アーカイブ 2月, 2011

さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告

さいたま赤十字病院において定例の呼吸器カンファランスが開催された。今回は若干参加者が少なかったが、いつもながらの熱心な討議がなされた。

症例① 45歳 男性 胸単では、極めて軽微ながらほぼ全肺野の間質性陰影の広がりを認めた。とくに右上葉血管影の不鮮明化が目立ち、微小粒状影の存在が疑われ、右肺門部の軽度リンパ節腫大も示唆された。胸部CTも基本的に同様の所見であったが、KL-6が7693と極めて高値であり、KL-6がこれだけ著明に上昇するのは1.PAP:肺胞蛋白症、2.HP:過敏性肺臓炎3.PCP:ニュウモシスチス肺炎4.悪性腫瘍の4つに鑑別が絞れる重要な所見という意見があり、画像からもPCPとして矛盾はないと考えられた。血液検査にてHIV陽性でAIDSに合併したPCPと診断され、他院へ紹介となった。しかし、CT所見で全肺野のびまん性すりガラス陰影に加え、右肺尖の微細粒状陰影が目立つ点と所属リンパ節の軽度腫大よりPCPに加え肺結核の合併の可能性も否定できないという意見もあり、結局最終診断は紹介病院からの精査結果待ちとなった。また、AIDS患者に合併するサイトメガロ感染でも粒状陰影が目立つ症例があるという意見も追加された。

症例② 59歳 男性 喘息患者。右上葉に広がる索状影、結節様陰影、浸潤影あり。CT所見からはEP:好酸球性肺炎として矛盾なく、BAL液中の好酸球も48%と著増していた。Churg-Strauss症候群やANCA関連血管炎との鑑別や、喘息に合併する胸部異常などの臨床的な問題に関して討議がなされた。

症例③ 47歳 男性 膵臓癌の治療中の患者で、胸水と肺尖部の陳旧性結核病巣のみであったが、治療経過で右肺に浸潤影出現したが、その時には胸水は自然に消退していた。膵臓癌の肺転移は肺胞上皮癌と類似し炎症所見のような画像を呈することがり、この浸潤影も臨床情報から膵癌の転移を疑ったが、喀痰検査でGaffky8号と大量の結核菌が証明された。もう一度CT画像を検討すると一部に空洞形成を認めたが、二ボーを伴い、TBを積極的に画像所見から疑うことは困難な症例と思われた。また、自然に消退する胸水として、中皮腫が良く知られるが結核でも時に無治療で消失する例もあることがあり、注意が必要と考えられた。また本例のように陳旧性結核病巣の存在する担癌患者の化学療法中では結核の再燃の危険性を常に考慮することを忘れてはいけないことがとくに強調された。

症例④ 57歳 男性 数年前より胸部異常陰影を検診で指摘されていたが、精査は受けていない。今回、陰影の増加あり、胸部CTと気管支鏡が行われPAP肺胞蛋白症と診断された。胸部CT画像は定型的なPAPの所見の一つである、胸膜下に広がる帯状のすりガラス陰影が見られた。

 

 

 

例⑤ 肩甲骨の外骨腫が肺野の結節影様にみられた症例。胸部CTが依頼され、3D処理にて外骨腫が肋骨と関節形成しているのがきれいに描出されていた。学生の健康診断の胸部間接撮影で時々見つけるが、肋骨の偽病変と異なり単純写真のみからでは診断は難しい。

症例⑥ 56歳 男性 以前にCPAで救急入院し救命された既往ある重喫煙者。呼吸音より中枢気道狭窄疑いCTが撮影され、声門部の強度の軟部影による狭窄を認めたが原因精査中で、前回入院時の挿管操作との関連なども考えられた。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.16に投稿された記事

帝京大学CB報告

今回は2症例の討議がなされた。

症例① 59歳 男性 胸部異常陰影

末梢肺野の高分化腺癌と巨大な縦隔リンパ節単発転移が疑われた症例である。胸部単純写真からの、病変の指摘は困難な症例である。右肺底区の結節影は正面では横隔膜下に隠れ、側面で肺側胸膜の限局的肥厚増様に見える。縦隔の大きな腫瘤も、正面像からは僅かに右肺門部の突出として認められる。以前の腹部CT画像の再処理にて右肺底区結節は増大し、周辺すりガラス影等より高分化型腺癌と思われるが、縦隔の大きな単発性腫瘤を単にリンパ節転移とすることは、臨床的にも画像的にも考えにくい。同部に対しTBACが施行されclassⅤ低分化非小細胞癌の診断がなされた。免染からはTTF-1(-), AE1/AE3(+)でリンパ腫系のマーカーもすべて陰性であった。肺底区腺癌からの転移は否定的であり、原発不明癌で、画像からはキャッスルマンリンパ腫や食道原発GISTの可能性など疑われたが、病理からは上皮系腫瘍が疑われ否定的であった。縦隔側胸膜から限局性中皮腫が発生すると有茎性で境界明瞭な腫瘤影を来たすことがあり、免染も肉腫型中皮腫のマーカーAE1/AE3陽性なことより、まれながら限局型肉腫型中皮腫の可能性を考えて病理学的に再検討する必要性があると考えられた。

症例② 50歳 男性 呼吸困難

左下葉の薄壁空洞の低分化腺癌で切除術を受け、術後経過観察中に再発し、イレッサ治療にて間質性肺臓炎を起こしステロイドパルス療法を受けている。この際に両側に大量の胸水貯留あり、薬剤性肺障害の画像と臨床は多彩であり、胸水を来たすことは知られているが、イレッサで両側対象性に大量となるとまれと思われた。その後、両肺に斑状影、浸潤影、粒状影と左胸水が出現して、広範な転移病巣が疑われている。39度の間欠熱のコントロールできず、薬剤が原因か、focusとなる感染巣の画像等に関して討議された。画像から広範囲浸潤性肺転移患者の発熱原因を突き止めることは、極めて困難である。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.15に投稿された記事

新宿チェストカンファランス報告

社会保険中央病院 2階会議室 19時

6症例の画像を中心とした討議がなされた。

症例①60歳代 右下肺野S8の2cm程度のSPNの単純と胸部CTが提示された。一部三角状の奇妙な形状をていしていたが、画像的には特異的な所見ない。PETでSUV3.2と軽度のuptake認めた。また右肺門リンパ節にも同様に軽度のuptakeあり、悪性腫瘍と肺門転移も否定できないことから診断も兼ね開胸切除された。術中の迅速標本からは肺梗塞の診断であったが、最終病理診断はアミロイドーマとのことであったが・・・、肺門のuptakeの評価もなく、病理も含め診断には問題が残ると考える症例であった。

症例② 60歳代 男性 高熱と乾性咳嗽 単純写真は気道病変、小粒状陰影散布と肺底区の線状影の混在が両下肺野、右中肺野に目立った。胸部CTでは著明な気管支肥厚像とびまん性の細気管支炎の所見から、典型的なDPBの画像に一致すると考えた。しかし急性の発症と現在本邦では新しいDPBの発症はまず無いと考えられていることから、マイコプラズマによる細気管支炎の可能性を疑い血清交代価測定するも、上昇なし。結局、新型インフルエンザにより細気管支粘膜にびまん性のダメージを受け、その後、インフルエンザ菌等の二次感染を気道に来たした結果の気道病変のダメージの画像ではないか・・?という結論に達した。抗生剤による反応も良好であった。会場の出席者からも同様の症例の経験があり、この新しい知見に対しての今後の臨床的な啓蒙活動に関しては重要と考えられた。

症例③ 70歳代 女性 胸部単純で右傍気管線のびまん性の肥厚を認め、胸部CTはびまん性の気管支壁の一部石灰化ともなう肥厚を認め、内腔狭窄はないが壁は不整であった。鑑別診断のポイントとして気管・主気管支部膜様部にも同様に壁肥厚あり、この点から多発軟骨炎の可能性は否定可能と思われた。画像的には典型的な石灰化ともなう気管気管支アミロイドーシスの所見であったが、鑑別疾患として、生理的なサーベル鞘気管、Wegener肉芽腫、Trachiobronchopathica osteochondroplastica、Ig-G4関連疾患、UC/クローン病等の消化器疾患関連の気道病変などがあげられた。

症例④ 30歳代 男性 肺野多発結節とびまん性粒状陰影それに左胸鎖関節部周囲膿瘍あり、上肺野の微細粒状陰影の収束を伴う散布像のHRCT画像からは、岡ⅡB型といわれる結核の細気管支病巣の典型的画像所見が強く示唆された。肺野多発結節影も胸壁病巣も結核の画像として全く矛盾なし。

症例⑤ 60歳代 男性 肺癌術後の薬剤性肺炎に対しステロイドが長期に使用されていた症例に、新たに現れた感染症状と胸部CTにおける多発空洞性病変。脳MRにおいても病変あり、喀痰にてノカルジアと診断された。病理解剖が行われ、脳、皮膚、肺野病変すべてノカルジア症と診断された免疫低下した患者ではノカルジア、クリプト含めた真菌症、結核が鑑別としてあげられた。脳へのノカルジアの進展頻度の高さも強調された。

症例6 40歳代 男性 前縦隔腫瘍の症例で、悪性リンパ腫との鑑別のため経皮生検がなされ、奇形腫と診断されたが切除標本にはParagangliomaやSeminomaの組織も一部散在しており、このような胚細胞腫を混合する奇形腫に対する経皮生検の限界と合併症の危険性に関して討議された。また、MRのdiffusion image等を加えて画像解析すれば、悪性リンパ腫を否定目的のために経皮生検を施行する意義はほとんど無いと思われる。報告者の経験から、奇形腫の針生検における皮膜穿通時の強い抵抗感は、奇形腫の診断に特徴的であるという点は興味深い。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.09に投稿された記事

大阪びまん肺疾患研究会報告

2011年2月5日(土曜)1時45分~ 薬業年金会館

5症例の興味深いびまん性肺疾患に関して討議がなされた。それぞれの症例のポイントを述べる。

症例① 78歳女性 RA:関節リュウマチの治療中 呼吸苦を主訴とし来院。胸部単純は、両側肺門側優位の陰影であり、CTでは肺門から連続する血管気管支周囲のGGOとコンソリデーションの広がりを認めた。この画像からは、以前によく使用されたリュウマチの治療薬:金製剤(シオゾール)による肺病変に一致する所見であった。(もちろんこの症例ではシオゾール使用歴はなく、アザルフィジンとハイペン内服中であるが・・)BAL液はLym40%と高く、この陰影は治療にたいし良好に反応している。画像のみからの鑑別としては、薬剤性肺炎、COP/EP/NSIPパターンであるが、PCP:ニューモシスチィス肺炎やLPD:リンパ増殖性疾患でもみられるという会場からの発言もあった。単なる薬剤性肺炎ではこの画像をあまりみることはなく、やはりRAの患者に多く、このような血管気管支周囲の気腔内線維化といわれる変化が起こりやすいと思われた。

症例② 30歳代 男性 乾性咳嗽 びまん性陰影と右下肺野の結節影を来たした興味深い症例である。日本医大武蔵小杉病院の一色先生が読影担当。骨シンチで肺野にuptakeあり、CTでも縦隔条件で観察すると、びまん性陰影の中に高濃度の点状陰影の散布あり。転移性石灰化症や肺骨化症が示唆された。肺骨化症には結節状nodural type:と樹枝状dendriform typeあり、前者は重症のMS:僧房弁疾患で見られたが、弁置換術により過去の疾患となっていると・・・。本例はdenndriformの肺骨化症であった。大変に興味深い点は境界明瞭な結節影が自然消退している点である。腫瘍とは考えられず肺内血腫であった可能性は高く、肺骨化を伴うことのあるEhlers-Danlos症候群が疑われると一色先生が解説した。その可能性に関し、過去に十数例のE-D症候群を集めて検討した経験のある埼玉循環器呼吸器病センター病理:河端先生より、病理学的にみても同疾患が示唆され遺伝子解析追加の必要性に関する発言があった。

症例③ 20歳代 男性 乾性咳嗽 胸膜下優位の線維化病変広がり、軽度ながら全肺野にびまん性間質影の広がりあり、画像的には非特異的であるが、家族性肺線維症、若年性肺線維症の可能性が示唆された。病変は進行性で治療に反応悪く、肺移植の適応を逃さないように今後検討する必要性が述べられた。

症例④ 私の画像司会担当症例 30歳代 男性 乾性咳嗽 易疲労感  肺野濃度のびまん性の上昇と上肺野胸膜下主体の気腫性嚢胞の広がりより、画像所見のみからもベリリウム肺等の重金属吸入による肺障害が示唆された。症例は職場でIn:インジュウム、Bi:ビスマス、Mn:マンガン等の工業材料を取り扱っている。(粉塵マスクは使用とのこと)  生検肺標本は大変に興味深く、大量のコレステロールクレストが肺間質や肺胞内にびっしりと沈着しており、In:インジュウム肺の病理所見の過去の報告例と同様の所見であった。血清のIn値も71ng/mlと著明に上昇していた。ちなみに正常値は3ng/ml以下とのこと。現在、In:インジュウムの大半はわが国で消費され、多くは液晶画面製造に使用されている。画像で類似するベリリウムは歯科領域で使用されていたが、現在わが国では厳しく規制対象とされているが、一部は安価な外国に受注しているような場合、その歯科材料内にベリリウム使用の可能性もある点に関しての発言があった。今後、忘れてはならない職業病のひとつと考えられる。

症例⑤ 60歳代 女性 発熱、喀痰 画像的にはあまり興味を持てないが臨床的にはいくつもの重要な点を示唆する症例である。画像は中葉舌区症候群とする気管支拡張症、それに散在する肺野空洞性結節の存在からは、ありふれた非結核性抗酸菌症MAC合併の中葉症候群と診断し・・!そして左上肺野に新しく出現した浸潤影は、単に細菌性肺炎の合併としてしまうが・・・? しかし、本例は抗酸菌に対する数度の検査では常に陰性、長期のマクロライド治療に反応せず増悪傾向を呈し、最終的に精査にてシェーグレン症候群と診断されら。左上肺の肺炎はノカルディアが証明されノカルディアに対する抗生剤の治療方針に関しても討議された。難治性中葉舌区症候群の原因疾患としてのシェーグレン症候群の可能性は重要と考えさせられた症例である。

投稿カテゴリ | コメントはありません11.02.05に投稿された記事

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