帝京大学キャンサーボード報告
9月20日(火) 病理学教室顕鏡室 18:00
2症例の検討がなされた。
症例① 透析と貧血きたしている胸痛患者で、胸部単純写真は右上縦隔の著明な突出あり。側面では胸骨後部透亮帯を埋め、前縦隔腫瘍を疑わせる所見である。CTで観察すると前縦隔中心に広く進展する縦隔の浮腫・炎症様所見あり。またその前縦隔病変の一部に高吸収な血腫と思われる部位も認める。明らかな腫瘍とする病変はなし。経過のCTでは両側胸腔にも出血進展してきており、救命目的で開胸術となる。前縦隔内には明らかな腫瘍はなく、大きな血腫を切除する。血腫の病理検体内に一見腎癌のclear cellを思わせる病巣(径1cm強)を認める。免染で上皮系のマーカーは全て陰性であり、腎には腫瘍なく転移は否定された。免染の所見等から病理学的に異所性の副甲状腺腫と診断され、その破裂に伴なう縦隔出血を来たしたものと診断された。術前に存在した高カルシュウム血症が、なぜか術後に低下したのか・・??に対する解答が得られた極めて珍しい症例であったが、同様の異所性副甲状腺腫からの縦隔出血の症例報告は一例だけ検索により見つけることが出来たとのこと・・・。
症例② 皮膚筋炎に胸腺腫が合併した症例。胸腺腫に対して放射線治療がなされているが、現在は胸膜播種を来たしており、DMという患者の状態を勘案し、胸腺腫の胸膜播種に対する治療に関して討議がなされた。化学療法を考えるよりは外科的な切除と放射線治療を組み合わせた療法を考えて進めてゆくべきではないかという結論。
症例③ 石綿肺と石綿プラークの症例に、LCNECによる著明な縦隔肺門リンパ節腫大来たした症例。放射線照射後の急性増悪した間質性肺臓炎にステロイドパルス療法を施行し、良好な結果が得られている。もともとの石綿暴露による肺の線維化が肺底区胸膜下を中心に存在しており、これに放射線照射が加わり、照射野以外にも強い反応が出たものと考えた。
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