アーカイブ 1月, 2013
中皮腫の耳学問
本日の環境庁石綿会議の約50の中皮腫症例は、比較的典型的な画像例が多く、早めに終了することができた。その中で大変に画像所見が興味深かった1症例を報告したい。不規則な斑状の石灰化が、層状に瓦礫の石を積むように肺尖から肺底区まで不整に進展した肉腫型中皮腫の1例である。病理学的には石灰化ではなく骨化・骨形成とのことです。稀ながら骨形成性の中皮腫が知られており、今までにも数例の経験はあったが・・・今回のような広範囲にびまん性に広がる骨形成性の中皮腫を見たのは初めてである。病理学的には骨肉腫との鑑別がしばしば困難で、画像所見で肋骨等の骨組織と非連続であることを確認することも重要になる。subtypeは全て肉腫型で、上皮型や二相型では見られない。この興味深い症例のCT写真をお見せすることが出来なくて残念・・・。
1月の神田塾のお知らせ
今年初めての神田塾は、1月23日(第三週の火曜日)19:00~ 神田e-site health会議室で開催します。今年もどうぞ宜しくご協力のほどお願い申し上げます。
1月さいたま赤十字病院呼吸器カンファ症例報告
1月16日水曜日 さいたま赤十字病院カンファランス室 19:00~
5症例が提示された。簡単に報告する。
症例① 25歳 男性 検診発見症例 右肺尖に3cm程度の腫瘤影とブラ形成あり。CTにて肺尖部ブラと腫瘤内に空洞形成あり。気道撒布影は見られないが散在する小斑状影はある。気管支鏡で抗酸菌は証明されたが、結核とMACはPCRで陰性。まだ抗酸菌のタイプは検査中で、同定されていない。
症例② 60歳代 男性 検診発見の右肺の腺癌。HRCT所見のすりガラスの分布や病変辺縁部の小結節、葉間の肥厚部の形態等がやや非定型的と思われた。
症例③ 70歳代 女性 MAC症で経過観察中に突然の呼吸苦出現する。胸部写真では胸膜癒着と右肺門やや目立つ程度。CTでは著明な右心系・主肺動脈の拡張あり。単純CTでも高吸収域の肺動脈内血栓を指摘可能な症例であった。突然の呼吸苦では画像に著変ない時はまずPTEを疑うことが強調された。下肢静脈内にも血栓が証明された。
症例④50歳代 男性 検診発見 左下肺野に索状影の集簇あり。AVM等による異常血管影か気管支内粘液栓を疑う所見である。CTでは両肺3箇所に多発する粘液栓g認められ、粘液栓の一部は著明な高吸収を呈しており、定型的なABPAの画像と診断可能である。末梢血の好酸球数12%、BAL液中も好酸球が著増しており、ABPAとし矛盾しないが、糸状菌含めアスペル等の真菌は認められていない。また本症にみられる粘液栓の高吸収は真菌のアミノ酸代謝により生じるマンガン・鉄等によることが述べられた。これはMRIのT2WIで副鼻腔のアスペル病変が無信号化する原因と同一と思われる。検診で発見されるABPAはめずらしいが、問診するとステロイド剤の吸入療法歴はある。
症例⑤ 60歳代 男性 冠状動脈バイパス術後の退院前に右胸水やや増量し穿刺排液後に進行する右肺Consolidationと両側胸水の増量あり。肺炎等の治療に反応なくステロイドパルス療法施行し著明な改善を認めた症例。原因不明の急性呼吸不全。
1月帝京大学呼吸器疾患Cancer board報告
1月9日水曜日 19:00~ 病理検鏡室にて2症例の検討が行われた。ともに胸部単純写真が興味深い症例であった。
症例① 60歳代 女性 胸部単純では頸軟部に左右差あり、右胸鎖乳突筋影の消失と右肺尖部の淡い透過性の低下域から前頚部の軟部腫瘍の存在を疑った。しかしCTでは、胸壁背側の肋間に存在する内部が低吸収の腫瘍が描出され、MRの所見は造影にて多房性の壁が比較的厚く強く造影されていた。切除され軟部の粘液腫Myxomaと診断されたが、脱灰処理を行っているために、詳細な病理診断は難しいという点も述べられた。石灰化や骨化がCTで認められない組織であることが術前に分かっていれば、切除標本の脱灰処理は省いてもよいのではないかと思われる。その後、頸部腫瘤を自覚するようになり生検にてfolicular lymphomaと診断された。その際の胸部CTで第11胸椎椎体前面に巻きつくように存在する軟部影あり。PETでは頸部とこの椎体部のみに集積が認められた。これがlymphomaかmyxomaの転移かの判断が問題となったが、MR,PETの画像所見からもmyxomaの可能性は否定的と考えられた。また濾胞性リンパ腫では、椎体部病変の生検よりも骨髄生検によるStagingを優先することの重要性が強調された。
症例② 40歳代 男性 30歳代で右下葉の腺癌StageⅠAの切除歴あり。その際の胸部写真では右肺底区に8mm大の一見すると硬化性結節か肋骨の骨島のように判断してしまう様な境界明瞭な結節影であるが、CPangleに淡い浸潤影を伴っている。切除後の評価では、EGFR陰性、ALK陽性の腺癌で、CPangleに存在した淡い陰影は腫瘍による肺動脈閉塞に伴う梗塞病巣と判断された。術後4年目に、縦隔リンパ節転移著明にてザーコリン(クリゾチニブ)投与開始する。経過は良好であったが呼吸苦出現し造影CTにて肺動脈血栓塞栓症と診断された。下肢静脈内にも血栓あり、ザーコリンの副作用の可能性や今後の血栓の治療の継続と抗がん剤の選択等に付き議論された。ALK陽性肺癌の抗がん剤として、アリムタに有効性があるとする報告が紹介された。
1月の品川カンファランスの症例
新年あけましておめでとうございます。今年の第一回目の品川カンファランスは早めに切り上げて8時頃には自宅居間において新年会を開催いたしました。大久保裕雄先生が今回のカンファで提示された症例の画像を紹介いたします。たしか・・・無症状でしたが、このCRのどこが異常所見か指摘できますか?
今年も宜しくお願いいたします。
大学を退職し㈱MS.CHESTなる遠隔読影の会社を立ち上げてから・・・早いもので今年で5年目を向かえます。遠隔読影の仕事もおかげさまで、少しづつですが順調に増えてきて、現在は6名の先生方にお手伝いしていだだいております。
また毎月1回の定期的に若手先生方ともに勉強する機会も、品川カンファ、神田塾、さいたま赤十字呼吸器カンファ、帝京大学キャンサーボードに加え、4月からは東邦大学大橋病院呼吸器カンファにも参加させていただく予定です。その他にも聖路加病院でのChest imaging folumや大阪びまん肺研究会も参加させていただいております。そして、これらの会で知りえた知識を出来るだけこのHPで報告させていただきたいと考えておりますので、皆様のご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。
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