さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告

さいたま赤十字病院において定例の呼吸器カンファランスが開催された。今回は若干参加者が少なかったが、いつもながらの熱心な討議がなされた。

症例① 45歳 男性 胸単では、極めて軽微ながらほぼ全肺野の間質性陰影の広がりを認めた。とくに右上葉血管影の不鮮明化が目立ち、微小粒状影の存在が疑われ、右肺門部の軽度リンパ節腫大も示唆された。胸部CTも基本的に同様の所見であったが、KL-6が7693と極めて高値であり、KL-6がこれだけ著明に上昇するのは1.PAP:肺胞蛋白症、2.HP:過敏性肺臓炎3.PCP:ニュウモシスチス肺炎4.悪性腫瘍の4つに鑑別が絞れる重要な所見という意見があり、画像からもPCPとして矛盾はないと考えられた。血液検査にてHIV陽性でAIDSに合併したPCPと診断され、他院へ紹介となった。しかし、CT所見で全肺野のびまん性すりガラス陰影に加え、右肺尖の微細粒状陰影が目立つ点と所属リンパ節の軽度腫大よりPCPに加え肺結核の合併の可能性も否定できないという意見もあり、結局最終診断は紹介病院からの精査結果待ちとなった。また、AIDS患者に合併するサイトメガロ感染でも粒状陰影が目立つ症例があるという意見も追加された。

症例② 59歳 男性 喘息患者。右上葉に広がる索状影、結節様陰影、浸潤影あり。CT所見からはEP:好酸球性肺炎として矛盾なく、BAL液中の好酸球も48%と著増していた。Churg-Strauss症候群やANCA関連血管炎との鑑別や、喘息に合併する胸部異常などの臨床的な問題に関して討議がなされた。

症例③ 47歳 男性 膵臓癌の治療中の患者で、胸水と肺尖部の陳旧性結核病巣のみであったが、治療経過で右肺に浸潤影出現したが、その時には胸水は自然に消退していた。膵臓癌の肺転移は肺胞上皮癌と類似し炎症所見のような画像を呈することがり、この浸潤影も臨床情報から膵癌の転移を疑ったが、喀痰検査でGaffky8号と大量の結核菌が証明された。もう一度CT画像を検討すると一部に空洞形成を認めたが、二ボーを伴い、TBを積極的に画像所見から疑うことは困難な症例と思われた。また、自然に消退する胸水として、中皮腫が良く知られるが結核でも時に無治療で消失する例もあることがあり、注意が必要と考えられた。また本例のように陳旧性結核病巣の存在する担癌患者の化学療法中では結核の再燃の危険性を常に考慮することを忘れてはいけないことがとくに強調された。

症例④ 57歳 男性 数年前より胸部異常陰影を検診で指摘されていたが、精査は受けていない。今回、陰影の増加あり、胸部CTと気管支鏡が行われPAP肺胞蛋白症と診断された。胸部CT画像は定型的なPAPの所見の一つである、胸膜下に広がる帯状のすりガラス陰影が見られた。

 

 

 

例⑤ 肩甲骨の外骨腫が肺野の結節影様にみられた症例。胸部CTが依頼され、3D処理にて外骨腫が肋骨と関節形成しているのがきれいに描出されていた。学生の健康診断の胸部間接撮影で時々見つけるが、肋骨の偽病変と異なり単純写真のみからでは診断は難しい。

症例⑥ 56歳 男性 以前にCPAで救急入院し救命された既往ある重喫煙者。呼吸音より中枢気道狭窄疑いCTが撮影され、声門部の強度の軟部影による狭窄を認めたが原因精査中で、前回入院時の挿管操作との関連なども考えられた。

11.02.16に開催のイベント

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