アーカイブ 1月, 2011

明解画像診断の手引きsupple 107 呼吸器領域編

誌上カンファランス形式で11月に行われたさいたま赤十字病院のカンファランスの内容を、国際医学出版より2011年1月27日に発行した。非売品であるので、購読希望者は明治製菓の方までお問い合わせください。

出題症例は6症例でした。

症例① 35歳 男性 右上肺野の巨大ブラに合併した若年者の肺癌症例である。検診で発見された、右肺前摘後の術後経過は良好であったが・・6年程して、突然の胸痛と呼吸苦で救急来院する。心電図等の検査中に呼吸停止し永眠となる。残った片肺のブラの破裂が原因として考えられた。

症例② 31歳 女性 検診発見のsmoker 単純写真は、非常に軽微な両上肺野の間質影である。CT画像からはLCH:ランゲルハンス細胞組織球症と診断可能。

症例③ 71歳 女性 画像は非特異的な多発小結節が数個あるが、腎障害あり。血液検査、腎生検よりANCA陽性のWegener肉芽腫症と診断された。胸部画像の解析には、臨床情報や検査データとの組み合わせが必須となることが多い。

症例④ 79歳 男性 経過により肺内を移動する陰影からは、COP:特発性器質化肺炎か好酸球性肺炎:CEPが疑われた。胸部CT所見は上肺野優位の汎小葉性GGOと胸膜下の帯状陰影に小葉間隔壁の肥厚像が伴ってみられた。葉間隔壁肥厚はCOPでは見られない点が、両者の鑑別として重要となる。経過中に好酸球数は53.3%と著増し、好酸球性肺炎と診断した。

症例⑤ 79歳 男性 右中肺野の辺縁不整な結節影、胸部CTはスピクラ形成著明で、肺癌が疑われたが・・・・・肺癌以外では悪性リンパ腫や放線菌症やノカルジア感染の可能性が示唆され、CTガイド下肺生検で悪性細胞はなく培養からNocardiaが検出された。

症例⑥ 75歳 男性 胸膜・縦隔・肺野に多発性結節あり。CTではそれぞれが非連続性の結節病変であった。石灰化胸膜プラークも軽度ながら存在し、気管支鏡検査で石綿小体も証明され、胸腔鏡下生検で二相型中皮腫と診断された。一部の腫瘍は葉間に存在し一見すると肺内腫瘍の様に見えた。今後、急速に増加するであろう中皮腫の画像所見は多彩であり、初期像としては胸水貯留のみの例も多く、何らかの胸膜病変を見た際は中皮腫の可能性を常に忘れないようにしたい。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.31に投稿された記事

第2回東京保険医協会中央講演会

第2回目も沢山の先生方に参加していただき感謝しております。内容は、結局は肺癌の診断と最近のトピックスに絞って話させていただきました。

講演後の相談の症例検討も、私からみても・・なかなか発見の困難な、早期腺癌の肺野結節症例やfibrous dysplasiaに伴う肋骨骨折の病変等が提示され、大変に勉強になりました。今後の、同様な講演と勉強の機会を与えていただけましたらこちらも幸いと考えております。担当の幹事の先生や事務の方々に感謝しております。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.27に投稿された記事

帝京大学CB症例報告

1月25日18:00より 帝京大学付属病院  5階病理カンファランス室

3症例の臨床と画像、病理を中心に討議が行われた。1症例は頚部リンパ節腫瘤の原発巣不明癌、他の2症例は胸水貯留症例。

症例① 頚部に大きな腫瘤を形成し、縦隔、腹部傍大動脈周囲リンパ節にも転移巣が広がっている。この大きな頚部腫瘤は最初の他院のCTで1スライスのみであるが甲状腺皮膜が鳥の嘴状のいわゆるbeak signを呈しており、画像的に甲状腺由来で外側に大きく発育した腫瘍として矛盾しないと考えた。肝臓癌が有茎性で腹腔内に発育したり、大きな上腹部腫瘍が有茎性子宮筋腫であったりと、原発臓器から分離されているように見えることは、自験例でもまた画像のカンファランスでも時々提示されることがある。このような原発臓器の皮膜から外側に発育する症例を、初めて経験した時はとても信じられないという思いをした。本症例は、病理学的にも免染TTF-1が陽性の低分化癌で、甲状腺癌として矛盾はないと考えられた。

症例②は胸部画像は大量の胸水貯留の症例であるが、C型肝炎に合併したHCCに対して何度もRFAや肝切除等の治療が行われた既往があり、胸部CTで胸膜に接して良好に造影される(されすぎ?!)のポリープ状の小結節が多発している。胸腔鏡下の生検材料からHCCの治療後の播種の可能性に関して討議されたが、病理の免染での証明に問題が残った。

症例③大量の右側胸水症例で、胸膜肥厚と左胸膜の石灰化あり、中皮腫か非結核性の胸膜炎の鑑別が問題になった症例である。フィブリン析出著明であるがADA20.6で好中球の浸潤はなくと細菌性胸膜炎とも思えなかった。病理学的には線維形成型中皮腫の可能性も疑われたが、確定診断にはいたっていない。

今回のcancer boardでは免疫染色に臨床医があまりに期待する傾向が強すぎることに自戒するべき・・・という印象でした。自分の無知からですが、サイトケラチン:CK7とCK20の(+)、(-)の4つの組み合わせパターンによる原発巣の推定は興味深いと考えられましたが、1995年頃から盛んに行われた手法で新しい考え方ではないそうですが、原発巣を絞るひとつの良い試みではあります。しかしながら、例外となる症例も沢山ありさまざまなマーカーの組み合わせが必要なようです。次々と新しいマーカーが開発されるのは素晴らしいことですが、臨床医にとってはなかなかついてゆくのは大変です。

中皮腫の免染の主な抗体も沢山あり、いつも石綿環境暴露の被害認定委員会で聞いていて知らない間に抗体の名前は頭にこびりついて来ているのですが・・・・・なかなか全部の使い道を覚えることは困難です。中皮腫は上皮型と肉腫型によりマーカーの組み合わせも微妙にことなり腹腔発生の中皮腫と卵巣悪性腫瘍との免染による鑑別が問題となる。また陽性マーカーだけではダメで必ず陰性マーカーも必ず組み合わせる必要性など、今後激増するであろう中皮腫のマーカーに関しては、被害申請のときには必要となるため、これからの臨床医には必須の知識である。代表的な陽性マーカーとして上皮型中皮腫はcalretinin, CK5/6, WT-1, D2-40肉腫型中皮腫のマーカーとしてAE1/AE3,CAM5.2を、陰性マーカーとしては肺腺癌との鑑別にCEA,TTF-1,卵巣腫瘍との鑑別にER,PgR,Moc31,BerEP-4などが代表的であろうが、中皮腫に関しては決定的なマーカーはいまだ存在しないということも知っておく必要がある。そして電子顕微鏡による中皮細胞の形態観察も反応性中皮細胞と腫瘍性中皮細胞の鑑別に極めて重要となる。また生検の組織標本がなくても、中皮腫診断を得意とする病理医や細胞診スクリーナーに依頼すれば、胸水穿刺による細胞診所見からも正確な診断可能である。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.25に投稿された記事

2011年1月埼玉日赤・呼吸器カンファ・レポート

新年の埼玉日赤は、恒例により私の講演を行った。テーマは昨年の放射線学会総会の研修医セミナーの「胸部画像のmimicker達」すなわちnormal variants やpseud‐lesionなど病変と間違えやすい正常範囲の所見に関する内容でお話しさせていただいた。

講演の前に、通常の症例提示・画像検討も行われた。このうちの2例を選んで、興味深い症例の画像を提示する。

症例①は脳転移で発症している。この正面写真から左肺門に重なる腫瘍の存在指摘に困難を覚える方も多いと思われるが、同時に撮影された側面像からは、境界明瞭な腫瘤影を容易に指摘ことが可能である。左上葉の肺癌とその脳転移として矛盾しないと考えられた。かくれんぼ肺癌の一例であるかくれんぼ肺癌肺尖、肺門、心陰影、横隔膜下等に隠れ、胸部単純で黒く写るいわゆる肺野だけ観察すると見落としてしまう肺癌に関して、私が名付けました。左右の比較読影や側面像が存在診断に重要です。

 

症例② この症例もやはり多発性脳転移で発症している。左上葉の無気肺像伴う肺門部腫瘤をみとめ、原発性肺癌として矛盾はない所見であるが、この症例は右中肺野の巨大な腫瘤と胸椎の側彎症も伴なっている。画像診断のみならず臨床診断の基本として、「常に病気は一元的に考えろ!」といわれる。これは大切な言葉ではあるが常に正しいとはもちろん限らない。この症例はCT画像から皮膚の多発小結節と側彎胸椎の小型のmeningocele髄膜瘤認め、神経線維腫症:レックリングハウゼン病の診断が可能である。それでは右の巨大腫瘤影からは何を考える・・・?経皮生検が施行されて神経原性線維腫の診断が確定している。胸壁または肋間神経からの発生と考えられた。神経線維腫症は比較的頻度の高い遺伝性の母斑症であり、肺病変としては下肺野の線維化とともに上中肺野のブラ形成の頻度も高く、成人では約20%とする報告もある。この症例も著明な上肺野の気腫性嚢胞ブラの広がりをみた。肺癌と神経線維腫症の合併頻度は・・・?高いという報告は今まで目にしていないが、線維化や気腫性変化あれば当然、正常者と比較すれば肺癌の頻度が高くても全くおかしくはないと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回の埼玉日赤・呼吸器・カンファ2月16日19時からの予定です。興味深い画像の症例ありましたら是非、提示を御願いいたします。それでは、松島秀和先生また来月もよろしく!みな楽しみにお待ちしております。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.24に投稿された記事

さいたま赤十字呼吸器カンファランス

第三水曜日 埼玉赤十字病院4階 午後7時より

1時間の症例検討後、私の簡単なミニレクチャーをおこないます。内容はまだ未定ですが・・何か要望があればお答えいたします。

カンファランス終了後は、いつもの病院の前のカレー屋さんで簡単な内輪の新年会を予定してます!カンファを何時も盛り上げてくださる皆様方の参加を心よりお待ちしております。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.19に投稿された記事

さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス

7時より4階会議室にて症例検討と講演。
投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.19に投稿された記事

東京保険医協会 中央講習会Ⅰ

2011年 1月 13日(木) 午後7時30分~午後9時30分
2011年 1月 27日(木) 午後7時30分~午後9時30分

会 場 東京保険医協会セミナールーム (JR 新宿駅南口より徒歩10 分)

問い合わせ
TEL 03-5339-3601
FAX 03-5339-3449

投稿カテゴリ | コメントはありません11.01.13に投稿された記事

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