アーカイブ 1月, 2012

第8回Chest imaging forum報告

日時 2012年1月25日(水)19:00~21:00

場所 聖路加国際病院2F トイスラー記念ホール

横浜旭中央病院の佐藤秀一先生の胸膜の正常変異に関する講演のあと8例の症例が提示された。

症例①気胸にて発症した中皮腫の症例。胸膜腫瘍はなく胸水のみ、生検にて陰性のため経過観察して明らかなびまん性胸膜腫瘤に進展した例。プラークの存在から中皮腫を画像診断医は指摘したが・・かなりショボイ感じのプラークであり、中皮腫の多くはプラークを伴わないことも知っておきたい。気胸で発症する中皮腫症例もあるが圧倒的に胸水貯留例が多い。

症例②肺尖部の壁側胸膜の腫瘤と気胸の症例。いわゆる単発性限局型中皮腫の症例であると思われるが、胸腔鏡下切除で診断されたが経過にて胸膜散布され、最終的には汎胸膜切除術が他院にて施行される。多くの中皮腫は浸潤性の腫瘍発育示すが、時に限局したSFT様の胸膜腫瘤を呈することもある。気胸合併する転移性腫瘍として、若年者骨肉腫以外にも乳癌や頭皮の血管肉腫等が知られている。

症例③他院にて月経随伴性気胸と診断されて、外科的に証明されているにもかかわらず気胸を繰り返し、左側気胸も起している症例。胸部CTではLAMに一致する薄壁空洞の多発と腹部CTの後腹膜腔のリンパ管腫様所見あり。大腸粘膜も肥厚し、下利便は白色で乳び便と考えられた。月経随伴性気胸とLAMの合併と考えられた症例。

症例④重度の左気胸とごく僅かな右気胸もある。胸部単純で右心臓に沿った透亮帯ありガスの広がりより縦隔ではなく心嚢内気腫と言える。気胸が心嚢内に広がっていることより先天性心膜欠損症と胸部単純写真1枚で診断可能である。右にも少量ながら気胸あることより右にも小さな心膜欠損の存在が示唆された。

症例⑤吹奏楽クラブの練習中に強度の上腹部痛で発症した12歳の女児。疼痛に伴なう胸椎側湾と胸水貯留あり。CTにて左縦隔側に高吸収な腫瘤様陰影あり。画像と経過から肺葉外肺分画症の捻転によると、過去の報告画像の類似性より診断。外科的切除を受け肺靭帯内の肺葉外肺分画症の梗塞と診断された。

症例⑥検診で発見された右下肺野の境界明瞭な1cm大のSPN症例。肉芽腫か過誤腫様の腫瘍であるが1年前の検診写真にはなし。CTにて胸膜に接するも胸膜発生か肺内か意見が分かれる症例。石灰化はCTでも認めていない。悪性否定できないと切除になるが病変はいわゆる胸腔鼠・胸腔内遊離体と呼ばれる結節で肺内ではなかったかが、右S6の過分葉ありその部の葉間裂にはまり込んでいたために肺内結節に見えていいたと推察可能である。

症例⑦両側下肺野中心の胸膜下末梢優位の不整な結節と空洞影あり。非特異的な所見ではあるが、好酸球増多とタイ人で沢蟹の生食の既往あり。ウエステルマン吸虫症宮崎吸虫症の抗体がともに高値であった。

症例⑧40歳台のアスリートのアメリカ人。突然の前胸部痛あり。胸部側面写真で胸骨下に胸膜ベースにした結節影あり。CTでは内部はほとんど脂肪で周囲は皮膜様の構造で囲まれている。心膜脂肪のfat necrosis典型像とのこと。Radiology  :diagnosis pleaseに出ていた同一疾患の症例も提示された。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.25に投稿された記事

さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告

2012年1月18日(水) 19:00より

講演に先立ち症例検討が行われた。

症例①右肺全体の浸潤影、中肺野に透亮あり空洞の可能性も否定できず、対側肺にも軽度の浸潤影や結節陰影あり。発熱を主訴としているが病変のわりに咳嗽・喀痰はそれ程強くない。CT所見では著しい中葉と舌区に気管支拡張所見目立つことより、慢性に経過し進行した非結核性抗酸菌症アビウムとして矛盾なしと考えられた。

症例②急激に発症した呼吸不全とほぼ正常な胸部写真。胸痛もあったとの臨床情報から、定型的な肺動脈血栓塞栓症PTEとして問題なし。右肺門の軽度腫大はナックルサインの軽い所見としてよいと思われ、CT所見にて確認された。

症例③検診で左大量胸水あり。CT所見で縦隔側胸膜に微細な顆粒状変化目立ち中皮腫に特有な所見と思われた。胸腔鏡下生検で中皮腫と診断された。

症例④以前より右肺尖部に局在した石灰化の散布影あり。新しくその周辺に浸潤影出現。結核の再燃として問題ないように思えたが、CT所見をよく観察すれば、B2気管支口の肥厚像や気道中心性粒状影(つぶつぶ)や気道病変の広がりから、通常の結核シューブではなく気管支結核としての再燃と診断可能な症例。

症例⑤右上葉の著明な容積増大を伴った内部均一な肺葉性コンソリデーションの症例。いわゆる肺葉膨隆徴候を呈する感染症ということでクレブジラ肺炎疑い、喀痰からもそれが証明された。他に肺葉膨隆徴候を示す感染としては肺炎球菌性肺炎やレジオネラ肺炎があると述べられた。

(まとめ)症例はどれも画像を詳細に分析すれば正確な診断に近づける教育的な素晴らしい症例提示でした。

私の講演内容は「他人に差をつける中央陰影読影の10のポイント」。を行った。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.18に投稿された記事

1月帝京大学キャンサーボード報告

1月17日病理顕鏡室にて6時より開催された

症例① 78歳男性 大動脈瘤に対する弓部置換術後に肺炎合併した。その2ヵ月後に左上葉に2cm程度の結節出現するもWBC20.000、CRP5~7あり肺膿瘍疑いで観察していた。12月に1週間ほどで6.5cmと急速に増大する。CTガイド下生検では悪性所見なし。造影CT画像等からも薬剤耐性肺膿瘍と判断して部分切除したところ病理では中心部に膿瘍形成した肺癌で旧分類では巨細胞癌とされていたような多形癌pleomorphic carcinomaと診断。腫瘍は腫瘤塊の表面にのみ存在し中心部は強度の壊死で膿瘍形成としても矛盾はなしとのこと。どのようなタイプの低分化腫瘍であれ腫瘍細胞増殖だけではこのような腫瘍径の増大速度の説明がつかないと考えられたが、切除標本の解析にて膿瘍/腫瘍内出血等の合併があったための急速増大とし納得できた症例。

症例② 63歳男性 肺尖部肺癌(EGFR遺伝子変異 腺癌)のびまん性肺内転移の症例。イレッサ治療中に髄膜炎症状出現し、MRでは脳転移以外にもf癌性髄膜炎として矛盾しない所見が最終的に得られたが、髄液細胞診と造影MRの所見の分析の困難さが指摘された。またタルセバがEGF mutation腺癌の癌性髄膜炎に有効とする報告があるため試みるも、呼吸不全にて死亡する。

症例③ 80歳 女性 大量の右胸水あり。胸水ドレナージ後の進展後の肺内に2箇所の腺癌として矛盾しない結節あり。CT検査にて大腸癌の合併も見つかる。病理学的には生検標本から、同じ腺癌でも全く細胞形態が異なり、転移ではなく重複癌と考えられた。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.18に投稿された記事

胸部写真の読み方と楽しみ方の改訂

2003年に秀潤社から出版した「胸部写真の読み方と楽しみ方」の改訂版の最終原稿が、年末に私の元に査読のために送られてまいりました。今回の改訂版は多くの友人達やカンファランス等でご指導いただいている先生方に御願いし、分担執筆とさせていただきました。改訂版の内容は大変に濃く充実し、製本後に通読することを自分でも今から大変に楽しみにしております。

 思い出すに・・「臨床画像」誌に2年近く連載し、連載終了後はまとめ教科書として出版していただけるというメディカルビュー社の約束でありながら、結局は編集会議に担当者が企画書を数回提出するもボツとなり、何度かの話し合いのすえ・・・「出版社としては、売れそうもない本は出せません!内容があまりにマニアック過ぎ、また類似した本の出版社から訴訟されると負ける恐れもあり・・・」とのメディカルビュー編集長のお言葉をいただき、かなり気分的に落ち込んでしまいましたが・・・・。最終的には秀潤社の原田編集長のご好意により出版することが出来、また思った以上の売り上げもあり、もちろん訴訟されるようなこともなく、何とか編集長のご好意に報いることも出来ました。これらの出来事が、つい昨日のような気もいたしますが、あれからもう10年近くも経ってしまったのですね。おかげ様で、姉妹版とも言える「Dr.Satoの胸部写真の楽しみ方」のDVDもケアーネット社から発売になり、こちらも研修医制度の改革もあり順調に売り上げを伸ばしたようでした。

今年の放射線学会総会までには何とか製本が間に合って、総会会場で展示できたら幸いと考えておりますので、今後とも宜しく御願いもうしあげます。

投稿カテゴリ | コメントはありません12.01.09に投稿された記事

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