アーカイブ 5月, 2011
129回びまん肺疾患研究会報告
5月28日に大阪で行われたびまん肺疾患研究会に画像司会で参加してきたので提示された症例の画像を中心に簡単に報告解説する。
症例①両肺に多発性空洞性腫瘤を来たした75歳の男性。CT所見から下肺野優位の多発性の空洞性腫瘤で気腫性変化も目立っていた。Gaシンチで鼻腔と両側腎にuptakeもあり比較的典型的なWegener肉芽腫の症例で特に問題ないと考えた。初診時にアスペルの抗体・抗原(+)であった。Wegener肉芽腫としての治療により病変は著明に改善したが、80病日に左上肺野に浸潤影出現し、BAL液中にAspergilus nigerを証明し、抗真菌剤の治療となる。治療前のアスペルギルス抗体・抗原陽性の意義が強調された。
症例②びまん性すりガラス陰影を呈している長期鳥飼育歴有する67歳女性。この症例もCT画像からは鳥飼病による過敏性肺臓炎として矛盾は無いと考えた。特に下肺野の地図状のすりガラスと影と正常小葉のモザイクパターンに加え、正常小葉に見える部の小葉中心に点状陰影等は特徴的と思われた。NSIP,PCP等が鑑別にあげられるが臨床情報からは診断に全く矛盾はない。ANCAの上昇が見られたが、慢性・亜急性、または亜慢性過敏性肺臓炎抗原吸入での反応性ANCAの上昇はみられることがあるとのことでした。
症例③関節痛・発熱主訴の33歳、女性。CT所見は、上縦隔リンパ節腫大と胸膜下の斑状影や線状影からサルコイドが疑われた。両側下肢の間接にGaの取り込みあり。臨床的には典型的なレフグレン症候群と思われた。本邦ではまれなサルコイドの表現型であるが、北欧では頻度が高い。
症例④溶接工に見られたびまん性粒状影をていした72歳男性。単純で分かるびまん性陰影で一見サルコイドか粟粒結核を疑うがVATSでは溶接工肺の所見のみで粒状陰影の原因は分からなかった。下痢等の感染症状で初診しており、何らかのウイルス感染が粟粒影の原因であった可能性が指摘された。以前にさいたま赤十字のカンファでサリドマイド使用による粟粒影パターンの薬剤性肺炎の症例を思いださせる。その他、サルコであった可能性やリンパ増殖性疾患、hot tub lungの可能性などいろいろの意見が会場で聞かれた。
症例⑤びまん性肺疾患の急性増悪にて死亡した62歳男性。石綿肺に伴なう線維化に肺癌とサルコイドーシスが合併したと考えられた症例でした。
5月さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告
5月18日19時より呼吸器カンファランスが開催され、研修医が多く参加し熱心な討議がなされら。
症例①53歳 女性 胸痛あり。単純写真は左下葉の浸潤影。肺炎の診断にて抗生剤治療すると臨床的な改善は見られたが、肺野陰影は2週間で急速に増大する。CT所見は病変がLLLに限局し結節、すりガラス影、コンソリデーションと多彩であるが、他の肺葉に全く異常なく、CRP0.3、WBC9200のデータよりクリプトコックスが最も疑われた。胸痛の症状をどのように説明するか疑問点であるが、画像的には、一葉内の多彩な多発性陰影よりクリプトの診断にあまり問題ないと考えられた症例である。
症例②59歳男性 アルコール依存症 単純で左肺尖部に大きな二ボー形成と左上中肺野に空洞性浸潤影、反対側右肺野にも気道散布様浸潤あり、画像も臨床データからも重症の結核を示唆されたが、肺尖の二ボーは結核空洞では液体貯留はまれなことより、感染性ブラの可能性が高いと考えられた。誘発喀痰でガフキー3号が照明された。
症例③60歳男性 左鎖骨と肋骨に隠れた、いわゆるかくれんぼ肺癌の症例。研修医は難なく指摘した。
症例④74歳女性 背部痛 発熱 教育的症例で典型的な間質性肺水腫症例。
症例⑤60歳男性 38度超える発熱 咳嗽 右下葉の浸潤陰影あるも濃い目のすりガラス影と言った印象。CTでは右下葉のすりガラスではなくコンソリデーション+右胸水貯留あり。CK上昇と肝腎不全併発よりレジオネラ感染に伴なう横紋筋融解症を併発したものと考えられた。日本では温泉入浴での感染が有名であったが、最近では梅雨時に泥をはねたトラックのエアコンを使用した運転手に発症する症例が多いことが報告された。また、臨床的に見当識障害などの精神症状や下痢など消化管を訴える点が強調された。
症例⑥60歳男性 発熱 胸部単純の陰影が興味深く右縦隔影の突出であるが、上行大動脈蛇行との鑑別が問題となった。直接にえない右縦隔線と左の大動脈弓を点で結ぶ<佐藤式・・・・法>が有用と紹介された。側面像で胸骨背部の透亮像が消えている点から前縦隔腫瘍と考えられた。MR所見にて良好に造影され中心に壊死伴なう点、また右胸水も伴い、胸腺癌と診断した。生検組織ではSCCであった。
症例⑦58歳男性 呼吸苦 肝機能障害GOT、GPT6000台と著明に高値。単純では著明な心拡大と右中等度胸水貯留あり。心不全疑う肺野の間質性肺水腫や蝶型陰影は全くなし。画像からは心嚢液貯留を疑い、胸水と心嚢液の組み合わせからSLE等の膠原病など鑑別にあげたが、心嚢液は血性で細胞診クラスⅤ胸水は黄色透明。心嚢ドレーン後は胸水は自然消失し左下葉に結節影現れる。肺癌の心膜転移に伴なう心タンポナーゼにより右心不全を起こし、そのための二次的な鬱血肝と胸水貯留と考えられた。興味深い症例。
症例⑧ 55歳女性 腰痛 CTで定型的な肺野のLAMの画像と大きな両側腎の血管筋脂肪腫あり。腰痛の原因として腎腫瘍のmicro-aneurysmのruptureと考えられた。
症例⑨20歳男性 CT所見で左S6とS1+2にまたがる葉間を貫くような浸潤影とすりガラス影あり。CEP:慢性好酸球性肺炎の特徴的画像と考えるが、末梢血の好酸球数増多は、正常範囲上限にとどまっていた。気管支鏡にてCEPと診断された。
セミナー・イベント
- 2013.02.20
- 2月さいたま赤十字病院呼吸器カンファランスのお知らせ
- 2013.02.12
- 今月の品川カンファランス報告
- 2013.01.31
- 中皮腫の耳学問
- 2013.01.23
- 1月の神田塾のお知らせ
- 2013.01.16
- 1月さいたま赤十字病院呼吸器カンファ症例報告
佐藤先生ブログ
- 2013.01.05
- 今年も宜しくお願いいたします。
ページコンテンツ
過去のアーカイブ
- 2013年3月 (1)つの記事
- 2013年2月 (2)つの記事
- 2013年1月 (6)つの記事
- 2012年12月 (3)つの記事
- 2012年11月 (2)つの記事
- 2012年7月 (5)つの記事
- 2012年2月 (3)つの記事
- 2012年1月 (4)つの記事
- 2011年11月 (3)つの記事
- 2011年10月 (7)つの記事
- 2011年9月 (8)つの記事
- 2011年8月 (3)つの記事
- 2011年7月 (3)つの記事
- 2011年6月 (5)つの記事
- 2011年5月 (2)つの記事
- 2011年4月 (2)つの記事
- 2011年3月 (2)つの記事
- 2011年2月 (4)つの記事
- 2011年1月 (7)つの記事
- 2010年12月 (3)つの記事
- 2010年9月 (2)つの記事
- 2010年5月 (1)つの記事
- 2010年4月 (1)つの記事
- 2010年3月 (1)つの記事
- 2010年2月 (1)つの記事
- 2010年1月 (5)つの記事
- 0年 (2)つの記事
最近投稿した記事
- 13.03.27
- 第12回神田塾 耳学問
- 13.02.20
- 2月さいたま赤十字病院呼吸器カンファランスのお知らせ
- 13.02.12
- 今月の品川カンファランス報告
- 13.01.31
- 中皮腫の耳学問
- 13.01.23
- 1月の神田塾のお知らせ