アーカイブ 11月, 2011

帝京大学キャンサーボード報告

11月15日 火曜日 18:00 病理顕鏡室

3症例の検討がなされた。

症例①70代 男性 胸部写真は右肺底区の径2cmほどの淡い結節が検診で発見された。左中肺野に胸膜の石灰化プラークあり。胸部CTでは多発する石綿プラークを認め、肺底区背側優位の石綿による線維化病巣の広がりあり。結節影は淡く高分化型腺癌を疑うが、腫瘍に向かう気管支壁の肥厚と腫瘍辺縁の毛羽立ちがやや腺癌としては不自然な印象もあり。気管支鏡および術中迅速病理でも悪性所見なし。病理の最終診断はCD20(+)CD10(-)でMALTとのことであった。石綿暴露肺にMALTの合併があることは初めての経験であるが文献的にもほとんど報告はないものと思う。偶然に合併したものと考えるが、腺癌とMALTの画像上の鑑別も含め大変に興味深い症例である。

症例②70代 女性 肺炎と慢性膿胸の診断で経過観察中画像および臨床像の悪化で入院。はじめにCTで認めた数箇所の気道散布病変は増大し左胸膜変化の増大と右胸膜変化も出現し、左肺野にはびまん性陰影出現してくる。これだけ明らかなかつ多彩な陰影が進行し諸検査で診断できないことからはサルコイドーシスやリンパ腫の可能性が高いと思われた。アミロイドーシスは画像から否定的。SIL-2R6075と高値なことからも悪性リンパ腫が示唆された。リンパ節生検からはAE1-AE3(ー)、CD4,CD5(+) Bcell type malignant lymphomaが強く疑われたが生検材料が微細で詳細な判断は困難とのことでした。

症例③60代 男性 SVC症候群、経皮生検では腺癌疑うも、ProGRP683と高値のため他院にて小細胞癌として放射線と化学療法が施行されている患者。右肺尖に腺癌を疑わせる陰影がかくれんぼしている。縦隔は累々とリンパ節の腫大と融合が広がる。そしてびまん性の粟粒影が全肺野にひろがり血行性の転移も疑われたが、この陰影は他の腫瘍影が治療に対して著効したにもかかわらず全く変化なく、結果的にこれは転移ではなく職歴にある40年におよぶ鋳物工肺の可能性が示唆された。通常の珪肺とことなり鋳物肺はmixed dust pneumoconiosisiの形を来たすこともあるようですが、画像的に全く線維化を伴わない全肺野にランダムにひろがる粟粒陰影の塵肺症に関して、ありえるかもしれないが・・・? この症例に関しては、他院での放射線治療範囲と病理組織と腫瘍マーカーのギャップ等を中心にして討議がなされた。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.11.15に投稿された記事

11月品川カンファランスのお知らせ

11月8日(火曜)19:00よりMS.CHEST事務所にて開催いたします。 お時間のある方は奮ってご参加下さい。お待ちしております。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.11.08に投稿された記事

第25回胸部放射線研究会報告

10月21日に下関で開催された胸部放射線研究会では44演題の報告がなされた。多くの貴重かつ稀有な症例が提示された。そのなかで臨床面から印象的であった症例に関して解説したい。

①演題17 潰瘍性大腸炎の治療中に出現した胸壁腫瘤。胸囲結核が疑われ切除がなされたが最終診断は壊疽性膿皮症であった。潰瘍性大腸炎の約20%に合併し、外科的処置は禁忌とされている皮膚疾患で、胸壁発生はまれであるとのことである。

②演題28 多発小結節の52歳女性。喫煙1本/日!!! CT画像は小嚢胞と外側3/1肺野に散在する崩れかけたような小結節や淡い小結節から典型的なLCHの画像といえるが、TBLBの所見から提示施設の病理医は過敏性肺臓炎と・・・。研究会の病理コメンテイターの福岡先生からLCHの診断で問題なしと画像を裏付けるご意見あり。しかし日に1本の喫煙よりは家族内の重喫煙者の存在が原因と考えられる。

③演題29と演題35はErdheim-Chester病 画像はcoated aorta sign と腎周囲の軟部影より典型像であるが、演題35は肺はLCHで肩の軟部腫瘤はE-C病とのことで、免染のCD1aが両者の鑑別の決めてとなる。しかしこれらの本体はまだまだ研究が進行中で将来はどのように分類されてくるのか興味深い。

④演題37 PLCDD (Pulmonary light chain deposition disease)の1例は私の教科書の内分泌疾患と胸部の項の演習問題に使用した症例と同一疾患と思われる。本報告例はシェーグレン症候群の合併を疑うも確定診断には至っていないそうですが・・・。肺の多発嚢胞と多発結節で病理的にアミロイドーシスと類似するがコンゴーレッド等に染まらない、最終診断にはκ-chain,λ-chainの染色や電顕の検討が必要な疾患で、和名は単クローン性免疫グロブリン沈着症と言うそうです。覚え難いので1976年に最初に報告したRandallの名前をいただきRandall症候群としたらと思ったしだいです。

他にも末端肥大症と大腸癌におけるIGF-1受容体の強発現と小型腺癌のPET集積の関連に関する考察など多数の興味深い報告があり、大変勉強になった研究会でした。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.11.02に投稿された記事

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