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帝京大学CB報告
今回は2症例の討議がなされた。
症例① 59歳 男性 胸部異常陰影
末梢肺野の高分化腺癌と巨大な縦隔リンパ節単発転移が疑われた症例である。胸部単純写真からの、病変の指摘は困難な症例である。右肺底区の結節影は正面では横隔膜下に隠れ、側面で肺側胸膜の限局的肥厚増様に見える。縦隔の大きな腫瘤も、正面像からは僅かに右肺門部の突出として認められる。以前の腹部CT画像の再処理にて右肺底区結節は増大し、周辺すりガラス影等より高分化型腺癌と思われるが、縦隔の大きな単発性腫瘤を単にリンパ節転移とすることは、臨床的にも画像的にも考えにくい。同部に対しTBACが施行されclassⅤ低分化非小細胞癌の診断がなされた。免染からはTTF-1(-), AE1/AE3(+)でリンパ腫系のマーカーもすべて陰性であった。肺底区腺癌からの転移は否定的であり、原発不明癌で、画像からはキャッスルマンリンパ腫や食道原発GISTの可能性など疑われたが、病理からは上皮系腫瘍が疑われ否定的であった。縦隔側胸膜から限局性中皮腫が発生すると有茎性で境界明瞭な腫瘤影を来たすことがあり、免染も肉腫型中皮腫のマーカーAE1/AE3陽性なことより、まれながら限局型肉腫型中皮腫の可能性を考えて病理学的に再検討する必要性があると考えられた。
症例② 50歳 男性 呼吸困難
左下葉の薄壁空洞の低分化腺癌で切除術を受け、術後経過観察中に再発し、イレッサ治療にて間質性肺臓炎を起こしステロイドパルス療法を受けている。この際に両側に大量の胸水貯留あり、薬剤性肺障害の画像と臨床は多彩であり、胸水を来たすことは知られているが、イレッサで両側対象性に大量となるとまれと思われた。その後、両肺に斑状影、浸潤影、粒状影と左胸水が出現して、広範な転移病巣が疑われている。39度の間欠熱のコントロールできず、薬剤が原因か、focusとなる感染巣の画像等に関して討議された。画像から広範囲浸潤性肺転移患者の発熱原因を突き止めることは、極めて困難である。
新宿チェストカンファランス報告
社会保険中央病院 2階会議室 19時
6症例の画像を中心とした討議がなされた。
症例①60歳代 右下肺野S8の2cm程度のSPNの単純と胸部CTが提示された。一部三角状の奇妙な形状をていしていたが、画像的には特異的な所見ない。PETでSUV3.2と軽度のuptake認めた。また右肺門リンパ節にも同様に軽度のuptakeあり、悪性腫瘍と肺門転移も否定できないことから診断も兼ね開胸切除された。術中の迅速標本からは肺梗塞の診断であったが、最終病理診断はアミロイドーマとのことであったが・・・、肺門のuptakeの評価もなく、病理も含め診断には問題が残ると考える症例であった。
症例② 60歳代 男性 高熱と乾性咳嗽 単純写真は気道病変、小粒状陰影散布と肺底区の線状影の混在が両下肺野、右中肺野に目立った。胸部CTでは著明な気管支肥厚像とびまん性の細気管支炎の所見から、典型的なDPBの画像に一致すると考えた。しかし急性の発症と現在本邦では新しいDPBの発症はまず無いと考えられていることから、マイコプラズマによる細気管支炎の可能性を疑い血清交代価測定するも、上昇なし。結局、新型インフルエンザにより細気管支粘膜にびまん性のダメージを受け、その後、インフルエンザ菌等の二次感染を気道に来たした結果の気道病変のダメージの画像ではないか・・?という結論に達した。抗生剤による反応も良好であった。会場の出席者からも同様の症例の経験があり、この新しい知見に対しての今後の臨床的な啓蒙活動に関しては重要と考えられた。
症例③ 70歳代 女性 胸部単純で右傍気管線のびまん性の肥厚を認め、胸部CTはびまん性の気管支壁の一部石灰化ともなう肥厚を認め、内腔狭窄はないが壁は不整であった。鑑別診断のポイントとして気管・主気管支部膜様部にも同様に壁肥厚あり、この点から多発軟骨炎の可能性は否定可能と思われた。画像的には典型的な石灰化ともなう気管気管支アミロイドーシスの所見であったが、鑑別疾患として、生理的なサーベル鞘気管、Wegener肉芽腫、Trachiobronchopathica osteochondroplastica、Ig-G4関連疾患、UC/クローン病等の消化器疾患関連の気道病変などがあげられた。
症例④ 30歳代 男性 肺野多発結節とびまん性粒状陰影それに左胸鎖関節部周囲膿瘍あり、上肺野の微細粒状陰影の収束を伴う散布像のHRCT画像からは、岡ⅡB型といわれる結核の細気管支病巣の典型的画像所見が強く示唆された。肺野多発結節影も胸壁病巣も結核の画像として全く矛盾なし。
症例⑤ 60歳代 男性 肺癌術後の薬剤性肺炎に対しステロイドが長期に使用されていた症例に、新たに現れた感染症状と胸部CTにおける多発空洞性病変。脳MRにおいても病変あり、喀痰にてノカルジアと診断された。病理解剖が行われ、脳、皮膚、肺野病変すべてノカルジア症と診断された免疫低下した患者ではノカルジア、クリプト含めた真菌症、結核が鑑別としてあげられた。脳へのノカルジアの進展頻度の高さも強調された。
症例6 40歳代 男性 前縦隔腫瘍の症例で、悪性リンパ腫との鑑別のため経皮生検がなされ、奇形腫と診断されたが切除標本にはParagangliomaやSeminomaの組織も一部散在しており、このような胚細胞腫を混合する奇形腫に対する経皮生検の限界と合併症の危険性に関して討議された。また、MRのdiffusion image等を加えて画像解析すれば、悪性リンパ腫を否定目的のために経皮生検を施行する意義はほとんど無いと思われる。報告者の経験から、奇形腫の針生検における皮膜穿通時の強い抵抗感は、奇形腫の診断に特徴的であるという点は興味深い。
大阪びまん肺疾患研究会報告
2011年2月5日(土曜)1時45分~ 薬業年金会館
5症例の興味深いびまん性肺疾患に関して討議がなされた。それぞれの症例のポイントを述べる。
症例① 78歳女性 RA:関節リュウマチの治療中 呼吸苦を主訴とし来院。胸部単純は、両側肺門側優位の陰影であり、CTでは肺門から連続する血管気管支周囲のGGOとコンソリデーションの広がりを認めた。この画像からは、以前によく使用されたリュウマチの治療薬:金製剤(シオゾール)による肺病変に一致する所見であった。(もちろんこの症例ではシオゾール使用歴はなく、アザルフィジンとハイペン内服中であるが・・)BAL液はLym40%と高く、この陰影は治療にたいし良好に反応している。画像のみからの鑑別としては、薬剤性肺炎、COP/EP/NSIPパターンであるが、PCP:ニューモシスチィス肺炎やLPD:リンパ増殖性疾患でもみられるという会場からの発言もあった。単なる薬剤性肺炎ではこの画像をあまりみることはなく、やはりRAの患者に多く、このような血管気管支周囲の気腔内線維化といわれる変化が起こりやすいと思われた。
症例② 30歳代 男性 乾性咳嗽 びまん性陰影と右下肺野の結節影を来たした興味深い症例である。日本医大武蔵小杉病院の一色先生が読影担当。骨シンチで肺野にuptakeあり、CTでも縦隔条件で観察すると、びまん性陰影の中に高濃度の点状陰影の散布あり。転移性石灰化症や肺骨化症が示唆された。肺骨化症には結節状nodural type:と樹枝状:dendriform typeがあり、前者は重症のMS:僧房弁疾患で見られたが、弁置換術により過去の疾患となっていると・・・。本例はdenndriformの肺骨化症であった。大変に興味深い点は境界明瞭な結節影が自然消退している点である。腫瘍とは考えられず肺内血腫であった可能性は高く、肺骨化を伴うことのあるEhlers-Danlos症候群が疑われると一色先生が解説した。その可能性に関し、過去に十数例のE-D症候群を集めて検討した経験のある埼玉循環器呼吸器病センター病理:河端先生より、病理学的にみても同疾患が示唆され遺伝子解析追加の必要性に関する発言があった。
症例③ 20歳代 男性 乾性咳嗽 胸膜下優位の線維化病変広がり、軽度ながら全肺野にびまん性間質影の広がりあり、画像的には非特異的であるが、家族性肺線維症、若年性肺線維症の可能性が示唆された。病変は進行性で治療に反応悪く、肺移植の適応を逃さないように今後検討する必要性が述べられた。
症例④ 私の画像司会担当症例 30歳代 男性 乾性咳嗽 易疲労感 肺野濃度のびまん性の上昇と上肺野胸膜下主体の気腫性嚢胞の広がりより、画像所見のみからもベリリウム肺等の重金属吸入による肺障害が示唆された。症例は職場でIn:インジュウム、Bi:ビスマス、Mn:マンガン等の工業材料を取り扱っている。(粉塵マスクは使用とのこと) 生検肺標本は大変に興味深く、大量のコレステロールクレストが肺間質や肺胞内にびっしりと沈着しており、In:インジュウム肺の病理所見の過去の報告例と同様の所見であった。血清のIn値も71ng/mlと著明に上昇していた。ちなみに正常値は3ng/ml以下とのこと。現在、In:インジュウムの大半はわが国で消費され、多くは液晶画面製造に使用されている。画像で類似するベリリウムは歯科領域で使用されていたが、現在わが国では厳しく規制対象とされているが、一部は安価な外国に受注しているような場合、その歯科材料内にベリリウム使用の可能性もある点に関しての発言があった。今後、忘れてはならない職業病のひとつと考えられる。
症例⑤ 60歳代 女性 発熱、喀痰 画像的にはあまり興味を持てないが臨床的にはいくつもの重要な点を示唆する症例である。画像は中葉舌区症候群とする気管支拡張症、それに散在する肺野空洞性結節の存在からは、ありふれた非結核性抗酸菌症MAC合併の中葉症候群と診断し・・!そして左上肺野に新しく出現した浸潤影は、単に細菌性肺炎の合併としてしまうが・・・? しかし、本例は抗酸菌に対する数度の検査では常に陰性、長期のマクロライド治療に反応せず増悪傾向を呈し、最終的に精査にてシェーグレン症候群と診断されら。左上肺の肺炎はノカルディアが証明されノカルディアに対する抗生剤の治療方針に関しても討議された。難治性中葉舌区症候群の原因疾患としてのシェーグレン症候群の可能性は重要と考えさせられた症例である。
明解画像診断の手引きsupple 107 呼吸器領域編
誌上カンファランス形式で11月に行われたさいたま赤十字病院のカンファランスの内容を、国際医学出版より2011年1月27日に発行した。非売品であるので、購読希望者は明治製菓の方までお問い合わせください。
出題症例は6症例でした。
症例① 35歳 男性 右上肺野の巨大ブラに合併した若年者の肺癌症例である。検診で発見された、右肺前摘後の術後経過は良好であったが・・6年程して、突然の胸痛と呼吸苦で救急来院する。心電図等の検査中に呼吸停止し永眠となる。残った片肺のブラの破裂が原因として考えられた。
症例② 31歳 女性 検診発見のsmoker 単純写真は、非常に軽微な両上肺野の間質影である。CT画像からはLCH:ランゲルハンス細胞組織球症と診断可能。
症例③ 71歳 女性 画像は非特異的な多発小結節が数個あるが、腎障害あり。血液検査、腎生検よりANCA陽性のWegener肉芽腫症と診断された。胸部画像の解析には、臨床情報や検査データとの組み合わせが必須となることが多い。
症例④ 79歳 男性 経過により肺内を移動する陰影からは、COP:特発性器質化肺炎か好酸球性肺炎:CEPが疑われた。胸部CT所見は上肺野優位の汎小葉性GGOと胸膜下の帯状陰影に小葉間隔壁の肥厚像が伴ってみられた。葉間隔壁肥厚はCOPでは見られない点が、両者の鑑別として重要となる。経過中に好酸球数は53.3%と著増し、好酸球性肺炎と診断した。
症例⑤ 79歳 男性 右中肺野の辺縁不整な結節影、胸部CTはスピクラ形成著明で、肺癌が疑われたが・・・・・肺癌以外では悪性リンパ腫や放線菌症やノカルジア感染の可能性が示唆され、CTガイド下肺生検で悪性細胞はなく培養からNocardiaが検出された。
症例⑥ 75歳 男性 胸膜・縦隔・肺野に多発性結節あり。CTではそれぞれが非連続性の結節病変であった。石灰化胸膜プラークも軽度ながら存在し、気管支鏡検査で石綿小体も証明され、胸腔鏡下生検で二相型中皮腫と診断された。一部の腫瘍は葉間に存在し一見すると肺内腫瘍の様に見えた。今後、急速に増加するであろう中皮腫の画像所見は多彩であり、初期像としては胸水貯留のみの例も多く、何らかの胸膜病変を見た際は中皮腫の可能性を常に忘れないようにしたい。
第2回東京保険医協会中央講演会
第2回目も沢山の先生方に参加していただき感謝しております。内容は、結局は肺癌の診断と最近のトピックスに絞って話させていただきました。
講演後の相談の症例検討も、私からみても・・なかなか発見の困難な、早期腺癌の肺野結節症例やfibrous dysplasiaに伴う肋骨骨折の病変等が提示され、大変に勉強になりました。今後の、同様な講演と勉強の機会を与えていただけましたらこちらも幸いと考えております。担当の幹事の先生や事務の方々に感謝しております。
帝京大学CB症例報告
1月25日18:00より 帝京大学付属病院 5階病理カンファランス室
3症例の臨床と画像、病理を中心に討議が行われた。1症例は頚部リンパ節腫瘤の原発巣不明癌、他の2症例は胸水貯留症例。
症例① 頚部に大きな腫瘤を形成し、縦隔、腹部傍大動脈周囲リンパ節にも転移巣が広がっている。この大きな頚部腫瘤は最初の他院のCTで1スライスのみであるが甲状腺皮膜が鳥の嘴状のいわゆるbeak signを呈しており、画像的に甲状腺由来で外側に大きく発育した腫瘍として矛盾しないと考えた。肝臓癌が有茎性で腹腔内に発育したり、大きな上腹部腫瘍が有茎性子宮筋腫であったりと、原発臓器から分離されているように見えることは、自験例でもまた画像のカンファランスでも時々提示されることがある。このような原発臓器の皮膜から外側に発育する症例を、初めて経験した時はとても信じられないという思いをした。本症例は、病理学的にも免染TTF-1が陽性の低分化癌で、甲状腺癌として矛盾はないと考えられた。
症例②は胸部画像は大量の胸水貯留の症例であるが、C型肝炎に合併したHCCに対して何度もRFAや肝切除等の治療が行われた既往があり、胸部CTで胸膜に接して良好に造影される(されすぎ?!)のポリープ状の小結節が多発している。胸腔鏡下の生検材料からHCCの治療後の播種の可能性に関して討議されたが、病理の免染での証明に問題が残った。
症例③大量の右側胸水症例で、胸膜肥厚と左胸膜の石灰化あり、中皮腫か非結核性の胸膜炎の鑑別が問題になった症例である。フィブリン析出著明であるがADA20.6で好中球の浸潤はなくと細菌性胸膜炎とも思えなかった。病理学的には線維形成型中皮腫の可能性も疑われたが、確定診断にはいたっていない。
今回のcancer boardでは免疫染色に臨床医があまりに期待する傾向が強すぎることに自戒するべき・・・という印象でした。自分の無知からですが、サイトケラチン:CK7とCK20の(+)、(-)の4つの組み合わせパターンによる原発巣の推定は興味深いと考えられましたが、1995年頃から盛んに行われた手法で新しい考え方ではないそうですが、原発巣を絞るひとつの良い試みではあります。しかしながら、例外となる症例も沢山ありさまざまなマーカーの組み合わせが必要なようです。次々と新しいマーカーが開発されるのは素晴らしいことですが、臨床医にとってはなかなかついてゆくのは大変です。
中皮腫の免染の主な抗体も沢山あり、いつも石綿環境暴露の被害認定委員会で聞いていて知らない間に抗体の名前は頭にこびりついて来ているのですが・・・・・なかなか全部の使い道を覚えることは困難です。中皮腫は上皮型と肉腫型によりマーカーの組み合わせも微妙にことなり、腹腔発生の中皮腫と卵巣悪性腫瘍との免染による鑑別が問題となる。また陽性マーカーだけではダメで必ず陰性マーカーも必ず組み合わせる必要性など、今後激増するであろう中皮腫のマーカーに関しては、被害申請のときには必要となるため、これからの臨床医には必須の知識である。代表的な陽性マーカーとしては上皮型中皮腫はcalretinin, CK5/6, WT-1, D2-40、肉腫型中皮腫のマーカーとしてAE1/AE3,CAM5.2を、陰性マーカーとしては肺腺癌との鑑別にCEA,TTF-1,卵巣腫瘍との鑑別にER,PgR,Moc31,BerEP-4などが代表的であろうが、中皮腫に関しては決定的なマーカーはいまだ存在しないということも知っておく必要がある。そして電子顕微鏡による中皮細胞の形態観察も反応性中皮細胞と腫瘍性中皮細胞の鑑別に極めて重要となる。また生検の組織標本がなくても、中皮腫診断を得意とする病理医や細胞診スクリーナーに依頼すれば、胸水穿刺による細胞診所見からも正確な診断可能である。
2011年1月埼玉日赤・呼吸器カンファ・レポート
新年の埼玉日赤は、恒例により私の講演を行った。テーマは昨年の放射線学会総会の研修医セミナーの「胸部画像のmimicker達」すなわちnormal variants やpseud‐lesionなど病変と間違えやすい正常範囲の所見に関する内容でお話しさせていただいた。
講演の前に、通常の症例提示・画像検討も行われた。このうちの2例を選んで、興味深い症例の画像を提示する。
症例①は脳転移で発症している。この正面写真から左肺門に重なる腫瘍の存在指摘に困難を覚える方も多いと思われるが、同時に撮影された側面像からは、境界明瞭な腫瘤影を容易に指摘ことが可能である。左上葉の肺癌とその脳転移として矛盾しないと考えられた。かくれんぼ肺癌の一例である。かくれんぼ肺癌は肺尖、肺門、心陰影、横隔膜下等に隠れ、胸部単純で黒く写るいわゆる肺野だけ観察すると見落としてしまう肺癌に関して、私が名付けました。左右の比較読影や側面像が存在診断に重要です。
症例② この症例もやはり多発性脳転移で発症している。左上葉の無気肺像伴う肺門部腫瘤をみとめ、原発性肺癌として矛盾はない所見であるが、この症例は右中肺野の巨大な腫瘤と胸椎の側彎症も伴なっている。画像診断のみならず臨床診断の基本として、「常に病気は一元的に考えろ!」といわれる。これは大切な言葉ではあるが常に正しいとはもちろん限らない。この症例はCT画像から皮膚の多発小結節と側彎胸椎の小型のmeningocele髄膜瘤認め、神経線維腫症:レックリングハウゼン病の診断が可能である。それでは右の巨大腫瘤影からは何を考える・・・?経皮生検が施行されて神経原性線維腫の診断が確定している。胸壁または肋間神経からの発生と考えられた。神経線維腫症は比較的頻度の高い遺伝性の母斑症であり、肺病変としては下肺野の線維化とともに上中肺野のブラ形成の頻度も高く、成人では約20%とする報告もある。この症例も著明な上肺野の気腫性嚢胞ブラの広がりをみた。肺癌と神経線維腫症の合併頻度は・・・?高いという報告は今まで目にしていないが、線維化や気腫性変化あれば当然、正常者と比較すれば肺癌の頻度が高くても全くおかしくはないと考える。
次回の埼玉日赤・呼吸器・カンファ2月16日19時からの予定です。興味深い画像の症例ありましたら是非、提示を御願いいたします。それでは、松島秀和先生また来月もよろしく!みな楽しみにお待ちしております。
さいたま赤十字呼吸器カンファランス
第三水曜日 埼玉赤十字病院4階 午後7時より
1時間の症例検討後、私の簡単なミニレクチャーをおこないます。内容はまだ未定ですが・・何か要望があればお答えいたします。
カンファランス終了後は、いつもの病院の前のカレー屋さんで簡単な内輪の新年会を予定してます!カンファを何時も盛り上げてくださる皆様方の参加を心よりお待ちしております。
さいたま赤十字病院呼吸器カンファランス
7時より4階会議室にて症例検討と講演。東京保険医協会 中央講習会Ⅰ
2011年 1月 13日(木) 午後7時30分~午後9時30分
2011年 1月 27日(木) 午後7時30分~午後9時30分
会 場 東京保険医協会セミナールーム (JR 新宿駅南口より徒歩10 分)
問い合わせ
TEL 03-5339-3601
FAX 03-5339-3449
12月帝京大学CBの症例報告
12月21日6時より開始された。次回のCBは1月25日(火)の開催に決まりました。
4例の症例検討あり。はじめの2例はCancerではないが腫瘍を疑い切除された症例が提示された。
症例1は左下肺野の腫瘤影で、incomplete border signを呈し、側面像では紡錘形で葉間裂と関連した形状を呈している。CTでは明瞭な皮膜石灰化ありVATSにて切除された。病理で胸腔内の石灰化皮膜有する結核腫と診断された。MRのリング状のエンハンス効果とdiffusion所見等からも結核腫として矛盾はしないと考えられたが、2年前に検診を受け胸部異常は指摘されておらず、経過も画像も発生部位も興味深い症例と考えられた。
症例2は検診発見の右上肺野結節で画像的にはスピクラに限局的な牽引性気管支拡張ともなう小型腺癌様の結節で、CTでは明瞭な石綿プラーク広がり石綿暴露に伴う肺癌を強く示唆された。しかし3ヶ月程後のVATS直前のCTでは、おおよそではあるが腫瘍面積で50%ほど縮小している。しかし、細胞診でも悪性所見が示唆されたため切除となった。病理では乾酪巣ともなう結核病巣であった。
症例3は中葉の典型的な腺癌様の所見であるが、TBLBでもVATS標本でも、扁平上皮癌であったが、病理の切片からpT3(pm1)N0M0と肺内転移または同時多発の可能性が示唆されたが、病理標本の切り出しとCT画像の照らし合わせから、肺内転移様に見えたのは血管気管支鞘に添って連続的に広がった部を見ているだけではないかと考えられ、病理医もそれで納得できた。
症例4は胃癌、前立腺癌のある患者で前立腺癌の広範囲の転移が見られている。胸部では小型結節影と右背側肺野に胸膜に接した腫瘤あり、この部の経皮生検所見から肺の小細胞癌の可能性が疑われたが画像と腫瘍マーカー等検査データや治療経過からもすべて前立腺癌の転移として矛盾はしないであろうという結論であった。画像的には肺血管の怒張蛇行がいくつかの腫瘤と連続して見られ血管内の腫瘍塞栓の可能性が高いと考えたが、胸部は造影CTが施行されていなくて確診には至っていない。
さいたま赤十字呼吸器カンファランス
埼玉赤十字病院4階会議室
第一回品川チェストカンファ
帝京大学キャンサーボード
6時から病理のカンファランス室にて開催されます。私は穂高登山に向かうので早めに失礼しますが・・・。
埼玉日赤呼吸器カンファ
大久保先生が提示された大変に珍しいサルコイドの症例が印象的でした。両側胸膜肥厚と胸水で見つかり、自然経過で消失してしまった病変!!
11月の品川カンファランスのお知らせ
11月8日(火曜日)19:00 品川のMS.CHEST事務所にて開催いたします。お時間のある方は奮ってご参加ください。
11月品川カンファランスのお知らせ
今月も第2週の火曜日、11月8日19:00よりMS.CHEST事務室にて品川カンファランスを開催いたします。お時間のある方は奮ってご参加ください。楽しみにお待ちしております。
セミナー・イベント
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