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第12回神田塾 耳学問
第12回MS.CHEST神田塾 3/26 19:00~
皆様の協力のおかげで神田塾を開始して1年を迎えることができて大変に感謝しております。
今回、聖路加の負門先生の提示した症例は大変に勉強になりました。胸水伴う肺野の多発結節影ですが、feeding vessel sign(結節に連続する肺動脈)あり、画像からは典型的な敗血症性肺塞栓の所見ですが・・・抗生剤に全く反応せず。TBLBと鼻粘膜生検でWegener肉芽腫と病理診断された1例です。ANCAは陰性で、単純副鼻腔撮影も正常、胸部CTでは結節以外にも、両側性に中等度胸水貯留あり。結節に空洞形成はなく周辺はすりガラスで囲まれた不整な辺縁像。今回、私に勉強になったのは①Wegenerの約10%に胸水貯留を認めること、②正常に見える鼻粘膜の生検でもWegenerの病理診断されることもあり是非試みる価値ある手技とのこと、の2点です。
今回、1年で卒業する塾生も若干名でましたが、新しい塾生も迎えることができそうです。それでは、来月からのMS.CHEST神田塾もよろしくお願いいたします。
2月さいたま赤十字病院呼吸器カンファランスのお知らせ
2月20日(水曜日)19:00~ 開催予定です。
今月の品川カンファランス報告
2月12日火曜日 19:00~ MS.CHEST事務所にて
栗原先生より興味深い症例が提示された。両肺に広範囲に広がるびまん性陰影で、胸部CTは典型的な急性好酸球性肺炎の画像に一致する斑状GGAと強い小葉間隔壁の肥厚像が広がる。しかし中高年の男性で初めての喫煙とは考えにくい。もちろんそのような既往もない。何と殺虫剤バルサンの煙の吸入により発症した呼吸困難とのことでした。好酸球数の増加は確認されていない・・。防水剤や金属蒸気そしてテフロン加熱によるポリマーフュームなどなどいろいろの吸入による肺傷害の画像をみてきたが・・・・。
中皮腫の耳学問
本日の環境庁石綿会議の約50の中皮腫症例は、比較的典型的な画像例が多く、早めに終了することができた。その中で大変に画像所見が興味深かった1症例を報告したい。不規則な斑状の石灰化が、層状に瓦礫の石を積むように肺尖から肺底区まで不整に進展した肉腫型中皮腫の1例である。病理学的には石灰化ではなく骨化・骨形成とのことです。稀ながら骨形成性の中皮腫が知られており、今までにも数例の経験はあったが・・・今回のような広範囲にびまん性に広がる骨形成性の中皮腫を見たのは初めてである。病理学的には骨肉腫との鑑別がしばしば困難で、画像所見で肋骨等の骨組織と非連続であることを確認することも重要になる。subtypeは全て肉腫型で、上皮型や二相型では見られない。この興味深い症例のCT写真をお見せすることが出来なくて残念・・・。
1月の神田塾のお知らせ
今年初めての神田塾は、1月23日(第三週の火曜日)19:00~ 神田e-site health会議室で開催します。今年もどうぞ宜しくご協力のほどお願い申し上げます。
1月さいたま赤十字病院呼吸器カンファ症例報告
1月16日水曜日 さいたま赤十字病院カンファランス室 19:00~
5症例が提示された。簡単に報告する。
症例① 25歳 男性 検診発見症例 右肺尖に3cm程度の腫瘤影とブラ形成あり。CTにて肺尖部ブラと腫瘤内に空洞形成あり。気道撒布影は見られないが散在する小斑状影はある。気管支鏡で抗酸菌は証明されたが、結核とMACはPCRで陰性。まだ抗酸菌のタイプは検査中で、同定されていない。
症例② 60歳代 男性 検診発見の右肺の腺癌。HRCT所見のすりガラスの分布や病変辺縁部の小結節、葉間の肥厚部の形態等がやや非定型的と思われた。
症例③ 70歳代 女性 MAC症で経過観察中に突然の呼吸苦出現する。胸部写真では胸膜癒着と右肺門やや目立つ程度。CTでは著明な右心系・主肺動脈の拡張あり。単純CTでも高吸収域の肺動脈内血栓を指摘可能な症例であった。突然の呼吸苦では画像に著変ない時はまずPTEを疑うことが強調された。下肢静脈内にも血栓が証明された。
症例④50歳代 男性 検診発見 左下肺野に索状影の集簇あり。AVM等による異常血管影か気管支内粘液栓を疑う所見である。CTでは両肺3箇所に多発する粘液栓g認められ、粘液栓の一部は著明な高吸収を呈しており、定型的なABPAの画像と診断可能である。末梢血の好酸球数12%、BAL液中も好酸球が著増しており、ABPAとし矛盾しないが、糸状菌含めアスペル等の真菌は認められていない。また本症にみられる粘液栓の高吸収は真菌のアミノ酸代謝により生じるマンガン・鉄等によることが述べられた。これはMRIのT2WIで副鼻腔のアスペル病変が無信号化する原因と同一と思われる。検診で発見されるABPAはめずらしいが、問診するとステロイド剤の吸入療法歴はある。
症例⑤ 60歳代 男性 冠状動脈バイパス術後の退院前に右胸水やや増量し穿刺排液後に進行する右肺Consolidationと両側胸水の増量あり。肺炎等の治療に反応なくステロイドパルス療法施行し著明な改善を認めた症例。原因不明の急性呼吸不全。
1月帝京大学呼吸器疾患Cancer board報告
1月9日水曜日 19:00~ 病理検鏡室にて2症例の検討が行われた。ともに胸部単純写真が興味深い症例であった。
症例① 60歳代 女性 胸部単純では頸軟部に左右差あり、右胸鎖乳突筋影の消失と右肺尖部の淡い透過性の低下域から前頚部の軟部腫瘍の存在を疑った。しかしCTでは、胸壁背側の肋間に存在する内部が低吸収の腫瘍が描出され、MRの所見は造影にて多房性の壁が比較的厚く強く造影されていた。切除され軟部の粘液腫Myxomaと診断されたが、脱灰処理を行っているために、詳細な病理診断は難しいという点も述べられた。石灰化や骨化がCTで認められない組織であることが術前に分かっていれば、切除標本の脱灰処理は省いてもよいのではないかと思われる。その後、頸部腫瘤を自覚するようになり生検にてfolicular lymphomaと診断された。その際の胸部CTで第11胸椎椎体前面に巻きつくように存在する軟部影あり。PETでは頸部とこの椎体部のみに集積が認められた。これがlymphomaかmyxomaの転移かの判断が問題となったが、MR,PETの画像所見からもmyxomaの可能性は否定的と考えられた。また濾胞性リンパ腫では、椎体部病変の生検よりも骨髄生検によるStagingを優先することの重要性が強調された。
症例② 40歳代 男性 30歳代で右下葉の腺癌StageⅠAの切除歴あり。その際の胸部写真では右肺底区に8mm大の一見すると硬化性結節か肋骨の骨島のように判断してしまう様な境界明瞭な結節影であるが、CPangleに淡い浸潤影を伴っている。切除後の評価では、EGFR陰性、ALK陽性の腺癌で、CPangleに存在した淡い陰影は腫瘍による肺動脈閉塞に伴う梗塞病巣と判断された。術後4年目に、縦隔リンパ節転移著明にてザーコリン(クリゾチニブ)投与開始する。経過は良好であったが呼吸苦出現し造影CTにて肺動脈血栓塞栓症と診断された。下肢静脈内にも血栓あり、ザーコリンの副作用の可能性や今後の血栓の治療の継続と抗がん剤の選択等に付き議論された。ALK陽性肺癌の抗がん剤として、アリムタに有効性があるとする報告が紹介された。
1月の品川カンファランスの症例
新年あけましておめでとうございます。今年の第一回目の品川カンファランスは早めに切り上げて8時頃には自宅居間において新年会を開催いたしました。大久保裕雄先生が今回のカンファで提示された症例の画像を紹介いたします。たしか・・・無症状でしたが、このCRのどこが異常所見か指摘できますか?
今年も宜しくお願いいたします。
大学を退職し㈱MS.CHESTなる遠隔読影の会社を立ち上げてから・・・早いもので今年で5年目を向かえます。遠隔読影の仕事もおかげさまで、少しづつですが順調に増えてきて、現在は6名の先生方にお手伝いしていだだいております。
また毎月1回の定期的に若手先生方ともに勉強する機会も、品川カンファ、神田塾、さいたま赤十字呼吸器カンファ、帝京大学キャンサーボードに加え、4月からは東邦大学大橋病院呼吸器カンファにも参加させていただく予定です。その他にも聖路加病院でのChest imaging folumや大阪びまん肺研究会も参加させていただいております。そして、これらの会で知りえた知識を出来るだけこのHPで報告させていただきたいと考えておりますので、皆様のご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。
12月さいたま赤十字呼吸器カンファ症例レポート
今月は9症例の画像を中心とした症例討議が行われた。簡単に症例の解説を試みる。
症例① 20歳 女性 高熱 何種類かの抗生剤(フロモッコス、クラビットなど)が2週ほど投与されていたが反応せず、胸部写真撮影し異常影で紹介。胸部写真は右上葉の小葉間裂できれいに境されたConsolidationとGGOで典型的な肺炎像。CTも同様の所見で気道変化は目立たない。血清学的にマイコプラズマ肺炎と診断されたが、抗生剤に対して耐性を有するマイコプラズマ肺炎が増えているので注意!!画像はこれでマイコプラズマか?!というほどに気道・細気管支病変がなく肺胞性肺炎のパターンで画像からの細菌性肺炎との鑑別は困難であった。このようなair space consolidationを来たすマイコプラズマ肺炎は成人には稀で、若年者層ではしばしば見られる。細胞性免疫の関与によりCT画像が異なってくると考えられている。
症例②60歳代 男性 外傷性骨折で入院時の胸部写真で異常指摘。画像は典型的は左上葉無気肺像であるが、無症状で偶然に発見が珍しい、左上葉気管支発生の扁平上皮癌。N0でありsleeve resectionの可能性に関して検討された。
症例③ 60歳代 男性 健診で見つかった右肺尖の浸潤性陰影。単純写真からも活動性TBと思われるが、他院で抗生剤治療が4週間施されている。改善ないため紹介来院し胸部CT施行。右S1,2に数個の結節と周囲に散在する細気管支粒状影がびっしりあり。画像からは鑑別必要としないほど典型的な結核症・抗酸菌感染と診断可能と思われたが、気管支鏡検査で結核菌を証明している。
症例④ 60歳代 女性 慢性間質性肺炎で少量持続副腎皮質ホルモン剤服薬中の患者。毎月胸部写真を撮影している。右下肺野内側に結節影現れる。「見直し陽性例」肺癌症例、NSEやや高値で未分化癌と思われる。胸部CTでは気腫性線維化で喫煙者肺に一致する。このタイプの線維化は肺癌の合併が多いので注意を要するが・・・毎月1回の撮影は頻度が多すぎて却って観察注意がおろそかになる可能性が指摘された。半年ほど前のCTでは気腫性嚢胞壁に数ミリの点状影ありこれが大きくなったものと推察された。
症例⑤ 60歳代 女性 健診発見の胸部異常影。 典型的な気管支拡張伴う中葉無気肺の中葉症候群に抗酸菌症の合併したもの。胸部CTでは中葉外にも細気管支病変・小葉中心性肉芽腫や空洞も広がっていたが無症状であった症例。
症例⑥ 70歳代 女性 健診発見無症状 心拡大と左肺門の軽度拡張傾向程度で有意な所見は不明であるが、下行大動脈の肺門レベルで走行が追えない部分あり。胸部CTでは上中縦隔に累々とリンパ節腫大あり。左下葉S6の部分的な無気肺も見られた。US観察下の気管支鏡生検でリンパ節と無気肺部の両方からサルコイドーシスの肉芽腫として矛盾しない組織が得られた。サルコのリンパ節腫大では無気肺を来たすことは稀。サルコのリンパ節は軟らかいために、気管支閉塞は起りにくいといわれている。この症例の無気肺がサルコによるものとは、たとえ組織でサルコイド肉芽腫が証明されても、考えにくいと思われる。
症例⑦ 70歳代 男性 ワーファリン服薬中の患者。喀血を主訴に来院。右下肺野に境界明瞭な空洞伴う腫瘤影あり。内部にはニボーを形成している。経過で内部は均一な充実性に見える腫瘤に変化。胸部CTでは小葉間裂に存在して臨牀情報および経過と画像から葉間血腫と思われた。ほぼ同一の画像所見を呈した自験例あり、そちらは喀血はないが、新たに出現した結節影のため、腫瘍を疑い切除し小葉間裂に存在する血腫と診断した。
症例⑧ 70歳代 男性 大量持続性喀血 胸部単純は左上肺野外側にGGOの広がりあり。他にも淡い斑状影が疑われる。胸部CTでは全肺野に散在するGGOと一部中心に索状影や不整小結節を伴っている。画像からは血管肉腫の転移か血管炎を疑う、診察により右頸部に腫瘤あり、生検にて易出血性であったが何らかの悪性軟部腫瘍:肉腫として矛盾しない組織が得られた。通常は頭皮の血管肉腫からの転移が多い。皮膚の血管肉腫転移巣の画像は肺野結節と嚢胞形成に周囲を取り巻くすりガラス影の広ろがりが特徴的で、CT画像から診断可能な疾患である。本症例は喀血のコントロール困難で死亡している。剖検がなされ最終病理診断を待っている。
症例⑨ 60歳代 女性 結核の治療歴あり。胸部単純は典型的な上葉無気肺の画像であるが、慢性に経過し陳旧性の瘢痕性無気肺とされている。発熱・WBC増加等の炎症症状出現し、胸部写真では右上葉無気肺部の増大あり。気管支鏡検査で上葉気管支より膿性痰が多量流出するのが観察され、細菌感染を来たしたものと考え、陳旧性無気肺に合併した肺膿瘍と診断された。
12月品川カンファミニレポート
昨日は年末の忙しいなかお集まりいただき感謝しております。栗原先生からHIV治療に関する興味深い症例提示がありました。呼吸器診断の画像と臨牀情報の組み合わせの重要性を再認識した症例提示でした。AIDS患者に合併したPC肺炎症例ですが、ほぼ全肺野のGGOの広がりで、CT所見はそれに加えてびまん性に広がる強度の牽引性気管支拡張と下肺野肺底区の索状の板状無気肺所見。HAART療法後に出現した、感染兆候と両側上肺野の浸潤影から・・・何を考えるか??
⇒免疫再構築症候群でした。 IRS と Kapsosi IRS←興味ある方はこちらをクリックしてくださいKaposiの論文は下野太郎先生から送っていただきました。。
中皮腫診断の耳学問
石綿被害救済に参加していると勉強になることが多い・・・。
前回の会議では腎臓癌の胸膜転移と中皮腫の鑑別に関する症例の話題が検討されました。私は腎臓癌が肺に転移することなしに胸膜に多発転移する症例など・・・全く考えもしなかったが、この両者の鑑別は病理医にとって、鑑別に大変悩ましいことで知られているそうです。まれな組織型のタイプとしてclear cell型の中皮腫は良く知られた事実だそうで、会議に同席した放射線科の先生(旭川医大の高橋康二先生)も、この両者の鑑別は画像診断医にとっても難しいと同意されておられ、知らないのは私だけで・・・少し恥ずかしい思いをいたしました。
京都府医師会 肺がん検診研修会
11月29日午後2:30~ 京都府医師会館にて
演題名 「肺癌検診読影のポイント」
11月さいたま赤十字呼吸器カンファ症例
長い間、HP更新せず、カンファランスの症例報告をサボっておりました。何人かの先生からお叱りをいただき恐縮しております。今後は出来るだけサボらないように続けてゆく所存ですのでお許しください。先月のさいたま赤十字呼吸器の症例を解説いたします。
症例① 70歳代の左大量胸水貯留の医師。体調不良で疲れ易いと・・・。左上肺野にも軽い浸潤影り、胸部CTで観察すると抗酸菌特有の気道撒布病巣あり、画像からも結核と診断可能である。
症例② 50歳代女性 胸部CRでは左第一肋骨端の肋軟骨化骨部に重なる「かくれんぼ肺癌」症例。丁度、肋軟骨部の石灰化に腫瘍が重なると左右差のみで指摘可能であるが、時に生理的にもこの部の石灰化は左右差きたすこともあり、なかなか判断は困難なこともある。この症例も2年ほど前から見過ごされているが、このような症例は安易に「見落とし」とは表現せずに「見直し陽性」症例と表現するべきと思われる。
症例③ GISTで化学療法加療中の70歳代女性。右肺尖部の大きな不整な壁を有する空洞症例。1年前の胸部CRでは薄い壁のブラのみであることから、慢性壊死性アスペルギルス症の画像診断が可能な症例。
症例④ 24歳女性 胸痛と強度の咳あり。特発性の縦隔気腫の典型例。頸部まで気腫広がり触診で皮下気腫が診断可能な症例。
症例⑤ 30歳代男性 肺内に転移性腫瘍と思われる多発結節がびまん性に散在し、左肺門にも大きな腫瘤影を認める。縦隔腫瘍の肺転移から悪性胚細胞性腫瘍と考えられた。精上皮腫、非精上皮腫性胚細胞腫ともに比較的若年の男子に好発する。卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorでは血清のAFP高値が94%で認め、β-hCG高値であれば絨毛癌を疑う。胎児性癌では両者の上昇を見ることが多い。提示された症例は生検で、卵黄嚢腫瘍と診断された。
胚細胞腫の覚え方「SECTE」seminoma,embryonal cell carcinoma,choriocarcinoma,teratoma,endoderumal sinus tumor(york sac tumor)
症例⑥ 75歳女性 2.3週前からの呼吸苦出現。両肺に索状の浸潤影出現する。胸部CTはびまん性のGGOやConsolidationの非特異的な陰影。薬剤性肺炎を否定するため問診するとオウゴンを含有する漢方薬の服薬開始との関連が疑われ、薬剤中止のみで陰影は消失した。慢性肝炎治療等の漢方薬による薬剤性肺炎も最近話題になることが多く、漢方だから副作用が無いなどと考えないようにしたい。また、次々と開発され発売される新薬を含め各々の薬品の副作用に関しての充分な知識は極め重要である。
症例⑦ 35歳男性 発熱あり。胸部CRでは右下肺野の濃厚なConsolidationあり、また左心陰影に重なる陰影も多少伴っている。胸部CRからは下葉の肺炎を疑うが、心拡大と胸水貯留も認める。CTではConsolidationは非区域性で末梢のsparingあり、この陰影の分布と両側胸水貯留から肺水腫による陰影と考えられた。精査により拡張型心筋症:DCMによる肺水腫と診断された。発熱と単純写真上のConsolidationの右下葉分布から、肺炎との鑑別に苦慮した症例であるが、CT所見は比較的定型的な肺水腫の画像と考えた。
症例⑧69歳男性。Adult Still病で加療中に咳嗽出現する。胸部CRでは散在する斑状影程度であまりはっきりした陰影ではないが胸部CTは多発する空洞、限局するGGO、きれいなreversed halo signを認める。血管肉腫の転移や侵襲性アスペルギルスを疑う画像である。しかしreversed halo signを呈する日和見感染としては、アスペルギルスよりもムコールによる肺感染でより多くみられると最近は報告されていることがカンファランスで強調された。また気管支鏡直視下でも気管支粘膜に限局的潰瘍病変が見られた。最終診断は気管支鏡生検にてアスペルギルスが証明された。気管支鏡観察で気道粘膜病変を観察できたアスペルの報告は見たことあるが、ムコールではこのような中心気道に粘膜潰瘍を伴うことはあまりなさそうですが文献的にはいかがでしょうか?
第19回呼吸器疾患夏期セミナー
日時:平成24年7月18日(水)19:00~
場所:名鉄トヤマホテル 4F「瑞雲の間」
住所:富山市桜橋通り2-28
電話:076-442-4411
【特別講演】
座長 富山大学附属病院 第一内科 診療教授 林 龍二 先生
『胸部写真読影の基本 -見落としを少なくするためにー』
講師 東邦大学 放射線科 客員教授 佐藤雅史
さいたま赤十字呼吸器カンファ報告
7月11日のさいたま赤十字病院で行われたカンファランスにおける興味深い症例の解説
症例①81歳 女性 右肺尖部にS1、S2の無気肺と左上葉の結節影と硬化性陰影あり、陳旧性結核と診断されていたが、呼吸器症状出現し両下肺野に広範囲に広がる気道病巣と空洞形成あり、喀痰からGaffky9号。これからの日本では高齢者の再燃結核が大きな臨床問題となると考えられた。この患者は、右上葉の気管支結核まで発症しておりながら、抗結核薬の服用歴等無しにいったんは治癒状態であった。
症例②62歳 女性 画像は右肺門部腫瘤とびまん性多発肺結節より肺癌とその肺内転移で問題なし。しかしnonsmall cell caの約5%を占めるALK陽性肺癌とわかり、分子標的薬(クリゾチニブ)を使用すると僅か1週間後にほとんど腫瘍は消失となる!! 今後ますますこの分野での治療薬の開発が進むと思われるが、あまりの効果に驚かされた。
症例③25歳 女性 発熱と乾性咳 浸潤影は完全に左心陰影にかくれんぼしており下行大動脈のシルエットアウトに注目しないと見落としてしまう。CTはマイコプラズマ肺炎に一致する所見であった。気管支・細気管支病変と小葉性のすりガラス陰影およびair bronchogram伴なう浸潤影が左下葉に限局してみられた。
症例④53歳 男性 DMあり。単純写真にて頚部に皮下気腫と上縦隔影の拡大あり。この1枚の写真から上咽頭膿瘍の縦隔内進展による化膿性縦隔炎の診断が可能である。CTは広範な気腫と液体貯留を縦隔内に認めたが単純を見直してみても縦隔は拡大以外には異常指摘は困難であった。
症例⑤54歳 DM患者で腎透析中 びまん性肺野陰影出現するも呼吸器症状は軽度である。CT画像は比較的典型的なPC肺炎像と思われた。β・Dグルカンも600以上と著増している。
症例⑥右中肺野の限局的胸膜肥厚像あり、肋骨骨折痕と隣接しており外傷性変化としてしまいがちであるが、CTではやや離れている。経過で胸水出現し生検し中皮腫と診断された。対側にも小型肺結節ありこちらは扁平上皮癌と診断されている。著増している中皮腫の診断は、病理組織が得られても困難なこともあるが、原因不明の胸水や限局的な胸膜肥厚・腫瘤見た際は常に中皮腫の存在を念頭に診断に当たる必要がある。
症例⑦ 81歳 女性 高熱 一見正常の胸部写真に見えるが両側肺尖部のびまん性粟粒影の存在が疑われた。CTでは上肺野優位の極めて微細な粒状影の分布が証明されて粟粒結核と診断可能である。しかし単純写真で見えた粒状影はそれぞれの粒としては大きすぎるため、いわゆるsummation効果と呼ばれる粒の重なりによりより大きな粒状影に見えたものとかんがえた。ここでも高齢者の肺結核の再燃の臨床的な重要性が強調された。ちなみに肺野に空洞等の肺結核病巣は認められないが喀痰中に結核菌が証明された。
症例⑧ 80歳 女性 大きなvanishing tumorの症例であるが小葉間裂内の液体貯留とも思えないほど中葉内結節に見えたが、利尿剤で消失している。軸位断のみでは困難で、冠状断や矢状断の追加なしでの評価は困難とかんがえられた。
症例⑨ 5年前に十二指腸乳頭部癌の術歴あり。無症状ながら・・上肺野優位のびまん性結節と浸潤影あり。経過観察中に空洞形成出現し肺結核とGaffky5号と診断されたが、見直してもTB疑うことは難しいと思われたが・・気道散布病巣はあり・・その否定は画像からは出来ず、結核症の画像診断の難しさを再確認した症例。
7月のさいたま赤十字病院呼吸器カンファランス
今月は第三水曜日から第二水曜日11日19:00~に変更になっております。宜しく御願いいたします。
総合健診学会人間ドック専門医講習会
7月7日 午後14時25分~
日本大学駿河台病院3F会議室
胸部画像診断 「胸部単純写真の見落としを少なくする読影法」
7月帝京大学CG
症例① 右上葉の小型腺癌の症例。画像所見は胸膜付近のスピクラ伴なう腺癌として矛盾しない症例である。下葉にも陳旧性の肉芽腫性変化あり。問題点は上葉内の数ミリの粒状影をひとつ認め、これが病理的に肺内転移pmの可能性が疑われた。原発巣も組織学的にSCCと診断されている。病理側から腫瘍壊死のgoast cellとする所見無くpm(+)とはとてもいえない。原発も一部SCC様組織あるも全体では腺癌の組織型でよいと述べられた。
症例②両側肺尖部に、画像からは典型的な真菌球形成型のアスペルギローマの症例であるが、右肺尖のアスベルギローマ病変に接して頭側に腫瘤影もあり、CTガイド下生検で小細胞癌と診断された。病理側より小細胞とするには少し問題あり、以前にはintermediate cell typeと分類されていたものに近くLC-NECはじめとした未分化癌の判断は病理所見からの統一的な診断見解を得ることの困難さが述べられている。腫瘍マーカーもPro-GRP,CEAともに上昇が見られた。また小細胞癌に対する化学療法と平行して予防的な抗真菌薬の投与がなされていいるが、その是非と今後のアスペルの治療に関しても討論がなされた。
症例③多彩な画像所見の症例であるが、基本はランダム分布から肺転移と考えられる両肺のびまん性に散布する粒状影と右下葉の胸膜下に帯状に広がる容積減少伴なうコンソリデーションよりなる。そのほかにも細気管支周囲の線維化、間質性肺炎・肺線維症、すりガラス陰影等も経過で出現している。問題点は洗浄液からクリプトが見つかり、右下葉S8のTBLBからmucinous carcinomaの可能性も否定出来ないとのコメントあり。びまん性粒状影が転移なのかクリプトの散布なのか・・・・?また今後VATSを行う際の生検部位に関しても、S8のコンソリデーション部ではなく散布する粒状部の生検の方が悪性腫瘍の診断には役立つという・・・!! 病理からのアドバイスあり。
2月帝京大学キャンサーボード報告
3症例が提示され討議された。
症例① 思春期に縦隔腫瘍が指摘されていた40代の男性。陰茎腫大、血尿あり、骨盤内血栓症疑いヘパリン・ウロキナーゼ開始する。WBC20.000CRP32と高値。徐々に軽快してきたが、突然の胸痛あり左胸水も出現し、胸部外科に紹介となる。画像は前縦隔に石灰化伴なう比較的厚い壁の嚢胞性腫瘍である。多房性で壁在結節もある定型的な成熟型奇形腫として矛盾しない。そして胸水貯留と激しい胸痛発作から、腫瘍穿破それも強い胸痛より膵液含む内容物の穿破が強く疑われた。前縦隔腫瘍摘出術が施行され、成熟型奇形腫と診断されたが、腫瘍穿破は明らかでなく、胸水は1500mlあり。病理標本からは腫瘍壁に著明な好中球浸潤あり急性炎症所見も認めるが、細菌感染等を疑う変化はなし。壁在結節部は皮膚や消化管の組織を認めたが膵臓とする組織像はなし。奇形腫摘出により炎症所見はデータ上も改善し骨盤内の病変も著明に軽快した。臨床的には縦隔腫瘍が元となり、何らかの原因で骨盤内にも血栓形成様の血管障害を来たしたものと考えられたが両者の関連を上手く説明できる解説は・・・難しい。
症例②左上肺野の巨大ブラに合併した肺癌の症例。10年前に右上葉大細胞肺癌と小脳転移で放射線治療を受けた既往あり。pT3N0M1 今回は低分化腺癌でCB討議点は肺内に多発する10個程度の小結節がメタか肉芽腫か?これによりstage分類が異なってくると、治療計画がj変更される可能性あり。全身化学療法後に原発巣は44%縮小し肺内の多発結節の一部の円形で形態から転移の可能性の高いものは明らかに、腫瘍径の縮小傾向認め、治療結果から多発結節の一部は肉芽腫、一部は転移という結論で了解された。N2リンパ節のPET集積とCTサイズの短径1cmに関しては今後の検討事項とされた。
症例③70代のIgG4関連疾患としての後腹膜線維症の症例に合併し、胸膜直下の微細結節から限局的胸膜肥厚ともなった肺癌へ進行した症例。後腹膜線維症は骨盤内に限局し尿管閉塞を来たしステント挿入されている。ステロイド治療で著明に改善しているが、胸膜下小結節が大量の胸水貯留と縦隔リンパ節腫大へと急速に増悪し縦隔リンパ節の針生検で壊死傾向の著明な腺癌と診断される。大変に奇妙な腫瘍進展を呈した症例で、いま話題のIgG4関連疾患は大変に多彩な臨床像を来たすことが知られている。悪性腫瘍と間違えるような、しかしステロイド剤の使用で消失する良性の腫瘍性病変が多く知られているが、実際には悪性腫瘍自体の合併も多いのではないかという意見もでた。
MS.CHEST神田塾に関するお知らせ
先日、㈱イーサイトヘルスケアーの松尾義朋社長より、私の蓄積した教育用フィルムを主に用いて開催している品川カンファランスの内容をデジタル化し、広く一般に公開しないかという提案がございました。わたしにとっては願ってもないお申し出でもあり、4月の開塾を目指して準備の進行中であります。JR神田駅から徒歩5分のイーサイトヘルスケアー社の事務所にて毎月開催し、teaching file filmをデジタル化した画像を用いて胸部画像教育のカンファを開いて行く予定にしております。提示した症例を、1例ごとに登録されたコアメンバー(基本的に卒後10年以内の若手放射線科医)に読影していただきその内容を簡単にまとめたものを画像に添付してデジタル図書として販売して行く予定としております。会場は20人程が入れると思います。現在のところ所見等をまとめる役割を持つコアメンバーの10名は何とか確保できましたが、塾への参加ご希望の方や興味がおありの方がございましたらご連絡下さい。なお塾の胸部画像講師として私の他にも、聖マ医大栗原先生、栗橋病院大久保先生、聖路加国際病院負門先生にも画像解析のご意見や症例提示も御願いしながら運営して行こうと考えております。
石綿関連の耳学問
①極めてまれな中皮腫の組織型としてsmall cell mesothelioma というものがある。肺癌の小細胞癌と病理でも鑑別が問題となる可能性あり。
②精索より発生する中皮腫は比較的まれであるがそのほとんどの組織型は上皮型であり、その他の組織型の場合は他の腫瘍の可能性も考慮する必要あり。
③中皮腫が胸膜から肺内に進展することはまれにあり、その際、肺胞上皮癌に類似した進展形式を呈するため病理学的に鑑別が難しいこともある。
④well differentiated papillary mesothelioma を悪性腫瘍として石綿暴露の救済疾患として取り扱うべきか否か、また石綿暴露と関連するか否かは、いまだ問題点である。
⑤MFH: malignant fibrous histiocytoma は現在は undifferentiated sarcomaの病名に変わりつつある。
第8回Chest imaging forum報告
日時 2012年1月25日(水)19:00~21:00
場所 聖路加国際病院2F トイスラー記念ホール
横浜旭中央病院の佐藤秀一先生の胸膜の正常変異に関する講演のあと8例の症例が提示された。
症例①気胸にて発症した中皮腫の症例。胸膜腫瘍はなく胸水のみ、生検にて陰性のため経過観察して明らかなびまん性胸膜腫瘤に進展した例。プラークの存在から中皮腫を画像診断医は指摘したが・・かなりショボイ感じのプラークであり、中皮腫の多くはプラークを伴わないことも知っておきたい。気胸で発症する中皮腫症例もあるが圧倒的に胸水貯留例が多い。
症例②肺尖部の壁側胸膜の腫瘤と気胸の症例。いわゆる単発性限局型中皮腫の症例であると思われるが、胸腔鏡下切除で診断されたが経過にて胸膜散布され、最終的には汎胸膜切除術が他院にて施行される。多くの中皮腫は浸潤性の腫瘍発育示すが、時に限局したSFT様の胸膜腫瘤を呈することもある。気胸合併する転移性腫瘍として、若年者骨肉腫以外にも乳癌や頭皮の血管肉腫等が知られている。
症例③他院にて月経随伴性気胸と診断されて、外科的に証明されているにもかかわらず気胸を繰り返し、左側気胸も起している症例。胸部CTではLAMに一致する薄壁空洞の多発と腹部CTの後腹膜腔のリンパ管腫様所見あり。大腸粘膜も肥厚し、下利便は白色で乳び便と考えられた。月経随伴性気胸とLAMの合併と考えられた症例。
症例④重度の左気胸とごく僅かな右気胸もある。胸部単純で右心臓に沿った透亮帯ありガスの広がりより縦隔ではなく心嚢内気腫と言える。気胸が心嚢内に広がっていることより先天性心膜欠損症と胸部単純写真1枚で診断可能である。右にも少量ながら気胸あることより右にも小さな心膜欠損の存在が示唆された。
症例⑤吹奏楽クラブの練習中に強度の上腹部痛で発症した12歳の女児。疼痛に伴なう胸椎側湾と胸水貯留あり。CTにて左縦隔側に高吸収な腫瘤様陰影あり。画像と経過から肺葉外肺分画症の捻転によると、過去の報告画像の類似性より診断。外科的切除を受け肺靭帯内の肺葉外肺分画症の梗塞と診断された。
症例⑥検診で発見された右下肺野の境界明瞭な1cm大のSPN症例。肉芽腫か過誤腫様の腫瘍であるが1年前の検診写真にはなし。CTにて胸膜に接するも胸膜発生か肺内か意見が分かれる症例。石灰化はCTでも認めていない。悪性否定できないと切除になるが病変はいわゆる胸腔鼠・胸腔内遊離体と呼ばれる結節で肺内ではなかったかが、右S6の過分葉ありその部の葉間裂にはまり込んでいたために肺内結節に見えていいたと推察可能である。
症例⑦両側下肺野中心の胸膜下末梢優位の不整な結節と空洞影あり。非特異的な所見ではあるが、好酸球増多とタイ人で沢蟹の生食の既往あり。ウエステルマン吸虫症と宮崎吸虫症の抗体がともに高値であった。
症例⑧40歳台のアスリートのアメリカ人。突然の前胸部痛あり。胸部側面写真で胸骨下に胸膜ベースにした結節影あり。CTでは内部はほとんど脂肪で周囲は皮膜様の構造で囲まれている。心膜脂肪のfat necrosisの典型像とのこと。Radiology :diagnosis pleaseに出ていた同一疾患の症例も提示された。
さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス報告
2012年1月18日(水) 19:00より
講演に先立ち症例検討が行われた。
症例①右肺全体の浸潤影、中肺野に透亮あり空洞の可能性も否定できず、対側肺にも軽度の浸潤影や結節陰影あり。発熱を主訴としているが病変のわりに咳嗽・喀痰はそれ程強くない。CT所見では著しい中葉と舌区に気管支拡張所見目立つことより、慢性に経過し進行した非結核性抗酸菌症アビウムとして矛盾なしと考えられた。
症例②急激に発症した呼吸不全とほぼ正常な胸部写真。胸痛もあったとの臨床情報から、定型的な肺動脈血栓塞栓症PTEとして問題なし。右肺門の軽度腫大はナックルサインの軽い所見としてよいと思われ、CT所見にて確認された。
症例③検診で左大量胸水あり。CT所見で縦隔側胸膜に微細な顆粒状変化目立ち中皮腫に特有な所見と思われた。胸腔鏡下生検で中皮腫と診断された。
症例④以前より右肺尖部に局在した石灰化の散布影あり。新しくその周辺に浸潤影出現。結核の再燃として問題ないように思えたが、CT所見をよく観察すれば、B2気管支口の肥厚像や気道中心性粒状影(つぶつぶ)や気道病変の広がりから、通常の結核シューブではなく気管支結核としての再燃と診断可能な症例。
症例⑤右上葉の著明な容積増大を伴った内部均一な肺葉性コンソリデーションの症例。いわゆる肺葉膨隆徴候を呈する感染症ということでクレブジラ肺炎疑い、喀痰からもそれが証明された。他に肺葉膨隆徴候を示す感染としては肺炎球菌性肺炎やレジオネラ肺炎があると述べられた。
(まとめ)症例はどれも画像を詳細に分析すれば正確な診断に近づける教育的な素晴らしい症例提示でした。
私の講演内容は「他人に差をつける中央陰影読影の10のポイント」。を行った。
1月帝京大学キャンサーボード報告
1月17日病理顕鏡室にて6時より開催された
症例① 78歳男性 大動脈瘤に対する弓部置換術後に肺炎合併した。その2ヵ月後に左上葉に2cm程度の結節出現するもWBC20.000、CRP5~7あり肺膿瘍疑いで観察していた。12月に1週間ほどで6.5cmと急速に増大する。CTガイド下生検では悪性所見なし。造影CT画像等からも薬剤耐性肺膿瘍と判断して部分切除したところ病理では中心部に膿瘍形成した肺癌で旧分類では巨細胞癌とされていたような多形癌pleomorphic carcinomaと診断。腫瘍は腫瘤塊の表面にのみ存在し中心部は強度の壊死で膿瘍形成としても矛盾はなしとのこと。どのようなタイプの低分化腫瘍であれ腫瘍細胞増殖だけではこのような腫瘍径の増大速度の説明がつかないと考えられたが、切除標本の解析にて膿瘍/腫瘍内出血等の合併があったための急速増大とし納得できた症例。
症例② 63歳男性 肺尖部肺癌(EGFR遺伝子変異 腺癌)のびまん性肺内転移の症例。イレッサ治療中に髄膜炎症状出現し、MRでは脳転移以外にもf癌性髄膜炎として矛盾しない所見が最終的に得られたが、髄液細胞診と造影MRの所見の分析の困難さが指摘された。またタルセバがEGF mutation腺癌の癌性髄膜炎に有効とする報告があるため試みるも、呼吸不全にて死亡する。
症例③ 80歳 女性 大量の右胸水あり。胸水ドレナージ後の進展後の肺内に2箇所の腺癌として矛盾しない結節あり。CT検査にて大腸癌の合併も見つかる。病理学的には生検標本から、同じ腺癌でも全く細胞形態が異なり、転移ではなく重複癌と考えられた。
胸部写真の読み方と楽しみ方の改訂
2003年に秀潤社から出版した「胸部写真の読み方と楽しみ方」の改訂版の最終原稿が、年末に私の元に査読のために送られてまいりました。今回の改訂版は多くの友人達やカンファランス等でご指導いただいている先生方に御願いし、分担執筆とさせていただきました。改訂版の内容は大変に濃く充実し、製本後に通読することを自分でも今から大変に楽しみにしております。
思い出すに・・「臨床画像」誌に2年近く連載し、連載終了後はまとめ教科書として出版していただけるというメディカルビュー社の約束でありながら、結局は編集会議に担当者が企画書を数回提出するもボツとなり、何度かの話し合いのすえ・・・「出版社としては、売れそうもない本は出せません!内容があまりにマニアック過ぎ、また類似した本の出版社から訴訟されると負ける恐れもあり・・・」とのメディカルビュー編集長のお言葉をいただき、かなり気分的に落ち込んでしまいましたが・・・・。最終的には秀潤社の原田編集長のご好意により出版することが出来、また思った以上の売り上げもあり、もちろん訴訟されるようなこともなく、何とか編集長のご好意に報いることも出来ました。これらの出来事が、つい昨日のような気もいたしますが、あれからもう10年近くも経ってしまったのですね。おかげ様で、姉妹版とも言える「Dr.Satoの胸部写真の楽しみ方」のDVDもケアーネット社から発売になり、こちらも研修医制度の改革もあり順調に売り上げを伸ばしたようでした。
今年の放射線学会総会までには何とか製本が間に合って、総会会場で展示できたら幸いと考えておりますので、今後とも宜しく御願いもうしあげます。
帝京大学キャンサーボード報告
11月15日 火曜日 18:00 病理顕鏡室
3症例の検討がなされた。
症例①70代 男性 胸部写真は右肺底区の径2cmほどの淡い結節が検診で発見された。左中肺野に胸膜の石灰化プラークあり。胸部CTでは多発する石綿プラークを認め、肺底区背側優位の石綿による線維化病巣の広がりあり。結節影は淡く高分化型腺癌を疑うが、腫瘍に向かう気管支壁の肥厚と腫瘍辺縁の毛羽立ちがやや腺癌としては不自然な印象もあり。気管支鏡および術中迅速病理でも悪性所見なし。病理の最終診断はCD20(+)CD10(-)でMALTとのことであった。石綿暴露肺にMALTの合併があることは初めての経験であるが文献的にもほとんど報告はないものと思う。偶然に合併したものと考えるが、腺癌とMALTの画像上の鑑別も含め大変に興味深い症例である。
症例②70代 女性 肺炎と慢性膿胸の診断で経過観察中画像および臨床像の悪化で入院。はじめにCTで認めた数箇所の気道散布病変は増大し左胸膜変化の増大と右胸膜変化も出現し、左肺野にはびまん性陰影出現してくる。これだけ明らかなかつ多彩な陰影が進行し諸検査で診断できないことからはサルコイドーシスやリンパ腫の可能性が高いと思われた。アミロイドーシスは画像から否定的。SIL-2R6075と高値なことからも悪性リンパ腫が示唆された。リンパ節生検からはAE1-AE3(ー)、CD4,CD5(+) Bcell type malignant lymphomaが強く疑われたが生検材料が微細で詳細な判断は困難とのことでした。
症例③60代 男性 SVC症候群、経皮生検では腺癌疑うも、ProGRP683と高値のため他院にて小細胞癌として放射線と化学療法が施行されている患者。右肺尖に腺癌を疑わせる陰影がかくれんぼしている。縦隔は累々とリンパ節の腫大と融合が広がる。そしてびまん性の粟粒影が全肺野にひろがり血行性の転移も疑われたが、この陰影は他の腫瘍影が治療に対して著効したにもかかわらず全く変化なく、結果的にこれは転移ではなく職歴にある40年におよぶ鋳物工肺の可能性が示唆された。通常の珪肺とことなり鋳物肺はmixed dust pneumoconiosisiの形を来たすこともあるようですが、画像的に全く線維化を伴わない全肺野にランダムにひろがる粟粒陰影の塵肺症に関して、ありえるかもしれないが・・・? この症例に関しては、他院での放射線治療範囲と病理組織と腫瘍マーカーのギャップ等を中心にして討議がなされた。
11月品川カンファランスのお知らせ
11月8日(火曜)19:00よりMS.CHEST事務所にて開催いたします。 お時間のある方は奮ってご参加下さい。お待ちしております。
第25回胸部放射線研究会報告
10月21日に下関で開催された胸部放射線研究会では44演題の報告がなされた。多くの貴重かつ稀有な症例が提示された。そのなかで臨床面から印象的であった症例に関して解説したい。
①演題17 潰瘍性大腸炎の治療中に出現した胸壁腫瘤。胸囲結核が疑われ切除がなされたが最終診断は壊疽性膿皮症であった。潰瘍性大腸炎の約20%に合併し、外科的処置は禁忌とされている皮膚疾患で、胸壁発生はまれであるとのことである。
②演題28 多発小結節の52歳女性。喫煙1本/日!!! CT画像は小嚢胞と外側3/1肺野に散在する崩れかけたような小結節や淡い小結節から典型的なLCHの画像といえるが、TBLBの所見から提示施設の病理医は過敏性肺臓炎と・・・。研究会の病理コメンテイターの福岡先生からLCHの診断で問題なしと画像を裏付けるご意見あり。しかし日に1本の喫煙よりは家族内の重喫煙者の存在が原因と考えられる。
③演題29と演題35はErdheim-Chester病 画像はcoated aorta sign と腎周囲の軟部影より典型像であるが、演題35は肺はLCHで肩の軟部腫瘤はE-C病とのことで、免染のCD1aが両者の鑑別の決めてとなる。しかしこれらの本体はまだまだ研究が進行中で将来はどのように分類されてくるのか興味深い。
④演題37 PLCDD (Pulmonary light chain deposition disease)の1例は私の教科書の内分泌疾患と胸部の項の演習問題に使用した症例と同一疾患と思われる。本報告例はシェーグレン症候群の合併を疑うも確定診断には至っていないそうですが・・・。肺の多発嚢胞と多発結節で病理的にアミロイドーシスと類似するがコンゴーレッド等に染まらない、最終診断にはκ-chain,λ-chainの染色や電顕の検討が必要な疾患で、和名は単クローン性免疫グロブリン沈着症と言うそうです。覚え難いので1976年に最初に報告したRandallの名前をいただきRandall症候群としたらと思ったしだいです。
他にも末端肥大症と大腸癌におけるIGF-1受容体の強発現と小型腺癌のPET集積の関連に関する考察など多数の興味深い報告があり、大変勉強になった研究会でした。
第517回呼吸器臨床談話会報告
呼吸器談話会のミニレクチャー当番であり、「胸部疾患領域における人名の付く疾患の画像所見」に関する講演を行ってきた。人名の付く疾患のリストは教科書の索引や聖マリ医大の栗原先生の助言でまとめてみました。日本画像医学会で講演しましたがその後あまり話す機会がないのでHPに公開いたします。興味ある方は上の「人名の・・・HP」をクリックして開いて何か勉強の参考にしていただけたら幸いです。
当日の提示された2例に関し簡単に解説する。
症例①69歳男性 39度台の発熱と呼吸苦あり。PaO253mmHgと著明な低酸素あり。胸部写真は肺野には異常ないが、胃泡の内側シフトあり脾腫の存在が示唆される。胸部CTも吸気・呼気が行われているが、細気管支病変等は否定的で特に呼吸苦の原因となる異常はなし。CTではLC等の所見ないが、著明な脾腫の存在が明らかである。肺野に換気障害等の異常を認めない低酸素血症より、慢性肺動脈血栓塞栓症、PTTMまたはIVLが鑑別にあがる。そのなかで脾腫を伴なうものはIVLのみであろう。IVLの肺病変はびまん性の淡いすりガス陰影の目立つものが報告されているが、早期であれば当然CTでは異常を認めない症例のほうが多いのは当然と考える。 勉強になった点は、皮膚生検はランダム生検でOKで、皮膚病変の無いところでも陽性になる!胸部CTがnegativeでもGaシンチやPETでは陽性の報告例はあること。肺病変が主体の症例は5%程度で、皮疹、認知症状・意識障害での発症が60~70%と多い。治療はR-CHOPが大変に有効である。
症例②70歳 女性 労作時息切れ 膿性痰 RAにて治療中の患者。RAに伴なう肺線維化と気管支拡張症あり。著明な縦隔肺門リンパ節腫大を単純写真およびCTで認める。MTX使用中で総投与量は3418mg。生検にてMTXassociated LPDと診断された。EBウイルス感染示唆するEB-ERは陽性であった。MTXの中止で、リンパ節腫大は自然退縮した。diffuse larage Bcell lymphomaが最多でHodgkinや LPI等の組織が多いとされるが、会場からも「病理ではリンパ腫といっても・・・本当は腫瘍性変化ではないのでは・・・?」という疑問の声も強かったです。
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