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