アーカイブ 12月, 2012
12月さいたま赤十字呼吸器カンファ症例レポート
今月は9症例の画像を中心とした症例討議が行われた。簡単に症例の解説を試みる。
症例① 20歳 女性 高熱 何種類かの抗生剤(フロモッコス、クラビットなど)が2週ほど投与されていたが反応せず、胸部写真撮影し異常影で紹介。胸部写真は右上葉の小葉間裂できれいに境されたConsolidationとGGOで典型的な肺炎像。CTも同様の所見で気道変化は目立たない。血清学的にマイコプラズマ肺炎と診断されたが、抗生剤に対して耐性を有するマイコプラズマ肺炎が増えているので注意!!画像はこれでマイコプラズマか?!というほどに気道・細気管支病変がなく肺胞性肺炎のパターンで画像からの細菌性肺炎との鑑別は困難であった。このようなair space consolidationを来たすマイコプラズマ肺炎は成人には稀で、若年者層ではしばしば見られる。細胞性免疫の関与によりCT画像が異なってくると考えられている。
症例②60歳代 男性 外傷性骨折で入院時の胸部写真で異常指摘。画像は典型的は左上葉無気肺像であるが、無症状で偶然に発見が珍しい、左上葉気管支発生の扁平上皮癌。N0でありsleeve resectionの可能性に関して検討された。
症例③ 60歳代 男性 健診で見つかった右肺尖の浸潤性陰影。単純写真からも活動性TBと思われるが、他院で抗生剤治療が4週間施されている。改善ないため紹介来院し胸部CT施行。右S1,2に数個の結節と周囲に散在する細気管支粒状影がびっしりあり。画像からは鑑別必要としないほど典型的な結核症・抗酸菌感染と診断可能と思われたが、気管支鏡検査で結核菌を証明している。
症例④ 60歳代 女性 慢性間質性肺炎で少量持続副腎皮質ホルモン剤服薬中の患者。毎月胸部写真を撮影している。右下肺野内側に結節影現れる。「見直し陽性例」肺癌症例、NSEやや高値で未分化癌と思われる。胸部CTでは気腫性線維化で喫煙者肺に一致する。このタイプの線維化は肺癌の合併が多いので注意を要するが・・・毎月1回の撮影は頻度が多すぎて却って観察注意がおろそかになる可能性が指摘された。半年ほど前のCTでは気腫性嚢胞壁に数ミリの点状影ありこれが大きくなったものと推察された。
症例⑤ 60歳代 女性 健診発見の胸部異常影。 典型的な気管支拡張伴う中葉無気肺の中葉症候群に抗酸菌症の合併したもの。胸部CTでは中葉外にも細気管支病変・小葉中心性肉芽腫や空洞も広がっていたが無症状であった症例。
症例⑥ 70歳代 女性 健診発見無症状 心拡大と左肺門の軽度拡張傾向程度で有意な所見は不明であるが、下行大動脈の肺門レベルで走行が追えない部分あり。胸部CTでは上中縦隔に累々とリンパ節腫大あり。左下葉S6の部分的な無気肺も見られた。US観察下の気管支鏡生検でリンパ節と無気肺部の両方からサルコイドーシスの肉芽腫として矛盾しない組織が得られた。サルコのリンパ節腫大では無気肺を来たすことは稀。サルコのリンパ節は軟らかいために、気管支閉塞は起りにくいといわれている。この症例の無気肺がサルコによるものとは、たとえ組織でサルコイド肉芽腫が証明されても、考えにくいと思われる。
症例⑦ 70歳代 男性 ワーファリン服薬中の患者。喀血を主訴に来院。右下肺野に境界明瞭な空洞伴う腫瘤影あり。内部にはニボーを形成している。経過で内部は均一な充実性に見える腫瘤に変化。胸部CTでは小葉間裂に存在して臨牀情報および経過と画像から葉間血腫と思われた。ほぼ同一の画像所見を呈した自験例あり、そちらは喀血はないが、新たに出現した結節影のため、腫瘍を疑い切除し小葉間裂に存在する血腫と診断した。
症例⑧ 70歳代 男性 大量持続性喀血 胸部単純は左上肺野外側にGGOの広がりあり。他にも淡い斑状影が疑われる。胸部CTでは全肺野に散在するGGOと一部中心に索状影や不整小結節を伴っている。画像からは血管肉腫の転移か血管炎を疑う、診察により右頸部に腫瘤あり、生検にて易出血性であったが何らかの悪性軟部腫瘍:肉腫として矛盾しない組織が得られた。通常は頭皮の血管肉腫からの転移が多い。皮膚の血管肉腫転移巣の画像は肺野結節と嚢胞形成に周囲を取り巻くすりガラス影の広ろがりが特徴的で、CT画像から診断可能な疾患である。本症例は喀血のコントロール困難で死亡している。剖検がなされ最終病理診断を待っている。
症例⑨ 60歳代 女性 結核の治療歴あり。胸部単純は典型的な上葉無気肺の画像であるが、慢性に経過し陳旧性の瘢痕性無気肺とされている。発熱・WBC増加等の炎症症状出現し、胸部写真では右上葉無気肺部の増大あり。気管支鏡検査で上葉気管支より膿性痰が多量流出するのが観察され、細菌感染を来たしたものと考え、陳旧性無気肺に合併した肺膿瘍と診断された。
12月品川カンファミニレポート
昨日は年末の忙しいなかお集まりいただき感謝しております。栗原先生からHIV治療に関する興味深い症例提示がありました。呼吸器診断の画像と臨牀情報の組み合わせの重要性を再認識した症例提示でした。AIDS患者に合併したPC肺炎症例ですが、ほぼ全肺野のGGOの広がりで、CT所見はそれに加えてびまん性に広がる強度の牽引性気管支拡張と下肺野肺底区の索状の板状無気肺所見。HAART療法後に出現した、感染兆候と両側上肺野の浸潤影から・・・何を考えるか??
⇒免疫再構築症候群でした。 IRS と Kapsosi IRS←興味ある方はこちらをクリックしてくださいKaposiの論文は下野太郎先生から送っていただきました。。
中皮腫診断の耳学問
石綿被害救済に参加していると勉強になることが多い・・・。
前回の会議では腎臓癌の胸膜転移と中皮腫の鑑別に関する症例の話題が検討されました。私は腎臓癌が肺に転移することなしに胸膜に多発転移する症例など・・・全く考えもしなかったが、この両者の鑑別は病理医にとって、鑑別に大変悩ましいことで知られているそうです。まれな組織型のタイプとしてclear cell型の中皮腫は良く知られた事実だそうで、会議に同席した放射線科の先生(旭川医大の高橋康二先生)も、この両者の鑑別は画像診断医にとっても難しいと同意されておられ、知らないのは私だけで・・・少し恥ずかしい思いをいたしました。
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